2018.6.15→2020.10.22更新
音集合で自在に中心音を設定する上方性和音構築と下方性和音構築を前回ご紹介しました。
基音がcのとき、
上方音は、e,g,b♭
であり、
下方音は、a♭,f,d
です。
この二つが交換される現象を、「マテリアルモーション」と呼んでいます。
コード進行で言うと、
C→Fm、Fm→C
とか
C7→Fm、Fm→C7とかC7→Dm7(b5)、Dm7(b5)→Cとかです。
基音cを中心に領域音がひっくり返っていますね。
マテリアルモーション
上方領域↔下方領域
和音を構成する領域を交換する行為です。
特に機能和声的には短調におけるドミナントモーション、またはI→V7への移動がこれに該当することが分かります。
他にもこうした「領域変換」的な進行を考えることができます。
Cu5→Cl5
Cu4→Cl5
Cu7→Cl4
Cu5→Cl7
(Cu7はc,e,g,b♭すべて含む和音、下方Cl7=c,f,a♭,dも同様)
といった進行は、全てマテリアルモーションである、とするわけです。
私たちは調を知っていますから、C7→Fmを聞けば、Fマイナーキーのケーデンスを思い浮かべてしまいますが、これも刷り込みによるものですので、特化して考えない、という思考の癖を作っていってください。それらは「マテリアルモーション」という変化の一種である、と覚えてしまえば、ドミナントモーションへの信仰・特価を少し避けられます。
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・ 一つの基音から発せられる集合への変化によって基音に重心をおく上方性秩序(メジャーコード)。
・ 一つの基音を発する音を集合させることで、暗に一つの基音を重心にする下方性秩序(マイナーコード)。
・ これらの二つの集合が連鎖されたとき、一つの基音を中心にした時間的変化が作られる。この時間的変化が「和声進行」である。
・ 和声進行は基音の重力に向かって進行するのではなく、常に連鎖される流れの中で起きる事象の変化である。
・ この事象の変化は響きの変化であり、そこには何らかの印象が伴い、和声を連鎖させ、詩的情感を連鎖表現する“音楽の脈絡”“音楽が作る模様感の連鎖”という事象の根源となり、これを不定調性進行の音楽の連鎖の思考の出発点とする。
~教材より引用