音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

変化記号の起源の話

# 、♭、X(ダブルシャープ)、♭♭(ダブルフラット)、、♮(ナチュラル)記号はすべてアルファベットの「b」から生まれた、という話です。

1030年ごろから四角いbと丸いbが記譜されていたそうです(『シャープとフラットのはなし』東川清一 著)。平均律が16世紀として、音階のはっきりしない時代、印刷技術がない時代にさまざまな用法や慣習が乱立しており、なぜ#が生まれたか?云々等の話はかなり専門的な諸説を色々検証しないとわからない、というが現状のようです。

 

私は研究者ではないので、専門的にはまるで分かりません。

書籍から知りえた事だけです。

 

『音楽用語・楽器名由来辞典』遠藤三郎 著 では「ナチュラル」の由来の記述が面白かったです。

はちょうど格子の感じですね。

同書物によれば、由来はラテン語のnasco(生まれる、成長する)→natura(自然、出生、素質、性別、自然、宇宙)からきています。米慣用語としてcancelとも言われ、

cancel<取り消す>は、やはりラテン語のcancer<格子= 書類上の文字を取り消すとき、何本も×印の線を引き、格子模様になったことから>です。

 

また『だれも知らなかった楽典のはなし』東川清一 著でもシャープもフラットもナチュラルも全て「b」に由来する、という指摘があります。

13世紀、鍵盤に変化音が変ロしかなかった時代に話が遡ります。最初は2オクターブの全音階的なものだったそうです。東川先生によれば、最初の黒鍵(変化音的な意味)がb♭だったのだとか。そしてこのbフラットをどのように表記するか、が議論されるようになった、というのです。これらの違いは当然、記譜の際(活版印刷は15世紀)にも考慮、区別される慣習が定着したのだそうです。

 

印刷技術が生まれるまでは

お尻を四角にした"堅いb(四角いb)"をb♮、

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とお尻の丸い"柔らかいb(丸いb)"がb♭として表記したそうです。

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四角と丸を「書き分けて」どの音を弾くか(歌うか)書き分けたのですね。

記譜の際にも、音符の前にそれぞれの記号を書いて区別していたようです。

(音律の乱立時代です、本来はもっともっと複雑な歴史があったと考えられます)

 

やがてナチュラルbは無表記(音符の前に記号は書かない)で統一されてゆきました(面倒で紛らわしですもんね、字が汚いと丸だか四角だかわからないだろうし笑)。

 

これにより、唯一の変化音を弾き分けるために、丸いbが来たら半音下げて、四角いbが来たら半音あげる、という行為が行われるわけです。

結果丸いbがフラット、四角いbがシャープやナチュラルの記号生成の元になった、ということです。この過程を聞くと、このb記号が他の音符にも用いられるようになって、「半音あげる」「半音下げる」という表現技法になっていった、というのはちょっとした発明ですよね。

 

下記なども読ませていただきました。

yamamotoganka1.com

 

C  D  E  F  G  A  H

がメジャースケール、全音階のドイツ語名ですよね。

これについては諸説あるそうなのですが、

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♮bとb♭を印刷所が、活版印字の型で区別しているうちに、印刷所の活字印字の硬いbの底が欠けたのか、擦り切れたのかhのようになってしまった結果、

 

♮bはh、フラットbはbで対応する慣習になっていったというのです。硬いbがbナチュラルですからありそうな話です。

 

 

別の説もあり、ABCDEFGHというGの次のHが♮Bとして採用された的な解釈もあるそうです。これもありそうな話ですが、それなら最初からBがbフラット扱いになるので、丸い四角いを使い分ける必要は無いように思います。しかし、歴史の中ではそういう印刷所もあったのかなぁなんて想像してしまいます。

 

変化する音は全て「b」のバリエーションを用いようの流れ。

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全部bからできている、というわけですね。

f:id:terraxart:20211129110550p:plainダブルシャープには左図のようなものもあったそうです。

このダブルシャープについて、東川先生の「だれも知らなかった〜」を引用しますと、

ダブル・ シャープ記号が何故Xなのだろうかということは、誰でも考え込まざるを得ないきわめて自然な疑問ですが、これを調べていくうちに、テュルクの時代には、私たちとは違った意味の疑問があったこともわかってくるのです。それというのも、当時はシャープ記号が と書かれていたことを知るや否や、ダブル・ シャープ記号が「X」と書かれた理由もある程度はわかるようにもなるのですが、それと同時に、 普通のシャープ、いわばシングルのシャープのためにダブルの十字記号()を書き、ダブル・シャープ記号のためにシングルの十字記号「X」を書くとはこれいかに、といった、これまたいたって自然な疑問に取りつかれることになるからです。テュルクもこの問題に関連して次のような脚注を載せているのです。

「たしかに1回だけのシャープのためにこの「X」を使い、二重のシャープのためにを使うと、このその形と名称が互いに一致することになり、したがって、そのほうが良いに決まっているのであるが、これまでそのようなことは行われなかったので、われわれとしては、一度始められた習慣のために、上記の形を保持しなければない。このやり方の不適切さをみてとって一重の十字Xのかわりに、譜例[図26](省略;ブログ主)二つの十字<注;ブログ主、「##」のこと>を書く作曲家も一部にいる。

この書き方は目にはみやすいのだが、結局のところ、完全には是認できない。 なぜならそうすると、すでに十字が1つ調号としてつけられているのだから、同じ音位に全部で十字が三つつくことになる(注ブログ主、楽譜の流れでみた時、シャープ三つついてると理解になってしまう)からである。

 

ちょっとわかりづらいですが、いわゆる記号の乱立時代があり、ダブルシャープがX、シングルシャープがという時代があったわけです。これはもう笑うしかありません。誰だ!!最初にやったやつ!!と怒りたくなりますね。

表記の混乱、作曲家自身の慣習が入り混じり、当代の音楽理論家テュルクも困っちゃったわけです。

各国の音楽家がこぞって記譜を行っていたでしょうから、さまざまな表記が乱立していたことでしょう。先の図のような変遷にしてしまうとシンプルですが、混乱期?を経て現代の慣習に定まっていった、ということなのだと思います。

厳密に、これが起源でこう進化しました、という断定ができなさそうです。

本当に起源を知りたい方は、これ専門の研究者にならないといけないレベル。

 

詳しくはこれまで掲げた出典をお読みください。

また何か見つけたらこちらにも追記させていただきます。

 

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日本語の嬰ハ長調とかの「嬰」は「嬰児」生まれて間もない子など「加える」の意があり、中国からの音楽用語...なのだそうです。

 

sharpには「頭の切れがいい」という意味と類似して甲高い、鋭い、という意味からニュアンスがくみ取れます。少しはずれた高い音は耳触りですからね。

 

flatには「意識をフラットにする」という意味に類似して、抑える、単調な、音がさえない、というような今度は力が抜けていく意味になります。

 

ダブル=du(2)+plus<プラス>の語源があり、

 

ナチュラルには「自然」という意味のほか「気取らない」といった意味もあるそうです。

 

 

その他に「音楽用語・楽器名由来辞典」より、Kadenzには「戦死」という意味がある、みたいなことも学べます。

 

自分が弾ける唯一の楽器、ギターは古代ギリシャの撥音楽器「キタラ」からきている、とか。スペインで訛って、フラメンコなどの地でギターという名が生まれた、とか。

キタラー - Wikipedia

 

 

ちなみに文章で記号の♮の出し方は下記の記事で。

^音楽入力使用の記号の"ユーザー辞書登録"でストレス回避。(mac)