2020-07-28 「Talking Book」に見るスティービー技法ビッグバンの予兆/研究レポート公開シリーズ14 スティービー・ワンダー レポート 2019.6.5⇨2020.7.28更新 スティービー・ワンダーの和声構造 ~非視覚的クオリアを活用した作曲技法~ 前回 www.terrax.site 目次ページはこちら アルバム16;「Talking Book」(1972) open.spotify.com 事例57;You Are the Sunshine of My Life (CDタイム 0:14-) Aメロ B |E |D#m7 |G#7(♭9) | C#m7 |C#m7/F# |B |C#m7/F# |×2 Bメロ B |E E/F# |B |E/F# | B |E E/F# |A#m7(♭5) |D#7 | G# M7 |C# |G#m7 |G#m7 | C#7 |C#7 |C#m7/F# |F#7 |〜 =degree= Aメロ Key=B I |IV |IIIm7 |VI7(♭9) | IIm7 |IIm7/V |I |IIm7/V |×2 Bメロ I |IV IV/V |I |IV/V | I |IV IV/V |VIIm7(♭5) |III7 | VI M7 |II |VIm7 |VIm7 | II7 |II7 |IIm7/V |V7 |〜 BメロでVIM7が現れるが、これはG#メジャーキーへの平行長調への転調ですね。 これが一旦C#に流れ、元のキーのVIm7であるG#m7となり、ここからスティービー得意のII7に流れ、主調主和音に回帰。 これまで実験してきた和音の空気感をしっかりつかんで、よりハートフルな曲の中で活用が可能になった、という印象を持ちます。 最初はなんでこんなことできるの!!! って思ったけど、全曲分析の強みは、それが手に取るようにわかること。 盲目のスティービーにとっての太陽は、愛と暖かさの象徴。なかなか晴眼者には遠回りな表現ですが、真理が表現されている、と考えることもできます。 もし彼が単純に「ただ鍵盤で把握しやすいからクリシェを使うのさ」と発言したとしても、完成されたコード進行はもはや彼の言語です。 事例58;You And I (CDタイム 2:11-) open.spotify.com Aメロ F# B |Bm7 |F# B |Bm7 | A#sus4 A#7(#9) |D#M7 |F#M7 C7 | Fm7 Fm7(♭5) |G#m7/C# C#7 |×2 Bメロ G#m7 |G#m7(♭5) |F# |D#7(♭9) | G#7 |G#m7/C# |F# | C#m7 F#7 | エンディング B |Bm7 |F# |D#7 | G#7 |C#7 | DM7 |AM7 |EM7 G#m7/C# |F# || =degree= Aメロ key=F# I IV |IVm7 |I IV|IVm7 | IIIsus4 III7(#9) |VIM7 |IM7 IV#7 | VIIm7 VIIm7(♭5) |IIm7/V V7 |×2 Bメロ IIm7 |IIm7(♭5) |I |VI7(♭9) | II7 |IIm7/V |I | Vm7 I7 | エンディング IV |IVm7 |I |VI7 | II7 |V7 | VI♭M7 |III♭M7 |VII♭M7 IIm7/V |I || エンディング部分に注目。 後のoverjoyedを思わせるエンディング。ダイナミック! 少しずつスティービーの音楽が、ノリの良いものから、こうした落ち着いた音楽に移行していくことを指摘する人もいますが、ユーミンもそうですが、長く音楽活動をして天賦の才能を持つ人だけに訪れる変化の傾向とも感じます。 またこうしてすべての楽曲を眺めていくと、それは変化というより、進化であり、ノリの良い音楽が持つ要素がしっかりこうしたバラードの中にも折り込まれていることがわかると思います。 そしてなにより、スティービーのノリの良さはもちろん、過去の楽曲も今埋もれることなく健在で、楽曲も忘れられることはありません。不朽、なんです。 目次ページはこちら その14-2へ www.terrax.site