教材より四度領域の話を抜粋します。
157,四度領域の和音の再発見
下部テトラコード c d e♭ e f
上部テトラコード g a b♭ b c
機能和声論はペンタコード(5度の音域)とテトラコードを使い分けて音階と和声を作ってきたと言えるでしょう。主要和音はペンタコードから作られました。
C7からeを抜いた時、これはCu4であり、メジャーでもマイナーでもない四度領域でできた和音である、という解釈が成立する、という意味です。
基音cのとき、完全四度の基礎和音は低音から以下のようになります。
Cu4 構成音 g b♭ c
これが四度における「主和音」となります。
この領域の基音cは上部にあります。この高音部に基音のある配置は、機能和声論の「低音優先」と真逆です。ここでは「上部に基音がある世界」を考え直さねばなりません。
159,四度領域の基礎進行
Cu4 Fu4 Cu4
五度領域では、I-V-Iが一般的な進行であったものを、四度領域を考える最初の段階では、I-IV-Iという進行を主体において考えることで度領域を扱った時と同じ感覚で進行論を展開できます。
Cu4 Fu4 Cu4を上方四度のリアクティブモーション
Cu4 Gu4 Cu4を下方四度のリアクティブモーションとすることができます。
構成音はc e♭ f g b♭で整合性が現れます。
その代わりVがドミナント的ではなくIVがドミナント的となる、という逆の発想になります。教材ではこの発想から四度領域の音楽を考えていきます。
162,四度領域の不定調性進行分類
この分類は五度領域音楽と完全に呼応しますので、これによって五度の音楽と四度の音楽が確立できることになります。
<四度領域不定長調>
・表面的回帰性長調展開の例
Cu4 Fu4 Cu4
Cu4 Gu4 Cu4
※四度領域のリアクティブモーションです。
・四度領域側面的回帰性長調展開の例
Cu4 Au4 Cu4
Cu4 Du4 Cu4
Cu4 Eu4 Cu4
・四度領域裏面的回帰性長調展開の例
Cu4 F#u4 Cu4
Cu4 C#u4 Cu4
Cu4 Bu4 Cu4
<四度領域不定短調>
・四度領域表面的回帰性長調展開の例
Cl4 Fl4 Cl4
Cl4 Gl4 Cl4
・四度領域側面的回帰性短調展開の例
Cl4 Al4 Cl4
Cl4 Dl4 Cl4
Cl4 El4 Cl4
・四度領域裏面的回帰性短調展開の例
Cl4 F#l4 Cl4
Cl4 C#l4 Cl4
Cl4 Bl4 Cl4
中心に戻ってこない展開(非回帰性展開)例。
Cl4 Gl4 Dl4 Fl4 A♭l4・・・
<四度領域上方系不定領域>
基音は自由で、上方領域を優先した反応領域を固定しない進行。
・四度領域表面的回帰性領域展開での例
Cu4 Fl4 Cu4
Cu4 Gl4 Cu4
・四度領域側面的回帰性領域展開での例
Cu4 Al4 Cu4
Cu4 Dl4 Cu4
Cu4 El4 Cu4
・四度領域裏面的回帰性領域展開の例
Cu4 F#l4 Cu4
Cu4 C#l4 Cu4
Cu4 Bl4 Cu4
またこれはそのまま和声単位作曲技法にも応用でき、
C△ A△ C△
という進行がお気に入りで、あなた自身に解決進行を見いだせる、という場合、
C△/E A△/E C△/E(構成音を根音に)
C△/F# A△/F# C△/F#(センタートーンcの裏面領域を根音に)
という流れなどを作ることができるでしょう。難解で調の定まらない進行は原初の単純な進行からイメージを膨らませる、というのが本書で紹介している作曲の方法になります。
<四度領域下方系不定領域>
基音は自由で、下方領域を優先した反応領域を固定しない進行。
・四度領域表面的回帰性領域展開での例
Cl4 Gu4 Cl4
Cl4 Fu4 Cl4
・四度領域側面的回帰性領域展開での例
Cl4 Au4 Cl4
Cl4 Du4 Cl4
Cl4 Eu4 Cl4
・四度領域裏面的回帰性領域展開の例
Cl4 F#u4 Cl4
Cl4 C#u4 Cl4
Cl4 Bu4 Cl4
<四度領域内定調性>
基音は固定され、各領域を優先した進行。
・四度領域上方系内部回帰性展開の例
Cu4 Cl4 Cu4
・四度領域下方系内部回帰性展開の例
Cl4 Cu4 Cl4
これは長二度で移行するような和声進行になります。
Cu4 Cl4 Cu4 ⇒ Cm7 Dm7 Cm7、C7 Dm7 C7
Cl4 Cu4 Cl4 ⇒ Dm7 Cm7 Dm7、Dm7 C7 Dm7
163,四度領域の動和音/進行形態
五度領域のときと同様です。
・その和声の裏面領域音を単数有する和音のことを「第一種動和音」とします。例;C7(=Cu4+M3) 、Cm7(♭5)(=Dl4+♭5)
・その和声の裏面領域音を複数有する和音のことを「第二種動和音」とします。例;C7(#11)、Cm7(♭5,13)
・その和声の裏面領域音を基本和音と同数持つ和音のことを「完全動和音」とします。例;C7(♭9,#11)
・その和声の側面と裏面の領域和音を有する和声を総じて「第三種動和音」とします。例;Cu4(♭9)、Cl4(13)≒Dm7(13)
・その和声の中に裏面領域を新たに付加して作る和音を「第四種動和音」とします。例:Cu4(9,♭13)、Cl4(9,♭13)
※なお四度領域和声単位も短三度を含むため、常に静和音となります。
<四度領域の動進行と静進行>
・静和音から静和音への静進行(S-S-S=3S)
Cu4 CM7omit3 Cg
Cl4 C#M7omit5 C#mM7omit5
・静和音から静和音への動進行(S-S-A=2SA)
Cu4 Du4 Eu4
Cl4 Al4 Fl4
・静和音から動和音への静進行(S-A-S)
Cu4 Calt7omit3
Cl4 Dalt7omit3
・静和音から動和音への動進行(S-A-A=S2A)