2017.12.27→2020.3.16
Somethingでクリシェの意味を覚えよう
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クリシェとは?
クリシェとは何か。
「コード構成音が一音ずつ変化する進行」がクリシェ(フランス語 cliché=常套句等の意)です。スタンダード歌謡が生み出された戦前戦後時代によく使われたコード進行だったことからこのような名称がつきました。
この命名の由来はジャズミュージックから来ているようで、海外ではLine Cliche(ラインクリシェ)と呼んだりします。
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<例>
下降するクリシェ例(一番高い音が半音ずつ下がっていく)
上行するクリシェ例(一番高い音が半音ずつ上がっていく)
もちろん途中で戻っても、繰り返しても、飛ばしてもOKです。
C C7 C6 C7 |
C CM7 C7 CM7 |
また最高音でなくてもOK。
一般的なクリシェの種類
根音下降型
C |CM7 |C7 |C6 |
5度上行型
C|C(#5) |C6 |C(#5) |
C|C(#5) |C6 |C7 |
Am |Am(#5) |Am6 |Am7 |
5度下降型
C |C(b5) |Csus4 |C |
sus4-9型
C |Csus4 |C |Cadd9 |
C |Cadd9 |Csus4 |C |
などと順番を変えてもいいです。
Am |Amadd9 |Asus4 |Am |
これ以外は無いといってもいいです。
イントロ
F Eb G |
コーラス
C |CM7 |C7 |F Em |
D |G |Am AmM7 |Am7 D9 |
F Eb G |~
イントロは得意のメジャーコード連鎖ですね。
そのあとコーラスの中では、二つのクリシェがあります。
C→CM7→C7
と
Am→AmM7→Am7
です。
音で聞いてみましょう。
(下記リンク先では他のクリシェ進行も聴けます。)
ビートルズは、シルヴァービートルズの頃から、ジャズスタンダードをカバーしているので、自然とこのクリシェの手法が身についています。
Besame Muchoの5度のクリシェは、いかにもR&Rから持ってきたフレーズという感じがします。
CONSUELO VELÁZQUEZ - BÉSAME MUCHO - YouTube
ところどころクリシェのようなラインが出てきます。こういうのをビートルズメンバーも少年時代に聞いてきたはずです。
よりクリシェを極めた男
ビートルズは比較的オーソドックスな使い方に終始しています。
本当に大物pops業界でクリシェを多用するアーティストといえば、スティービー・ワンダーが挙げられます。彼は盲目ゆえに指を一つだけ動かして得られる劇的な雰囲気変化を一つの自身の売りにしています。
不定調性論はここから先です。ここからが本当に変態なクリシェ。
たとえば、
C△--C#dim--Dbm--Dbm(#5)
というような進行も、クリシェです。
最初に決めた和音の1音だけを変えていって下さい。
(これを拙論では「静進行」と分類しています)
C△ |Csus4 |C△omit3(#5) |GM7omit5 |
(b-f#-g) |(b-f#-g#) |(b-f#-a) |BbM7omit3 |
Bb7omit3 |Bdim7omit3 |E△/B |Em/B |
C△ |
(b-f#-g)というのは、この三音の組み合わせ、という意味です。
このような進行に「風景」や「色味」、「意味」「心象」を感じるなら、あなたは不定調性論的感覚が備わっています。
最後にラフマニノフのピアノ協奏曲2番冒頭のクリシェを聴きましょう。クリシェと言ってはいけないのでしょうが、寂しげと絶望感の中にある美しさ、ですね。
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