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8.ユーミン楽曲からの発展技法と不定調性論3 (ユーミンレポート公開シリーズ)22~★★★

日本人の心の情景を変えたシンガーソングライター(改訂版)―研究レポート;ユーミン楽曲の和声分析と音楽的クオリアが紡ぐ作曲の手法―

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和音には一つ一つ一人ひとり異なるそれぞれの風情を感じると思う。

CM7のサウンドを聴いたとき、どこかで聞いたような「AORっぽい」とか、ニューミュージックだとか、そういうありきたりな風説ではなく、あなた自身が感じることあなたにしか理解できないニュアンスである。

どんなネガティブな意見でもチープな意見でも良い。

 

CM7は数字の8だ、とか

いや真っ白の世界だ、とか

いや、このサウンドはタレントの○○○○だ、とか

いや、CM7は16ビートだ、

 

とか、とにかく自分ならわかるニュアンス。それはおそらく文法を成さない。あなたはそもそも宇宙から誕生したのであって、あなたの全存在が、文法ごときに従うはずがない。

サウンドを聴いて何かの曲を、誰かの曲を、映画やドラマのあのシーンを、想像できないはずはない(厳密には想像できるようになるようトレーニングするわけである)。

まず、自身の感覚のフィルターがあることを思い出し、そのフィルターを通して感じたことだけが自分を支配できる、と気が付けば、「脈絡」=あなたの音楽理論となる。自覚するのには個人差がある。

 

次のコード進行に、言語的イメージを添えてみてほしい。

ヴォイシングは適宜自身が気に入っているもので良い。

 

ex1;CM7  |DM7(9) |

ex2;CM7  |A♭m7(#5) |

ex3;CM7  |D♭/E♭ |

ex4;CM7  |B/D♭|

ex5;CM7  |Fsus4/D♭ |

ex6;CM7  |Em(♭9) |

 

<用例解説>

ex1;CM7  |DM7(9) | CM7  |DM7(9) |~

例えばこれは、単純にeをトップ軸にして二つの和音を並べてみる。

私は「春がきて、暖かい季節が過ぎて」というようなテンポの良い時間経過のような印象をこの進行の展開に持つことができた。

ちなみに、これを書きながらアコースティックギターを抱えて、考えている。

 

ex2;CM7  |A♭m7(#5) | CM7  |A♭m7(#5) |

「静かな午後、急にひんやりとした風が抜ける、君はいつ帰るだろうか」という印象。このA♭m7(#5)は、CM7のルートをAに移行して、gを半音上行させてできる特殊コードである。遊び的要素も強い。こうしてできた進行を一曲にまで仕上げるかどうかは、作曲者の判断である。

しかしこれが瞬間的にできなければ、作曲的挑戦が至難の業になる。

 

ex3;CM7  |D♭/E♭ | CM7  |D♭/E♭ |

「さあ、外に出ようか、あれ、何だろう、この感覚は、今日は誰かが私に何かをもたらしてくれるかも」という文節感を思った。

短三度のベースの跳躍に意外性のような、それまで歩いていた歩みがフッとポジティブな気付きに立ち止まるような、そんな意識の飛躍感覚を受けた。

良く聴いたことのある響きをつなげる脈絡作りの方法についてもこれまでのレポートで述べてきた。

 

ex4;CM7  |B/D♭| CM7  |B/D♭|

「無印象」→「無表情」→「ガラスの微笑み」→「あれから、心が笑ってくれない、君にあんなことを言ってしまったのは、二人で買ったこの曇ったガラス窓のせいかもしれない」としてはみた。が、イメージの涌かないコードだった。

和声進行が難解だと決めつけてはいけない。それをポップに、分かりやすくするためにはどんなメロディを、印象を添えればよいか、を拡張して研ぎ澄ませて頂きたい。

   

ex5;CM7  |Fsus4/D♭ |

「遠くで僕の幼い頃の呼び名を呼ぶ声がする 風の悪戯か、そろそろ潮時なのか」

というイメージを偶然感じた。

Fsus4/D♭というのはF#M7(♭5)/D♭である。このコード進行のコンセプトはCM7→F#M7であった。この増四度だけだと、ヴォイシングだけでも脈絡を作るのが大変だ。これは「増四度進行を何とか音楽的進行にできないものか?」と考えられなければ、できないことかもしれない。

これも弾き慣れていくと、自然になってしまうから、音楽の印象というのは不思議である。無理だ、と思っているのは自分の価値観だけなのであろう。

 

ex6;CM7  |Em(♭9) |

「ちくちく心が傷む それは放っておいてずっと眺めていたい美しい傷跡だ」という感覚に落ち着いた。この響きは、ギターで作ると美しかった。♭9をトップよりも内声に配置することで、「傷跡感」「うずく感じ」が増す。コードネームにした時「異質なコードの感じ」がすぐ分かる、というのがコードネームシステムの素晴らしい点だ。

 

 

これらの和声の印象を、繰り返すことで、コードが呼ぶメロディがあり、メロディが呼ぶ言葉があるだろう。これを必死に探す、というのがユーミンが公言し、開発してきた作曲技法の応用とまとめることができる。

 

たとえば、ex2を用いて、

CM7  |A♭m7(#5) |CM7  |A♭m7(#5) |

というイントロで楽曲が始まったらどうだろう。これらの流れが持つ音楽的脈絡を感じ取りながら、全体をイメージして先を簡単に作ってみよう。

 

(続く)

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