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音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

11,Sirabhorn / Pat Methenyを不定調性論で読み解く(2017)★★★★★

パット・メセニーの不定調性コード進行分析
(2013-06-08⇒2016、2018改訂)

11,Sirabhorn / Pat Metheny


Pat Metheny-Sirabhorn (1976) HD

<参考>主要な曲のテーマ部分はほぼ掲載されています。

Pat Metheny Songbook: Lead Sheets 

   

 

 

何とも云えない、ふんわりとしたやるせなさ、というか、まるで"うわのそら"で独り言を話しているようなギターの雰囲気が好きです。

 

C |Bbm |Gb |Em |
B |G#m7 |E |Dm |

GbM7 |Fm7 |GbM7 |Fm7 |
DM7(#11) |% |% |% |

と続きます。

センターコード=Cとしてみますと、
I |VIIbm |Vb | IIIm |
VII |VI#m7 |III |IIm |

VbM7 |IVm7 |VbM7 |IVm7 |
IIM7(#11) |% |% |% |
(※「%」は前の小節と同じ、という記号です)

当然どう頑張ってもCのキーには収まりそうもありません。

メロディも最初の四音でCコンビネーションオブディミニッシュスケールが使われています。

C-C#-D#-E-F#-G-A-A#-C

ですね。

 

また、

GbM7 |Fm7 |GbM7 |Fm7 |

はシークエンスによる脈絡づくりですね。スティーリー・ダンなどが得意です。
DM7(#11) |% |% |% |

これは1コードでモーダルに雰囲気を作っていきます。前半部分で落ち着かないふやけたような印象を、このコードでがっちり定着させる効果があります。

大切なのは、そうやってとらえて、あなたが納得すればいい、ということです。

そしてメセニー氏にはメセニー氏の根拠があるので、それはそれ、これはこれです。

人生はすべてあなたのために時間を使ってください。

 

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さて、この音階(C-C#-D#-E-F#-G-A-A#-C)から和音を作ってみましょう。
C△ができますね。さらに、
Bbm=A#,C#,D#も
Gb△=F#,A#,C#も作ることができます。

 

Pat本人がこの曲をどのように作ったかは、本人に伺ってみなければ分かりません。
でも本人に聞いてもその発想にこちらが共感できなかったりするかもしれません。


それよりも大切なのは、あなた自身がどう理解するか、です。

 

この曲を聴くと○○○○が浮かぶ、という現象を「音楽によるクオリア」としますと、そのとき何が浮かぶかは一人一人違うはずです。

それがこの曲に対する印象ですし、その理解があなたなりの別のオリジナル曲を生むわけです。

・それじゃ雑誌が取材してる意味がないじゃないか。

・本人無視かよ。

・評論家要らなくね?

その通りです。雑誌は雑誌が考えた論考を述べているにすぎません。本人も自分の意図を述べているにすぎません。そしてあなたもあなたの信念に基づく印象を述べているにすぎません。そこに差はないのです。金銭的価値が発生する、と思えば、そこにあなたが投資し、あなたの作品を作る原資にすれば良いだけの事です。または生活の中の潤いという価値を生み出せばよいのです。だから他人の解釈は関係ありません。この記事もあなたがどう理解するか、それだけを把握して発信すればよい、ということを行うための分とについての記述を述べています。


この曲の下記の和音の流れを弾いてみて下さい。C⇒Bbm⇒Gb⇒Em⇒B⇒G#m7⇒E⇒Dmという流れにあなたはどんな音楽的脈絡(あなたにとっての意味)を感じますか?

感じたからと言って囚われなくてもいいです。それらの印象は、一年後には変化していたりするからです。

不定調性論は、この変化する感覚に応じて解釈をその時々で展開できるように構成しています。

 

 

     

c⇒全音下のマイナーコードBbm
という動き、ダイアトニックではV⇒IVmぐらいしかありません、

同じ動きをG♭⇒Emにさせています。

私は、Bbm⇒Gbにかろうじて、Im⇒VIb感を感じました。"ギスギスするような開放感"です。

しかしすぐEmでまた不可思議感が出ます。「普段あり得ない方向に向かうコードを使ってみよう」というような意図を感じました。

 

メジャーコード⇒マイナーコード

 

という連鎖のシークエンスが統一されています。

また、こういう進行では三拍子が扱いやすいです。三拍子はどこか滑稽で可愛らしく、見たこともない妖精が踊っているような感じも受けます。これは拍子から感じ取るクオリアかもしれません。

テンポよく和音が変化してくれるので、四拍子のときよりも和音の繋がり感が強まる印象もあります。


"なんかぴんと来ない、もやもやっとした感じだけど、なんか好き"

というような感想こそが、機能和声分析による

"〇マイナーキーのSDから、〇キーのDに流れた"

というような分析の先にある、より実感的な分析になります。その方が自分の音楽にどう活かすか、という命題への答えに近いからです。

 

この感想から「自分、この曲の何が好きなんだろう?」と思索できる人は音楽家です。

パットのギターの音色だったり、フレーズの抑揚だったり、必ずあなた自身がそう感じた理由を探り当てることができると思います。

そして更にそれを自分で実践しようと思えたら、もう立派なクリエイターです。

パットとおんなじことをやっても満足しないでしょうし、自分はもっと違う方向で、と思うはずです。当然です。あなたはパット・メセニーではないのですから。

 

以下は拙論による解説です。

======

この曲は私は、「普段いかないところ(コード)に行ってみる」進行のアイディアの連鎖によって出来上がっているのではないか、と推測しました。

というか私ならそんなアイディアが浮かんだら、そう云う考えの曲を作ってみたいと思うからです。

C  |Bbm  |

私のこの進行の印象は、

ある曇り空の下で、なんだか不思議な郷愁を感じ立ちて止まった経験…

を思い出しました。微妙な既視感です。
もしギターで作曲しててC→Amを弾こうとして、1フレット誤ってこの進行を弾いたらこれだ!!!!って感じて、「なんかこれ、使えないかな?」って思うかもしれません。

それをパットが先にやっている、だからパット・メセニーのほうが凄い、みたいに思ったり。


不定調性論では、このような進行を動進行と言います。ちょっと解説します。

C△=側面領域を一つ含んだ静和音
Bbm=側面領域を一つ含んだ静和音
Gb△=側面領域を一つ含んだ静和音
Em=側面領域を一つ含んだ静和音
B△=側面領域を一つ含んだ静和音
G#m7=側面領域を二つ含んだ静和音
E△=側面領域を一つ含んだ静和音
Dm=側面領域を一つ含んだ静和音

※「側面領域」とは短三度音を含む、という意味です。C△であればe-gという関係を含むことを指します。この記事には直接関連がないので無視していただいて結構です。

拙論ではこれらはすべて「静和音」という性格になります。

教材の第五章からの引用ですが、
一つの和声から他の和声に進行するとき付加音を用いず、互いのコード構成音の共通音が非共通音より多い場合は掛留概念の拡張(静進行)とし、構成音の変化が半数以上を占めるような進行を「第一種動進行」とします。

特に一般的な静進行は一音ないし二音で変化する場合に適用するのが妥当でしょう。
また四和音⇒六和音といった付加音による和声進行も、変化音が多い進行と解釈し、この場合第二種動進行とします。(中略)


・その和声の構成音からの一音変化(一音除去、一音付加も含む)による掛留進行のことを「第一種静進行」とします。


・その和声の構成音からの複数変化(複数音除去、複数音付加によりコード構成音数と同等、または少ない場合に限る)による掛留和音のことを「第二種静進行」とします。※二音程度の変化が一般的です。

という記載があります。

www.terrax.site


構成音、というのは実際演奏された和音で本来は判断するのですが、コードネームが記されている場合は、コードネームが指し示す和音においても進行の分類ができます。
ちょっと見てみましょう。

C△=C,E,G

Bbm=Bb,Db,F
この構成音の変化は全音変化にあたるので、第一種動進行になります。
次に、
Bbm=Bb,Db,F

Gb=Gb,Bb,Db
で、一音変化の掛留進行であり、第一種静進行とされるものです。
また、
Gb△=Gb,Bb,Db

Em=E,G,B
でまた全音変化で、これも第一種動進行になります。

この曲の最初の四つのコードは、
静和音→(動進行)→静和音→(静進行)→静和音→(動進行)→静和音
となります。

ゆえにV7→IM7というのは、G7→CM7なら、
g,b,d,f→c,e,g,b
第二種静進行、またG7(b9)→Cadd9だとg,b,d,f,a♭→c,e,g,b,dで第一種動進行という違いになるんですね。もちろんヴォイシングでの使用音によっては、また解釈が違ってきます。つまりコードネームや機能ではなく、どう変化したかを見て、音楽的違いを見ていきます。

さらに拙論では「動和音」という概念もあり、「裏領域を含んだ和音」としてドミナントセブンスやディミニッシュコード、♭9thテンションコード、Xm7(b5)、またはX△(#11)など増四度を持った和音を差します。

後はそれらの進行感に音楽的脈絡を感じることができるか?という鍛錬になりますので、これは数をこなしていくしかありません。

www.youtube.com

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これは形態分析ですので、それ自身は単純に、街行く若者のファッションチェックと同様、表面的な品定めにすぎません。しかしこれらの進行を「非機能進行」と呼んでひとくくりにするよりかは、良いのではないかと思っています。

和音進行から機能を無くした時、あらゆる和音連鎖が解釈可能になります。その時どのように分類するか、という最初のステップが動和音・静和音・動進行・静進行というわけです。

そこから不定調性進行や、モードマトリックスなどの考え方に展開できれば、何も考えず、これらの進行が持つ意味をあなたの中に定着することができるでしょう。

そうすればジャズでもフュージョンでも現代音楽でも怖くありません。