音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

M-Bankスティービー・ワンダー楽曲(コード進行)研究レポート公開シリーズ21★★★

スティービー・ワンダーの和声構造

~非視覚的クオリアを活用した作曲技法~

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アルバム24;「In Square Circle(1985)

 

事例99;Part-Time Lover(CDタイム 0:45-)

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Bメロ

F#M7 | F#M7  /G# |C#M7 | C#M7  /A# |

D#m7 |D#m7 |Fm7 Gm7(♭5) G#7 |A#m7 |

F#M7 | F#M7  |C#M7 | C#M7  |

D#m7 |D#m7 |E7  |E7  |

同曲のキーはA#mである。ここでVIm7(♭5)であるG7(♭5)が現れる。聴感上は、Gm7とスティービーのd♭のメロディがぶつかっているようにも聞こえる。G音はA#マイナーの音階音ではないため、A#ドリアン的なベースラインの処理がなされたことになる。

ここは別に、

D#m7 |D#m7 |Fm7 F#M7 G#7 |A#m7 |

でも良かったはずである。上記であればダイアトニック的でしっくりくることは来る。

この辺りの選択肢については、スティービーなりの選択眼があるので、セオリー通り、セオリー破りを何らかの判断基準で織り交ぜうスティービーらしい展開である。

楽曲を生成する時に、癖やセオリー的感覚を常識だと思い込んでしまうと、そこから抜けられなくなり、また抜けている状況に違和感や疎外感、非常識感を感じてしまい、結局通例どおりの枠組みになってしまう。スティービーの個性豊かな進行感選択は、天性のものかもしれないが、彼の世界把握の方法論と信念が、“自分らしく作る”という意味として込められているはずである。

 

事例100;I Love You Too Much(CDタイム 0:36-)

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Aメロ

Gm7(9) |E♭m7(9) | Gm7(9) |Gm7(9) |

E♭m7(9) | E♭m7(9) |Gm7(9) |Gm7(9) |

ここではGm=Imをセンターコードとして、本来行かないところのマイナーコードに飛躍して音楽を作ってやろう、というような野望を感じさせるAメロである。ちょうど短六度上のm7であり、VI♭m7に該当する。この連鎖感を斬新に感じる方もおられるのではないだろうか。

スティービーは実にm7を巧みに連鎖させる。これもR&Bグルーヴの上にある展開だからこそノリが良く聴こえるわけではあるが、そのメロディセンスと展開のアイデアには、常にそれまでにない何か新しい響きを探っているようだ。

このAメロ部分では、タイミングをずらして二つのm7コードが並んでいる。四小節単位ではなく、1-1-2-2-2という小節数である。しかし不自然な感じはなく、それぞれ同じE♭m7でありながら、違うニュアンスで自然に配置されている。こうしたニュアンスの違いも応用できる要素があるのではないだろうか。または「2コードだけで曲を作れ」といった課題などではこうしたニュアンス感の違いが習得しやすいのではないだろうか。

   

事例101;Whereabouts(CDタイム 0:22-)

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Aメロ

BM7  EM7 |A#m7(♭5) D#m7 |G#M7 C#M7 |F#7sus4 F#7 |

BM7  EM7 |A#m7(♭5) D#m7 |G#m7 C#7 |F#7sus4 F#7 |

Bメロ

EM7 D#7|G#m7 Gm7 F#m7 B7 |EM7 D#7 |G#m7 F#m7/B |

EM7 D#7|G#m7 Gm7 F#m7 B7 |EM7 D#7 |G#m D#7 G#m7 |

C#7 F#7 |BM7 F#m7/B |

サビ

GM7  F#m7 |Em7 F#7 |

これまた非常に凝っていて混沌とした進行になっている。特にAメロは、連鎖感による音楽性を用いないと作成することは難しいだろう。

BM7  EM7 |A#m7(♭5) D#m7 |G#M7 C#M7 |F#7sus4 F#7 |

BM7  EM7 |A#m7(♭5) D#m7 |G#m7 C#7 |F#7sus4 F#7 |

ここにおいて、BをIとすると、

IM7  IVM7 |VIIm7(♭5) IIIm7 |VIM7 IIM7 |V7sus4 V7 |

IM7  IVM7 |VIIm7(♭5) IIIm7 |VIm7 II7 |V7sus4 V7 |

となる。このVIM7とIIM7は独立しており、直前のIIIm7からも展開しづらいが、流れてみると、単純な五度進行のテイストを持っているから不思議である。

m7をM7に変えるような部分転調の得意なスティービーにとっては、こうしたM7コードの出現は、それらと同様、いきなりの主調変化の連鎖感で作れてしまうのかもしれない。

またBメロでは、

EM7 D#7|G#m7 Gm7 F#m7 B7 |EM7 D#7 |G#m7 F#m7/B |

ここでは、

EM7 D#7|G#m7

がIVM7-III7-VIm7の進行感であり、

G#m7 Gm7 F#m7 B7

が、IIIm7-II#m7-IIm7-V7の進行感であり、つづく

EM7 D#7 |G#m7

で先の進行感をリピートして(シークエンス)、そのコード連鎖に説得力を与えている。

 

事例102;Never In Your Sun(CDタイム 0:24-)

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Aメロ

F#  |F#  |A7  |A7 |

E  |E  |G7(♭5) |G7(♭5) |

F#m7 |F#m7 |G#m7 |C#7 |

Bメロ

F#  |A7  |G#m7  |C#7(♭5) |×2

サビ

F#  |F#  |F7sus4  |F7  |

E   |E  |D#7  |D#7   |

D  |D  | C#7  |C7 Bm7 |

F#  |A  |Am7 |D7 ||G~半音あげてAメロに戻る

得意の半音上げ転調曲。ビートルズのようにメジャーコードだけのシンプル曲ではなく、巧みな短三度転調と、半音連鎖を活かしたスティービーらしいジャズ的進行の曲になっている。この曲のサビの下降の感じは”Don’t You worry about thing”のsus4展開にも似ている。またToo Shy,To Sayなどの抒情性にもこの手に下降進行を用いる彼であるから、定番に使いこなせる進行であるに違いない。

こうして出来てしまうと安易に感じるシンプルな下降だが、不定調性的なバランスは完ぺきに成り立っており、連鎖感で行う音楽におけるサビとしては教科書的なのではないだろうか。

また彼が多用する、X7(♭5)もこの曲でも名刺代わりに登場している。

   

事例103;Spiritual Walkers(CDタイム 0:34-) 

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Aメロ

G#m7 | G#m7 | G#m7 | G#m7 |

G#m7 | G#m7 | G#m7 | G#m7 |

Bメロ

A  |B  |A  |B /C# /D /E♭  |

サビ

Em7(E7) | Em7(E7) | Em7(E7) | Em7(E7) |

Em7(E7) | Em7(E7) | Em7(E7) | E♭7  |

同曲でもスティービーのコードの自由さ、和声解釈の自由さ、旋律的クオリアの自由さが自然と現れている。G#m7のAメロから、A-Bコードへの展開はIIIm7-IV-Vの和声の連鎖感を活用したものであり、それまでIm7であったG#m7は急にIIIm7感(はっきりとこの感覚があることは全く不必要であるが)に変化させられている。こうした感覚に違和感を感じるか、良いと感じるかが聴き手としての、作り手としての感覚にゆだねられるのであり、ここでこれがどうこう、というよりも、和声連鎖に自在なスティービーらしいアイデアである、といえよう。

またサビでは、メロディはメジャー系の音M3rdを用いているが、伴奏のコードはm7的であり、これまた絶妙な違和感がある。しかしこの違和感もまた「単なる感覚質の一つ」と考えれば、違和感そのものが新しい和声体験となる。そしてこれはブルースにおいて、7thコード上でm3rdが鳴った時の感覚とまるで同じではないか、と発見するだろう。

同様に、サビから戻るE♭7も、一瞬安易なセカンダリードミナントの配置に思えるが、楽曲の流れで聞くと、安易というより突飛さを感じる。これも自在な選択肢を楽しむスティービーらしい配置で、べつにもっと複雑な戻り方でも良かったし、がっつりII=Vにしても良いはずである。しかしこの和音を選択し、スティービー・ワンダーの楽曲として仕上げる彼の選択眼がやはり彼なのである。皆さんが同じ選択肢でおなじような帰結を活用するとは限らないし、それらがスティービーの曲に劣る、というわけでもない。こうした選択眼を皆さんなりに確立し、“あ、この選択、自分らしいなあ、でもいいと思うんだよなあ”という表現方法を貫いて頂ければ、と思う。

ある部屋に入った時、私なら視覚的に見えるものの限界を感じる。猫がいなければ、この部屋には猫がいない、と認識できる。しかしそれを視覚以外で判断しようと思えば、匂いや触角、または親切な人に教えてもらって把握するしかない。音楽という小部屋も同じで、常に発見の連続である彼の感覚においては、いつも触って知っているものであっても、晴眼者よりも情報認識が遅い場合もある。ゆえに先入観というものが持てず、常に注意を払っていなければならない。そうした感覚で音楽をやっていたら、avoidなどという概念は、“そんなの使ってみなければわからないじゃないか”となるであろう。

 

事例104;Overjoyed(CDタイム 0:00)  

こちらをご参照ください。

 

 

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