ここでは、あくまで「不定調性論」と言う観点から書いています。
下記、同書から引用する文章やコンテンツについては、引用したページ名を掲載します。
必ず原書を手元に置いてお読みください。
チャーリー・パーカーの技法――インプロヴィゼーションの構造分析
P76
「コードの高い方のインターバルをメロディー・ラインとして使って」
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これも単純に考えると、CM7の7,9,11,13という「テンション音をメロディ音に使う」とだけ読んで通り過ぎているところです。
でもこれって、CM7でd(=cにとっての9th=高いインターバル音)をメロディに使う、ということですから、先に例を示した、Bb7での9thのアクセント音の意味が分かります。
ああ、わざと9thつかってるんだ。。。
と分かると、急にすべてのバップフレーズが納得いきます。
パーカーのソロ=全てそうした実験がなされた記録(まさかこんなに世界中がピックアップするとは思っていなかったようなプライベート技法の大全、実験の記録、がオーソドックスなジャズの語法になってしまった)
と考えたくもなりますね。無理して作って、実験して、体系化の最中に亡くなった、のかもしれません。あと20年長く生きていたら、バップはもっと違う進化をしていたに違いありません。
■速いコード進行だから、なにか楽して吹ける方法を探していたのでは?
■コードスケールを駆使して、ちょっとでも変わった音を出そうとしていたのでは?
という発想ではく、
■速いコード進行をさらにいくつものコードに分割して吹けるのはあたりまえで、要は、どう分割する、かだ。
■コードに対する使用可能スケールがあることなど当たり前で、それとは異なる方法を探しているんだ。
というのがパーカーバップの思考、と、もし仮定すると、これはもう私などはついていけません。
でも今音楽をはじめて、この本を読んで、この標準を理解した人が一人でも多くいれば、日本のジャズ論は5年~10年後、大きな進化を遂げるかもしれませんね。
たとえば、
CM7 |DM7 |FM7 |GM7 |
なんていう不定調性進行があったとき、相応のコードスケールを弾くだけでなくて、さらに細分化し、あらゆる代理コードを頭に叩き込んで、自由自在に階層化したソロがとれることが「ミュージシャンとして普通」と云う認識を持てる人がいたら、音楽が進化しないはずはありません。
難しいのは、
「ここって何を考えながら弾いたんですか?私こう分析したんですが合ってますか?」
と、当人に聞くことができないことだと思います。
この「チャーリー・パーカーの技法」もその難解さゆえに一度は忘れ去られながらも30年後ぐらいには、新たな発見がない限り、その発想が学習者の独自手法確立の模範的方法の一つとされて中古で120,000円ぐらいになる、、はず(笑)。
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さて、これも私の解釈になってしまいますが、
たとえばC7上でソロを作る時、または作られたソロを分析する時、現代で云うUSTまたはそれに準ずる三和音以上の上部和声構造を想定してラインを作り、解決先である(たとえば)FM7につなげる、というアプローチによって、relative majorという追求が始まると思うのです。
これはコルトレーンが分数コードを発展させて「分数コード進行」を作った考え方に発展できるようにも思います。
これまで、ドミナントコードでオルタードドミナントスケールを使っている、と教わって、ドミナントセブンスへのソロを組み立てさせられても「上手くソロが組み立てられなかった」理由は、このあたりですね。
で。このrelative majorアプローチが分かったとして、さらにパーカー独特の経過音、前打音が使えなければ「パーカーリック」にならないわけです。
えー!?それじゃ、まんまパーカーフレーズを覚えなければ、ビ・バップにならないんですか?
はい、そうです・・・ですね。
そうなると、そこへの追求って二番煎じみたいになるから、みんなやらないですよね。
ゆえにバップ研究が進まない、というのなら、それはそれでまた納得です。
でも同書の分析によって、今後の学習者の作業はだいぶ速くなると思います。
Dm7 G7 |CM7 |
で考えてみます。
Dm7-G7をG7sus4と考えるか、G7で考えるかが最初の分かれ道でしょう。
下記は、あくまで私なら、こう活用する的な話で、同書の要約ではありません。
ここではG7にしてみます。そしてG7をG7(b9,b13)として、
G7(b9,b13)=G,Ab,B,D,Eb,F
と書き出します。この構成音を用いて、以下の和音を想定できます。
G7(b9,b13)=G,Ab,B,D,Eb,F=G△、Abm、Bdim、Balt、Baug、Ebaug、Fdim
です。四和音にすれば、
G7、AbmM7、Bdim7、B6(b5)、B6(#5)、EbM7(#5)、Fdim7またはFm7(b5)
これらをアルペジオ的に並べて、変化させて、「大体あってるV7でのソロライン」を作るわけです。
G7の関連コード(=私はこれがrelative=より発展させてsuper relativeと解釈しました)を並べて、さらにそのコード構成音を変化させたり、三度の間を経過音等で埋めて"リニアライン"を作り、ソロをつくる!
というソロ作りの明確なストーリーがわかる、というのが私に同書が示した「目に見えるバップ分析」です。
例えば、また別の発想ですが、『総合和声』では、これらの主音を元に、下記のような「変化和音」を作り、「関係調=音度調」としてしまう考え方が掲載されています。
つまり、
G△
Abm
Bdim→Bm
Balt→B△
Baug→B△
Ebaug→Eb△
Fdim→Fm
です。
結果としてアプローチは似たような結果も引き出せます。方法論は各位の身に付けたスキルを活用し、同書を応用すれば良いと思います。
Dm7 G7 |CM7 |
という進行を、一旦
G7 |CM7 |とかG7sus4 |CM7 |
にして、このG7、CM7を構成音の拡張から、
G7(9,13) |CM7(9.,13) |
とか
G7(b9,b13) |CM7(#11,13) |
とか...etcとかに拡張し、その構成音で作れる、別の和音の進行を作り、たとえば(適当ですが)、
Dm Eb |Am F# |
とか、さらにこれらの和音の五度、七度を変化させたりして、
DmM7 Ebaug |Am F# |
ソロをさらに発展させていく、そうした発想への基礎の部分が同書に網羅されていると、読みました。
いずれにせよ、云うがやすし、です。
其の3に続きます。
サックス以外の方がフレージング概略の把握に最適です。他のキーも発売されています。
Charlie Parker Omnibook: For C Instruments. (Treble Clef Version)