音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

道筋のないコード進行を目を瞑って運転する スティービー・ワンダー楽曲(コード進行)研究レポート公開シリーズ20

スティービー・ワンダーの和声構造

~非視覚的クオリアを活用した作曲技法~

<前回>

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アルバム23;「The Woman In Red(1984) 

事例96;心の愛~I Just Called to Say I Love You(CDタイム 0:25-)

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Dm  |DmM7 |Dm7  |DmM7 |

ここでもクリシェ進行。

曲のキーはCメジャーであるので、IImにおけるクリシェ。

 

クリシェを聴くとこの曲を思い出す、という方もいるのではないでしょうか。

シンセのおだやかなラインが、じんわりとした感情の微妙な起伏を表現しているような。

こうしたマイナーコードのクリシェは、暗く陰鬱である、という固定観念のようなものがあります。スティービーのクリシェはそういう先入観を崩してくれるので、作曲を目指す、中級者程度の方が学ぶにはうってつけです。

この曲もどちらかというとメジャーキーの曲です。

その中で用いられるクリシェは切なさを出してくれて、メジャーキーの楽曲をあっけらかんとした明るさにせず落ち着いた何か丁寧な心の機微を感じるものにする、という効果を教えてくれます。

 

事例97;Weakness(CDタイム0:31-)

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3/4拍子 

Aメロ

D♭ B/D♭ |B/G♭ G♭ |G♭/E  D♭m7 |EM7  G♭ A♭|

D♭ B/D♭ |B/G♭ G♭ |G♭/E  D♭m7 |G♭M7  A♭7|

Bメロ

D♭m7(9)|E♭m7 A♭7|F#m7 B7 |EM7 A♭7|

D♭m7(9)|E♭m7 A♭7|F#m7 B7 |EM7  G♭/A♭|

ディオンヌ・ワーウィックとのデュエット。

進行感のオンパレード、S字カーブだらけのF1コースとでも言いましょうか。

 

冒頭のD♭ B/D♭ はI-VII♭/Iの進行感、

 

G♭ |G♭/EはI-I7の進行感、

 

またBメロからのII-Vにおける無軌道な連鎖は、II-V感によってフレージングが組めることまた無関係なII-Vの連続の中をすぐに知覚し把握できる並行感覚を持っているか、が問われます。

 

まさに目印のない道を歩くための技を体得している盲目のスティービーらしい進行感の発明です。

これをスタンダードジャズにはせず、ポピュラーミュージックに寄って扱ったという点は、日本においてはユーミンが“めまぐるしく景色が変わる音楽的なクオリア”を体現した「中央フリーウェイ」でやったよう方法論に通じます。

盲目である、ということを音楽表現に活かすかのように、巧みに道無き道を作っていくような楽曲です。

 

事例98;Don’t Drive Drunk

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同曲は、

C  |B♭ |

が曲全体にわたって繰り返されています。間奏にスティービーらしい平行移動の変化があるが歌の部分はこの二つのコードで成り立っています。

 

2コードでできている曲の事例ですね。

 

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The Woman In Red: Selections From The Original Motion Picture Soundtrack