音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

m7thコードの連鎖と連続上昇転調の謎/スティービー・ワンダー研究レポート公開シリーズ13

2019.5.29⇨2020.7.27更新

スティービー・ワンダーの和声構造

~非視覚的クオリアを活用した作曲技法~

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アルバム15;「Music of My Mind」〜心の詞〜(1972) 

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事例55Girl Blue (CDタイム 0:22-)

Aメロ

B♭m  |A♭m  |G♭m  |F7  |×2

Bメロ

Cm7  |Dm7 |E♭ |F  |

Cm7  |Dm7 |E♭ F |B♭ |

 

ユーミンレポート1999年リリースのアルバム「Frozen Roses」の中の「josephine」(ユーミンレポート事例106)と似た構造を想起されるかも知れません。

 

前作から強烈な印象を残すようになったm7thの連鎖は本作でも有効に活用されてます。

m7thコードが連続されるこの構造はどうしてもある特定の雰囲気を作らざるを得ない事はメジャーコードの連鎖がビートルズ的になってしまうのに似ているでしょう。 

 

現代でもまだまだ新鮮な進行感を持っており、ぜひ一時期研究頂き、ご自身の活用法を見つけてください。

 

事例56Evil (CDタイム 0:48-)

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Aメロ

C   |C7  |F/C  |Fm/C  |

C   |C7  |F/C  |Fm/C  |  

C  |E7  |Am  |Gm7 C7 |

A'メロ

F  |F7  |B♭/F  |B♭m/F |

F  |F7  |B♭/F  |B♭m/F |

F |A7  |Dm7  |Cm7 F7 |

A”メロ

B♭ |B♭7 |E♭/B♭ |E♭m/B♭ |

B♭ |B♭7 |E♭/B♭ |E♭m/B♭ |

B♭ |D7 |Gm |Fm  B♭7 |

A'''メロ

E♭ |E♭7 |A♭/E♭ |A♭m/E♭ |

E♭ |E♭7 |A♭/E♭ |A♭m/E♭ |

E♭ |G7 |Cm |C  |

転調を繰り返す楽曲パターン。

しかも半音で上がっていくのではなく、四度で上がっていく!

 

使用レンジはc2~c4とちょうど2オクターブで納めてます。

 

Aメロの12小節のパターンをIVへの転調前置詞と言えるVm7-I7の進行感を活用して3回転調していきます。

C→F→B♭→E♭と変化。

 

この転調に順じて雰囲気とアレンジを盛り上げていく作風は単調さがなく、その歌唱力によって見事表現されてます。

 

スティービーにとっての上昇感とはどのような感覚なのでしょう。

重力によってのみ、上下の存在を体感できる場合、上に向かう、ということも抽象的であり、より情感的な要素を持つのではないでしょうか。

 

私などは最初、ただ上がっていくだけなど、そんなに魅力的とは言えない手法なのではないか、などと考えてしまいましたが、ここまで使われてくると、その意味を探りたくなってきます。

クリシェ進行、上昇転調、無軌道な転調、特にこれらの手法について、何らかの答えをこのレポートで出さないといけないですね。

 

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