ビートルズの不定調性コード進行研究
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ビートルコードができるまでを探る〜Past Master/Cover5
蜜の味(ア・テイスト・オブ・ハニー) - A Taste of Honey
ポールが好んでカバーしたミュージカルの曲ですね。
3/4拍子(または6/8)Aメロ部分が特徴的です。
F#m F#mM7 |A B |~
クリシェっぽいけど、微妙に違う、いざコードにして弾いてみると、ちょっと新鮮ですね。
ギター的にはF#m-F#mM7-F#m7-F#m6なんですけどね。
ブルージーなラインになっています。
ツイスト・アンド・シャウト - Twist and Shout
open.spotify.com
こちらもアイズレー・ブラザーズの原曲よりも有名になってしまった、カバー曲。
コードは、
D G A |A |
が繰り返されます。
どこかで聴いたことある、というのは「La Bamba」と同じ進行だからですね。
イントロまでおんなじ。
といいますかオリジナルは、リッチー・ヴァレンスがヒットさせたロック調のLa Bambaのほうだったんですね。
それが52年。
ビートルズが63年カバーなので、アイズレー・ブラザーズのカバーが62年。
この曲はキーがDですから、めちゃくちゃスリーコードなのですが、Aがセンターに思える時もありドミナントが強調されています。
ゆえに仮にA=Iとすると、D=IV, G=VIIbになります。
でもビートルズはこうしたコード関係をいろいろな曲で使っていますから、なんだか本当にAの曲みたいに思えてくる時もあります。
ビートルズが拡張させた調概念の恩恵を受けた私たちは、新たなコード感覚でこうした進行に触れることが出来るわけです。
キーがどこか?調はどこか?なんて聴き方をしない音楽を作った、って知っていれば迷うことは無くなります。
なによりロックは鑑賞する、というより"浴びるもの"です。
「注意して、椅子に座って鑑賞しなくても楽しめる音楽」
を作ったわけです。
このバンドは音楽よりも哲学が大事なんだ、そんな風に訴えてくる時もあります。
ちゃんとやることよりも本気で何かをぶつけることの方が大事なんだなんて感じる時もあります。
元々は音楽は儀礼であり、祭儀でした。ロックミュージックのルーツは、アフリカンアメリカンの恍惚なトランス状態に人を陥れる儀式にまで遡るでしょう。
白目をむいて神の憑依を待つ人間の姿。
そういうときの思考がロックだと思います。
日本人には馴染みが薄いかも。
これはやる方も聴く方も大変です。しかしそれでこそ本当の理性的な美術が生まれる、と言えばそうです。ビートルズがこうだったからこそ、クラシック音楽の価値はより高まったものだと思います。yesterdayを聴いて、本格的な弦楽曲を聴いた人だっているはずです。
泣き叫びたい時はロックを歌い、文化的に満たされたいならバッハを聴けばいいんです。どちらも人の欲望を満たすためです。