2018.1.7⇨2020.3.19更新
下記、同書から引用する文章やコンテンツについては、引用したページ名を掲載します。必ず原書を手元に置いてお読みください。お持ちでない方はなんとなくこの記事を読み流して頂いてぴんと来たらご購入してみてください。
チャーリー・パーカーの技法――インプロヴィゼーションの構造分析
誰もやったことのないこと
さて。まず想像してみてください。
Dm7 G7 |CM7 |
という進行が繰り返されるとき、今まで誰も考えもつかなかった画期的なソロを作ってください、と言われたとしたらあなたはそれができるでしょうか。
現代を思えば、もう音楽の手法は出尽くした感がしてしまったりしますが、その憂いは1930年代だって同じだったと思うのです。
そしてこの一つの答えを出したのが当時のチャーリー・パーカーでした。
誰もやっていなかった演奏を残したんです。単純にすごくないですか?
またパーカー以後のスタイルについても知識がないと大変!ゆえにジャズ理論上級者向きです。
同書の設定と癖とツカミ
時代は1930年代~ですからコードスケール、テンション、UST、代理コード、こうしたものがミュージシャンの頭の中に無い状態でこのソロを編み出す発想や考え方がある、と考えないといけないので、楽理を学んだ人であればあるほど読解のために「無」の精神状態を維持するのが難しい、と云えば良いでしょうか。
同書の解説の順序や構造は凄く分かりやすいです。でもこれは私自身が濱瀬先生の著書スタイルに慣れているからかもしれませんが。
たとえば、最初に装飾音の解説があります。
CM7の上でソロをとる時、c,e,g,bというのは、コードトーンですよね。
特に前打音についてこれ以外の音をどう使うか、それがそれまでのスイングソロとどう違い、どこがパーカー的なのか、が最初に述べられます。
パーカーのこの経過音的なフレージングは、パーカー語ともいえるほど特徴的で、バップ語法の可能性を示した大きな魅力なので、もっと細かく分析結果をみたい!と思ってしまうくらいの話でした。
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パーカーリックとテンションメロディ
P40、ex78のBb7のフレージングですが、
b-a-as-cと来ます。そのあとg-ges-f-fesと流れます。いかにもパーカーリック!という感じです。
コードがBb7ですから、コードトーンから前掲の経過音的アプローチが行われるのは分かるようになったとして、asのあとのcは何だ!なんて思ってしまうんですよね。
Bb7からみたら9thの音だけど、これってサックスの手グセなんだろうか!ギターで弾いたら、この一瞬アクセントのように音程を落とす音のポジションとしては、ちょっと難しい音です。ギターだと、b-a-as-dあたりで弾いたほうが、次のgに行きやすいし、なんて考えてしまいます。このcでなければならないのか、たまたまcになってしまったのか、は、やはり譜例を見ただけでは駄目で、やはりある程度コピーして自分で弾けるようにしないとわかりません。
このcは出るべくして出たcなのだと思うと、なんでここでのアクセント音は9thなんだ?
と思うわけです。これは手グセか、それともこだわって出したcなのか?
(この辺も読むとわかります)
意図的にメロディをテンションに、と言う思想は当ブログではユーミンのメロディ設定にまで引き継がれます。
Relative Major
それからRelative MajorというUSTの前身ともいえる考え方によるソロ構築法の話が出てきます。同著の濱瀬システムの根幹になっています。
バップ進行をコードスケールでソロを取るのではなく、分散和音の更なる細分化で分析する、となれば、云われてみれば当たり前ですが、これができないんですよね。どうしても「自分なりに解釈(一時的な理解)しようとしてしまう」からです。
私がこのタイプなので、著書のような研究は絶対やれないし、やってはいけないな、と反省しました。
ゆえに、コードに対するソロのアプローチにおいて、コードスケールを用いる、という発想が現代ジャズ教育的なアプローチのメインだと勉強してきた人にとって、濱瀬分析ビ・バップでは,まずコード分割のみで考える、という考え方のステップを学習者が理解する、という発想の大転換だけでも読書する大きな意義を感じました。
三章以降は「relative major」と「flatted fifths」についての理解が進まないと読めなくなります。
曲例と細部の解説他
P60
二章、I Can't Get Startedの譜例があります。
I CAN'T GET STARTED Charlie Parker Lester Young JAZZ AT THE PHILHARMONIC Vol 2
その位置は、上記の音源の5:59~の四小節です。ソロの一番最後の部分です。
パーカー節に慣れていると、聴き流してしまうところです。
コード進行としては、
C A7 |Dm7 |G7 |C |
というところで、三章でrelative majorと云う扱いのされる、アプローチがG7上で出てきます。
このG7をDb7と減五度変換し、さらにBM7-G#m7と分割した、と分析されています。
そもそもG7でDb7の音階、たとえばDbリディアンb7スケール(Gオルタードドミナントスケール)を用いる、というアプローチが私達ジャズ理論で勉強したことです。
そしてこの発想でバップを勉強しても、パーカー技法は捉えられない、と同書は改めて教えてくれます。
譜例は同書を参考頂くとして、
G7で
h-e-dis-ais-a-gis-eis-dis-h-ais-gis
と演奏されて、次のCでgに帰着します。
これgから始めるとGのオルタードドミナントスケールにちかい!と感じるのが、ジャズ理論の知恵ですね。それだからこそG7でオルタードドミナントスケールが使える、と先走ってしまいます。
「コードスケールで考えない」ということ。
不定調性論の「和声旋律」というのは、この発想で形が整っていますから、端を発する発想の起点は同じかもしれません。
で、relative majorとは何か、となります。
一応理論研究会で、聞いてみましたが、やはりぱっと単語の意味を聞くと「近親調」という意見がでました。意味的には「関係長調」なので、それだと同書の概念とは全く異なる解釈になります。
P74から引用されている文は、下記にもあるようです。
http://www.leonardfeather.com/feather_parker.html
(2018年現在アクセスできません)
其の2に続く。
サックス以外の方がフレージング概略の把握に最適です。他のキーも発売されています。
Charlie Parker Omnibook: For C Instruments. (Treble Clef Version)