音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

中心軸システム と 不定調性論(2018)★★★★

中心軸システム と 不定調性論

   

 

中心軸システムの存在については、知人の博士号持ちの中にもご存じない方もおられました。

wikipediaなどにも本人に対する解説はほとんどありません。結構ドメスティック(ローカル)なものなのでしょうか。

 

バルトークの作曲技法 エルネ・レンドヴァイ 著/谷本一之 訳 

音楽の分析や制作思考はどこまで行っても「個人の意志」であり「中心軸システム」も「個人が考えた方法」です。それは不定調性論も同じです。

ゆえに方法論をうのみするのではなく、まず自分なりの観点で理解し、自分の方法として咀嚼展開し、即ご自身の音楽をその方法論によって作り続けることで方法論そのものを自己発展されることに邁進されますと良いと思います。

 

 =====

「中心軸システム」は機能の拡張解釈のあり方が面白いな、と感じました。

 

このシステムは、トニックとドミナント、サブドミナントという主要な機能の制限範囲そのものを拡張してしまった方法論です。

五度圏で

F-C-G-D-A-E-B-F#-C#-G#-D#-A#

F-C-G-

D-A-E-

B-F#-C#-

G#-D#-A#

と分けると、

SD-T-D

と並んだ四つの調C-A-F#-D#のTが連鎖していることがわかります。

これによりこれら四つを関連させていこうというアイディアです。

 不定調性論はこれらの繋がりを数理的に明らかにしました。

早合点しないで頂きたいのは、繋がりがあるなら代理して良い、という発想にならないで欲しい、という点です。

この数理を用いればあなたが思っている以上の転調が行えるのではありません。

あくまで数理的だ、というだけなので本来あなたが用いるべき進行感になっているかどうかはその都度自分の感性で判断する必要があります。

拙論では、ではいかに感性を鍛えるのか、ということに重点を置き音楽を考えていきます。

 

 

そもそも、トニックって何だ?という問いについてあなた自身がしっかり持論を持っていなければなりません。

それゆえなんとなく中心軸システムを鵜呑みにして中心軸システムで作った曲のアレンジをあなたが聞いてみると、

「なんかピンとこないけど、こういう感じになるんかなぁ中心軸システム・・・」

という印象になるのではないでしょうか。

しかしながら最後には、

「さてと、勉強はこれくらいにして、自分の音楽に戻ろう」

となると思います。

結局あなたの音楽はあなた自身が納得のいく脈絡を編み出し、それによって作られていかなければならないからです。システムはあくまで商業的に売りやすくするための過度なまとめ作業であって、システムに従っていれば問題ない、となってしまうのは本来望むべき到達点ではないのではないか、と考えます。

 

===== 

<参考>
「バルトークの作曲技法」エルネ・レンドヴァイ著 谷本一之訳 第17版(2005)

※中心軸システムはバルトークが考えたものではありません。
P1-2******
Cをトニカ(T)とすると、4度上のFはサブドミナント(S)、5度上にはドミナント(D)である。
====
と書かれています。これはこれまで学んだことと違わないので問題にはされないでしょう(不定調性論はこの機能存在を疑うところから始まります)。

そもそもこの機能存在そのものが意識に刷り込まれた根拠のない観念です。

それを絶対しないためにどうすれば良いかを考えると不定調性論的な発想になります。

 

P2******
トニカと平行関係にある6度上のAがトニカの機能をもつものとすれば、
====

ここに「仮定」が出てきます。伝統的にC=Amは平行調の関係を拡大解釈したものです(C6を転回するとAm7になる等の理由から)。でもここで同書がのべているのはAmではありません。Aです(または単音のaについて述べている)。C→Aは「平行調の同主調への転調」です。このAをあなたはトニックCと同類とすることに本当に同意しますか?ここをスルーしてはいけません。自分で考えるのです。

これは従来の主調転調であり、CのキーからAのキーに転調しただけであり、それならCからDに移っても同じです。

これはあくまでレンドヴァイ先生が仮定したものであり、あとはこの仮定にあなたが同意するかしないか、というだけの話であり、理論というよりかは他者の解釈への同意を問われているだけです。あなたは不定調性論に同意するか?という問いと同じである、と考えてみれば分かると思います。

 

あなたが考えるべきは、いかなる理由で

CとAは相互に関係付けられているか、です。不定調性論ではこの二音は数理的な類似性があることを発生倍音から紐づけます。

これを数理で考えてもいいですし、共感覚的な印象色彩感で分けても良いと思います。

これを、

"レンドヴァイ先生がそう言ったから"

という理由だけで認めてしまうと中心軸システムはあなたの音楽の中で真価を発揮しないでしょう。

 

 人とマウスのDNAは99%類似しています、だからといって「人とマウスは類似である」というふうに言われたら、納得のいく部分といかない部分があるでしょう。それが「人の印象」です。ここに微妙な違和感を覚えるなら無視してはいけません。その違和感を追及してください。

 

中心軸システムではE=e,g#,bという和音がドミナントの機能に類別されます。これはなぜですか?

この和音にはg音は入っていませんから展開してもドミナントの要素を与えることはできません。ジャズ理論では、ドミナントになるためにはトライトーンを持たなければドミナントにはなりません。G7であればf,bという音を持つことがドミナントの条件です。しかしこのE△はf,gを持ちません。

E△がドミナントの要素を持ちえる、とするならば、別の「ドミナントとできる条件」を付け加える必要があります。

たとえばAマイナーキーにおけるVはEmですが、これを「ドミナントマイナー」、このEm→AmがE7→Amになると「ほら!!Eはドミナントだよ!!」ということができます。ドミナントという機能を持つ権利が拡張されてしまっています。

あとはあなたがどこまで同意できるか、です。

 余談ですが、この「ドミナントマイナー」ですが、「弱いドミナント」です。サブドミナントマイナーというのも「弱いドミナント」というニュアンスと言われたりします。

つまりサブドミナント=弱いドミナント

なわけですから、トニック以外は、すべてドミナントの性質を持った和音、ということができます。

中心軸システムのサブドミナント軸の

f-a♭-b-dは構成音をまとめるとG7(b9)のルート抜きであると言えます。この集合そのものはドミナントです。でもこれはサブドミナント軸と分類されているわけです。

 

「その機能になるために持つ和音の性質」についてのルールがそもそもあいまいであることを利用して中心軸システムはその曖昧なところに切り込んでいったわけです。

 

AD

     

 

続きます。
P2*******
ここでDTS(ブログ主注「ドミナントートニカーサブドミナント」)のパターンが繰り返されていることに気づくが、この周期的繰り返しを五度圏全体に拡げてみると、中心軸システムの構成が明瞭になってくる。
====
とあります。
五度圏でc-g-d-a-e-という流れをT-D-S-T-D-と流れている、という指摘です。これはすでに「トニカと平行関係にある6度上のAがトニカの機能をもつものとすれば、」という仮定がすでに確定されていますから、その仮定の吟味が曖昧である以上、本来ここには論を進めることはできないのです。

あくまでレンドヴァイ先生の仮定を信じる者、共感出来る者のみが進んでいける段階です。

 

P3-4******
1つの軸の極点の音、いまそれをCとすると、その対極点の音Fisは他の軸の音、例えばAよりも強い機能的近親関係にあることに注目しよう。極点の音は常にその同軸上の対極点の音とその機能を変えることなく入れ替えることができる。
====
いわゆる裏コードの話、としていける部分、とされています。つまり、
G→C

Db→C
とすることができる、という発想です。
これ、単音で成り立つ、というのは100歩譲って良しとして、これをいきなりV7とIIb7という和音の関係にまで持っていくのは飛躍である、とも感じます。

どこにも和音の話はまだ出てきていません。あくまで単音の関係性だけを述べていただけです。

 これについては最後に再度述べます。
V7のその他の構成音はどこから来たのか、どのように発生させたのかが明確ではないので、これも「慣習の流用」になってしまうからです。

 

本来はV7→Iの機能と意味を疑うところから学習は始めなければならないのです。

でもそれやってると20年ぐらい経ってしまうのでここが曖昧になっていても誰も気にしないのです。そこが曖昧でも曲は作れるからね!!!笑。

 ====

例えばT-S-D-Tのバリエーションで見たとき、
key=C durとして、
C |F |G |C |

C |D |G |F# |
これらの各位置の和音は中心軸システムからの転回、となります。
機能解釈はそれでも良いですが、よく弾いてみてください。
「その音楽が言っていること」はまるで違うと思います。
つまり代理できたとしても、表現しているニュアンスが変わり、音楽的メッセージが変わってしまいます。これはただの転調である、と言われても仕方がありません。

 

ということはここで二つの音楽理論が発生してしまうことを意味しています。

自由に代理して良い、という方法論と、この代理を禁ずる方法論です。。

これを判断するのは誰でしょう。もちろんあなた自身です。

お気に入りのプラグインを挿すように自在に中心軸システムを使ったり、モーダルハーモニーを使ったり、でも最後は出来上がったものを「あなたなりに直す」はずです。

 

中心軸システムを信望していても、いつの日か作った曲の

「あ、この和音だけ、こっちに変えようかな」

と思う日が必ず来ます。四つしか代理和音がない中心軸システムを、必ず越える日がきます。

その時、あなたは自分の方法論を確立していなければなりません。

 

==== 

和音は「機能で連鎖」しているのではなく、「雰囲気が連鎖」しているのです。

例えば、
C |DmM7 |G7M7 |F# |
こうなったらどうですか?あなたはどう分析しますか?

このG7M7というのはチック・コリアが用いたコードです。

不定調性論ではG7M7を「苦く痺れるコード」とか自分で表現を作ります。「厳しいドミナント」とか既存の用語に沿ったものでも構いません。

あなたが頼れるのは最後はあなただけです。

中心軸システムは四つの軸に独自の関連性を与えて組み替えの規則を作った点が素晴らしいと思います。

そして現代においてはその先、さらに不可思議な和音を使うか、使わないか、使うならどういう根拠か、と考えなければなりません。

沢山方法論がひしめきあいそうです。

そこで頼れるのは己が鍛えてきた感性のみ、と覚悟できればいちいち様々な他人の方法論に右往左往しなくて済みます。

この辺が数学と音楽の決定的に異なるところです。
 

同書にこんな表記があります。

P9******
註3)古典の和声では7度上の和音(H-D-F)が、ドミナントの機能をもつとされるのには若干問題がある。リーマン(Rieman)はこの和音を属7の和音の根音を省略したものに過ぎないとしているが、しかし、いまH上に減3和音の代わりに、H上に長3和音や短3和音を考えると判然としてくる。それが独立した役割を持つ場合には、Hは明らかにサブドミナントの機能を持っているのである。
====

この手の認識の差異を示すのは当時のやり方です。現代の超多様性の中では、いくら自分の方法を発信しても反論する人が2秒後には出てきます。大切なのは「自分は自分のやり方で進まないと進めない」ということを知ることだけだと思います。

 

例えば、
C |B |Em |Am |
を弾いてみてください。
C→Bでは、皆さんは何を感じますか?「ドミナント感?」「サブドミナント感?」
B→Emではドミナントの解決感を感じるのではないでしょうか。
では、
C |Bm |E7 |Am |
ではどうでしょう。Bmは「サブドミナント感」を得ましたか??
不定調性論では、ここに「個人差がある」と考えます。だから「サブドミナント感」などと定義しません。そうあなたが感じるならそうでしょうし、だけど人は同じようには感じませんよ?ということです。
だから「CがBに行った感」という感覚を自分なりに捉え、それが音楽の表情的に「どんな感情を表出しているのか」を各自が汲み取り、それがソロをとる際のコード進行なら、どんな風に自分のソロで表現しようか、というようなことを各自が考える、ということに重点を置きます。何の機能か、何の代理か?とは考えない、という意味です。

 

機能の解釈の違いは歴史的な観点の違いであり、あなたには関係ないんです笑、あなたにはあなたの観点があり、それを曲作りに活かせば良いだけです。
だから「中心軸システムはこう定めているから、この進行は正当だ」というのは逃げ。です。

俺がイイと思うんだからイイ。

と思わねば戦えない日がきっときます。

あなたの感覚を真ん中に置く、というのはすごく勇気がいります。

でもそれをし始めた途端、勉強なんかしてる暇ない!自分は人前で演奏しなきゃ!この自分を見てもらわなきゃ!!ってなるはずです。それが音楽学習のゴールであり永遠のスタートです。そのスタートラインに辿り着く距離をできる限り最短距離にすべきなのです。


故にHのコード(つまりVIIのコード)が、どんな機能で言われようが、あなたには関係がないんです。レンドヴァイ先生の意図をくみ取ったら、あとはすぐに「自分はどう考えるか」「どう使うか」に移行し、分析、実践に行動を移していただきたいわけです。

また観点を変えれば、レンドヴァイ氏のこのアプローチこそ「自分のやり方」の極致だと思いませんか?楽しかったんじゃないかな?と思います。この研究してる時笑。

===== 

最後に問題提起。

V7の、v以外のvii,ii,ivはサブドミナントな領域音ですが、構成音比率サブドミナント:ドミナント=3:1でもV7はドミナントなんでしょうか?
機能ってそもそも和音のどこにある、どんな要素なの?、、、って思いません?

またc-e-g-b♭-d-f#-aってC7(9,#11,13)だけど、これはドミナントでしょうか。

ドミナントの要素=g,b♭,e

トニックの要素=c,f#,a

サブドミナントの要素=d

 

ブルースではC7はトニックになりますが、既存論ではドミナントです。この矛盾をスルー出来るのはなぜですか?

 それを最後に決めて行動するのは誰ですか?

 

結局あなた自身だと思います。

 

あなたの感性の鍛錬こそが音楽をより自身を納得できるものにしてくれる、というわけです。だからできる限り勉強は現場に出ながら、実際に仕事を受けながらしていってください。最初は苦労しますが、最短距離だとわかります。

 

おわりに

調性論でも申し上げた通り、12音の関係性は「いかようにも関係性を作ることができてしまう」ことを上手に活用しましょう。

あなたがどんなにその方法を信じても、それは「主観」ですから、提示するだけにとどめ、あとは建設的なディスカッションをしましょう。

www.terrax.site

==コーヒーブレイク〜M-Bankロビーの話題==

とりあえず飛行石買っておきません?

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/519%2B7T%2Bu4BL.jpg

天空の城ラピュタ 光る飛行石 光のみちびき