音楽教育活動奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と...旧音楽教室運営奮闘記。

全国こども電話相談室の"おんがく"の質問から〜音楽制作で考える脳科学15(休憩)

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今回はちょと一休み。

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以前興味深く聞いていたラジオの質問がまとまっていたので興味深く拝見しました。

永六輔さんの回答の妙々さにすごい考え方があるな、と感じたのを覚えています。

上記ページ下の「戻る」をクリックいただくとその他の質問を見ることができます。

 

様々な著名人が回答者になって丁寧に応えるのが魅力的な番組でした。

 

印象深い言葉を引用しますね。

Q.リコーダーのゆびが上手じゃないんです。どうしたらいいですか? (小3・おとこ)

の回答他から。(回答 歌手・タケカワユキヒデ)

知っておいてほしいのは「そもそもリコーダーがかんたんな楽器(がっき)ではない」ということです。小学校でみんな習うから「すごくかんたんなんだ」とお父さんお母さんも先生も思っているみたいだけど、うまくふくのはとてもたいへんなことなんです。

 

そしてきわめつけ、楽器をうまく演奏するコツなんですけど、それは自分が楽器をうまく演奏しているとイメージすることです。「うまくいかないなぁ」と感じることが出来る人は心配しなくてもかならず上手になります。なぜならうまくいっていないと分かるのは、どういう音がいい音か分かっている証拠(しょうこ)だからです。

イメージから入る、というのは脳科学本でいうところの、楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しくなるというやつですね。いわゆる「自己知覚-Self perception-」です。

先に上手に弾けるようにイメージする、っていうのは脳科学から来た知恵ではないと感じます。音楽家がそうするとうまくいく、という経験に基づいていると思います。そしてそれは脳科学的にも正論だった、ということですね。

また逆に難しい、と気が付いていないことでできてしまうビギナーズラックのような状況もあると思います。難しいと思ってしまうのが中級者ですから逆にそういう先入観が実際に難しくしてしまいます。ここはアドバイスの加減でとても注意するところです。

 

「うまくいっていないとわかる人はうまくなったイメージに向かっている」

というような言い回しは、今悩んでいる人への最高の賛辞だと思います。

あとは本当に努力の量だけの話です。

 

レッスンでの現実問題としては、最初に「難しいのは君が能力が低いわけではない」と教えて、その代わり絶対的な練習量が必要、と教えます。簡単だから今まで1日15分だった練習時間を1時間にしないと吹けない、という意識の書き換えがスムーズにできる人は上達します。

「あ、そんなにやるんだ(嫌)」と思ってしまう人はできないので笑、そういうタイプだとわかったら

・自分の練習ペースでどこまでできるようになりたいか

の相談をします。自分と楽器の示談交渉です。

楽器は素直に1時間やったる!!という人がうまくなる世界なんですね。

むしろこれこそ楽器の才能だと思います。

 

 

Q.私は、将来モーニング娘のような歌手になりたいんだけど、どうすればいい? (小5・おんな)

(回答 歌手・タケカワユキヒデ)

歌手になるために知っていてほしいことがあるんだけどね、それは「歌が好きだということと歌手になりたいということは別」ということです。歌手になれないんだったら歌なんかどうでもいい、という人は、最初から歌手にはなれないと思うんだ。だから、歌や音楽はずっと大事にしてほしいな。

作曲はしたいけどパソコンは嫌い、という人はやはり現代ではなかなか音楽業は難しいです。音楽は好きだけどライブが嫌い、人付き合いが嫌い、という人も同様です。でもそういう人にはそういう人なりの生き方があるので、「どこでどうやって生きるか」を真剣に相談できる先生を持つことが有意義だと思います(似たような人を探し問い合わせる)。

人付き合い教室(orパソコン教室)に行け!でないと音楽業は無理だ!という先生に当たると大変です笑。

そこである程度できても好きな人には勝てませんから逆に下手にスキルがつくと、サンクコスト効果でズルズルと仕事をしていくことになりがちです。ただその場をしのぐようなアドバイスにご注意ください。

 

Q. 中島先生は歌をやっていて、イヤになったときはどうしてましたか? (小6・おんな)

(回答 オペラ歌手・中島 啓江)

例えば、「何がイヤなことか」って考えるということは、うまくできないのは自分なのに、さぼっていることなのね。(中略) 音程がダメだったら、そこを何回も何回も繰り返して練習すれば、音程は取れるようになるの。(中略)それは、自分が努力すればいいことでしょ?

(中略) 人の言うことを気にしちゃうようになると、だんだんつまらなくなっちゃうんだと思うのね。

でも、あなたが「音程がズレちゃった」って気が付くことは素敵な事なのよ。 だって、それに気が付くって事は、あなたは耳がいいからじゃない。(中略)同じ所を飽きるくらい何回も繰り返して練習した方がうまくなるの。そうやって何回も練習することで、音が取れるようになるのね。

ここでも先のタケカワ先生と同じコメントが出ています。

"あなたが「音程がズレちゃった」って気が付くことは素敵な事なのよ。 だって、それに気が付くって事は、あなたは耳がいいからじゃない"

良いですよね。

 

Q. 嘉門達夫さんは、どうして替え唄をつくろうと思ったんですか? (小3・おとこ)

(回答 歌手・嘉門 達夫)

小学校の頃っていうと、運動会で走るのが速い人とか、ドッヂボールがうまい人とか、勉強がよく出来る人とか…どうしてもそういう人が人気者になったりするでしょう? でも、僕はその中のどれでもなかったんですよ。そこで僕は、どうやったら自分が人気者になれるか考えたんですね。 それで小学校2年生の時に「お楽しみ会」というのがあって、その時に僕は大阪に住んでいたので漫才の台本を書いて、友達にも覚えさせて、それをみんなの前で発表したらこれが大爆笑! (中略)人はこんなに僕のことを認めてくれて注目してくれるんだという経験をしたんですね。(中略)今があるというわけです。(中略)何でもいいんですよ。 絵を描くことでもいいし、歌を歌うことでもいいし、自分はこれだけは負けないぞというものを見つけて一生懸命やると、将来いいことがあると思うよ。(後略)

好きには敵いません。好きな人は一日中やっています。だから一日中やっても飽きないことを職業にすれば良い、となります。

 

Q. 11月に音楽会があって、小太鼓をたたくんですけど、リズム感がとれません。どうしたらうまくできるようになりますか? (小4・おんな)

(回答 歌手・タケカワユキヒデ)

楽器全部に言えるんだけど、自分が上手くなりたいなと思ったときに、2つ必要なことがあるのね。 それはね、まず1つは「イメージ」をすること。(中略)そのリズムをイメージしてみるの。 実際に手を使わなくてかまわないから、頭の中でそのリズムで小太鼓をたたくんだよ。 (中略)「ここでたたくんだよなー」って考えることが大事なのね。(中略)2つめは、実際にたたいていて、「あ、ここだ!」っていうときに、ちゃんと手が動くようにするための練習でね、(中略)ドラムをたたく人なんかは、よく自分のひざで練習するんですよ。 で、今言った2つを両方ともやると、小太鼓だけじゃなくても、楽器をやりたいと思ったときに上手くなるのも早いし、楽しくやることができます。 

ここでも自己知覚の話が出ています。

 

Q. あんまり歌がうまくないのですが、どうすればうまくなりますか? (小6・おんな)

(回答 歌手・タケカワユキヒデ)

A. キミは歌は好きですか?

こども:はい。 なんだ、じゃあ問題はないですね!

一同:笑 じゃあ、まず、自分で「うまくないな」と思った理由を聞きたいんだけども・・・、声の高さが合わないのかな?

こども:はい。そうです。

これはね、歌がうまくないんじゃないんだよ。 歌っていうのはね、自分の声に合わせて音の高さとかを決めるものなのね。 だからテレビで歌っている人たちだって、あれは歌う人たちの声の高さに合わせてまわりの人たちが演奏してるんですよ。 だからああいうふうにうまく聴こえるわけ。(中略)だから、全然気にしなくていいよ。(中略)たとえば、カラオケなんかに行くことはある?

こども:はい、行きます。 そしたらその時に、カラオケで音の高さをいろいろ変えてためしてみるといいよ。(中略)そうやって色々やってみて、自分に合った音域を見つけるとすごく楽になるよ。 (中略)とにかく、歌をキライにならないことが一番大事なんだよ。

 これは有名ですね。

アーティストの曲は、アーティストの声の特性に合わせて作られているので魅力的になるように戦略立てられています。

だから一般の人が歌をレッスンする場合「その人が最も魅力的に見える歌」を探します。その際に「えーこれはやだ!」と思ってしまうタイプの人は好きな曲を歌ってもらいますが、歌ってみて「確かに!歌いやすいし、この間友達にあってる!って褒められた!」みたいな経験ができる人はどんどん歌が完成していきます。

結構その人の自己イメージが大切なので、レッスンで上達する、しないはほぼ講師との相性と運です。

最初にタケカワ先生が

"歌が好きだということと歌手になりたいということは別"

と仰いましたね。

歌手になる、というのはそういうエンターテインメント戦略すらも面白い!と感じられる素養が必要だったりするんですね。

 

だから学生さんなどは、レッスンしながら、商業主義のスタンスや、戦略的音楽活動の面白さなどを話してどういうふうに反応するかをみたりします。最初は誰でもそういうことを拒否しがちです。マーケティングについて学生は学んだ経験がないからです。

それだけマーケティングがセコイものと大人も思っているのでしょう。

でもエンターテインメントの中心にいる人は全然違う発想をします。

彼らは必死に夢を作り与える仕事をしています。

裏が全部ハリボテだったとしても、受け取った人がそれで1年間夢を持って仕事に打ち込める、ということがとても重要です。それを使命にできる人だけがハリボテから夢を打ち出すことができます。それにハリボテから一人の1年の活力を作り出せるならこんなに夢のある仕事はないと思うのです。

そういう考え方になれることも稀有な才能だと思います。

そして芸能界にはそういう達人がたくさんいます。ぜひ僕らを飛び越えてその達人の中に飛び込んでいただきたいです。

 

インターネットがなかった時代は、こういう質問の回答からアーティストのずば抜けた思考力が垣間見れたのでとてもいい番組でしたよね。

今ではその他の局が似たようなことをやっているのでぜひ続けていっていただきたいです。

 

ぜひフル回答文をご覧ください。

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