2019-09-27 中心軸システムと十二音連関表の違い 音楽コード考 音楽制作・勉強 2018.11.16→2019.9.27更新 中心軸システム と 不定調性論(2019) - 音楽教室運営奮闘記 不定調性論には十二音連関表、というものがあります。 横の組み合わせが中心軸システムや、シェーンベルクのチャートに似ています。この十二音連関表の作成には根拠があります。 お時間あるとき、動画などでも解説していますので下記の前後の回などもチェック頂ければ幸いです。 www.youtube.com ===== これらは8倍音までの類似点(発生倍音として、というよりも数理の共通性として)を用いてグループにしています。 c,d#,f#,aについて考えてみましょう。 C=c,c,g,c,e,g,a#,c(1倍音、2倍音・・8倍音の順です) D#=d#,d#,a#,d#,g,a#,c#,d# F#=f#,f#,c#,f#,a#,c#,e,f# A=a,a,e,a,c#,e,g,a これらの倍音から、基音と重複音を抜きます。 C=g,e,a# D#=a#,g,c# F#=c#,a#,e A=e,c#,g 更に順番を整えましょう。 C=e,g,a# D#=c#,g,a# F#=c#,e,a# A=c#,e,g 現れたのは、c#,e,g,a#。すなわち十二音連関表の上の領域の音です。 となれば、他も調べてみてください。 こうなり、 こうなります。これは上方倍音です。下方倍音は逆になります。 下方倍音の発生。 だから最終的には上方と下方という領土的絶対性は崩れてしまうのです。 C△=c,e,gですが、eとg音はcにとっての上方音であり、bにとっての下方音です。 Emというコードを認めるのであれば、下方集合を避けては通れません。 結果的に和音が絶対的に上方に属するか、下方に属するかを決めることができなくなる、という意味です。 これらの関係性は連鎖して繋がっています。 ====== 十二音連関表は平均律によって生まれる表でもありますのでこれそのものも人工的な美であると言えます。本来はこのように12音に分けてしまうと微細な音関係のさらなる細かい美的構造を見ることはできません。 これはいっぱい異なる大きさの円が集まっています。 振動数で言うなら、 431,432,433,434,435,436,437,438,439,439.1,439.2,439.3... というような様々な数値の音名を平均律では440のAという音名に統一して扱うわけですから、 平均律は微細な違いを統一し、先ほどの円の集合は、 と簡易表現しています。人類的には分かりやすいですが、自然の構造の何物も示しえていません。だから音楽も平均律も人が勝手にデフォルメしたものになり、ここからは自然の真理を探究するより、そのようにデフォルメしてしまう自分という存在を探求し他方が面白いでしょう。もしあなたがプロの研究者でないとしたら。 自分のモデル、方法論を作りましょう。体系になどしなくてよいですから。 不定調性論は、その「愚かな行為」の筆頭に立って発信し続けたいです。 ===== 12音連関表のグループ分けは、機能が一致する、とか、役割が等しい、とかの理由でグルーピングされているのではなく、純粋に数理的な関係性によってグループにしているだけです。 ここが中心軸システムやシェーンベルクの表とは根本的に違うところです。 ==== CM7の対称性を探す。 ちょっと深いところに行きます。 不定調性論では、「和音・和声の分子構造」という考え方があるので、個々の和音を自在に自分のイメージできる形に置き換えることができます。 たとえばCM7であれば、 このように、一次的な上方性下方性で図式化できます(他の形もできます)。こうしたイメージを個人が自在に作ることにより、CM7が存在し、時に鮮明なイメージになって音楽的役割を果たすわけです。 もちろん、こうしたイメージの先に、 となり、より音楽表現に直結していきます。上の絵から、CM7のきらりとしたアルペジオが聞こえてきませんか?それが音楽的クオリアであり、不定調性論における音楽制作の動機です。図式化は美的イメージ化の初めの一歩であり、そこからどんどん具体的に演奏法、表現法、ハーモニーにしていきます。 音楽的素養のある人は、こんなイメージなどしなくともすぐに音楽にできます。 音そのものが完全に感性の内との翻訳を果たしているからです。 で、先の十二音連関表にそのまま当てはめると、 こうなります。対称性も何もありません。 でも機能和声論を刷り込まれているひとは、このCM7という存在に存在意義を感じていることでしょう。 そこでそのイメージに合わせて何とか対称性を作ってみましょう。 不定調性論では、横のグルーピングを壊さなければ、この表をどんどん拡張して良い、ということになっています。 それぞれを分割し、下記のように配置してみましょう。 CM7がまとまるようにしてみました。BとFはFの列です。これらはGの列の一つうえにある必要があります。またはCの列の一つ下にある必要があります。それを守っているだけです。 CM7を塗りつぶしてみましょう。 なんか不格好ですね。となりのF#M7も塗りつぶしてみましょう。 これで対称性が出来ましたね。 そうなんです。12音ではcの裏面の領域としてのf#が対称性を担っているんです。まるで陰と陽のように。 もちろん配置は皆さんが好きなように配置して構いません。これらの配列には横のグルーピング以外特にこうでなければならないというものはありません。 (横の順番を変えてもOKです。ただし規則性があればより美的価値観を生み出せるでしょう。) 結果として不定調性論では、ある音a(表面領域)とその裏面の音haの音(裏面領域)=増四度関係にある音をセットにして音楽を考えていくことで独自の理解法を作っていきます。 音を倍音の数理で分類する事で、視覚化できる配列図を作ったわけです。 機能や進行性とは関係なく、その数理性を組み合わせることで、和音の響きはできており、和音の響きがあなたに感じさせる意味や感情、イメージを学問的に具体化するには、その音を表現したり、歌ったり、記号に書ける必要があります。 そこでこの十二音連関表を活用していこう、というわけです。 ですから中心軸システムのように、機能性を分類し、区分けして新たな制限を設ける、という意味はありません。自在に12音を用いるための出発点としてセッティングしているだけです。 中心軸システムを容認した人が、自在に和音の代理を組み合わせることを覚えた先、アーティストはそれで満足することはありません。その先に進んで、より自在に12音を使いたいと感じるでしょう。そのときどのように12音の敷居を"自分の意識の中から取り除くか"(障害は自分が作っているから)、ということと向き合ったとき、不定調性論的な思考が役に立てば大変嬉しく思います。 ========== 当ブログの一般楽理関連記事目次はこちら www.terrax.site