音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

太陽が、太陽の定義を許諾することはない〜スティービー・ワンダーレポート1-1

2019.3.6⇨2020.1.15更新

スティービー・ワンダーの和声構造

~非視覚的クオリアを活用した作曲技法~

  

You Are the Sunshine of My Life

 

"You are the sunshine of my life That's why I'll always be around"

"You are the apple of my eye Forever you'll stay in my heart"

 

"君は僕の太陽 いつも君のそばにいるよ"

"君はかけがえのない人 永遠に、僕の心の中に"


―スティービー・ワンダー、全盲の世界的ミュージシャン―

 

誰もが知っているのは、この程度の文句ではないでしょうか。

 

“You Are the Sunshine of My Life”

 

彼は太陽を見たことがないはずです。

では、目の見える私は本当に太陽を見たことがあるのでしょうか。この歌詞を読むと、太陽(の光)がどういうものか改めて理解できます。太陽を見たことがない人から太陽の意味を教わるわけです。

 

たとえどんなに優れた人の定義でも太陽自身がそれを許諾する訳ではありません。

「地球から1億4960万km離れたところにある恒星」という事実よりも「情熱と愛と希望」と思って接するほうが心地良く感じることもあるでしょう。

あなたは「日本人で身長が170cmの男性」と理論的に言われるのと、「強くて優しい男性」と感性で言われるのはどちらが「快」ですか?

むしろそれができないことを盲目というのだ、スティービーはそのように考えているように感じました。

 

ハンディキャップとされる部分は、強烈な個性になる。

そのぶん人一倍努力しなければならない、そしてそうしなければならない分、人より上達しようと決めた天才。スティービー・ワンダー。

 

この努力の天才を、もっと適切な言葉で形容したい。その肩書を考えながらこのレポートを書き始めています。

  

 

導 入

私は「和声の変化感の習熟」によって培われる個々人の音楽的印象=音楽的なクオリアによって音楽を作る方法論を2000年頃から発信してきました(古HPは削除済)。

今回はそれを実践しているスティービー・ワンダーを取り上げます。

ジャズ・スタンダード、ビートルズ、ユーミンと続いてきたコード進行研究の締めくくりに彼を選びました。

 

 

スティービー・ワンダー。彼のキャリアは11歳に始まります。

実績を重ねるにつれ、作曲家チームが彼に音楽のイロハを教えると共に、セス・リッグスのボイストレーニングや、ロン・ミラーの作曲個人レッスン、ロスアンジェルス大学等での作曲・編曲コースにおいて修了証書を得ています。

18歳の頃というから、“Uptight”などの全米的なヒット曲が既にあったことになります。彼自身の音楽への追及は、周囲が発狂するほどの念の入れようだったようで、人並み外れた集中力と向学心を持っていたようです。

これは、彼が子供時代、なぜ友達がスムーズにできることが、自分にできないのだろう、と悩み、それが盲目であるからという概念を知らずに、自分の努力が足らないからだ、と理解し、何でも試し、何でも自分でやってみせ、負けず嫌いになった、とあります(三浦憲 著 立風書房『スティービー・ワンダー我が半生の記録―冷たい鏡の中に生きて』(1976))。

 

そのためにブランコから飛び降りて怪我をしたり、アルコールを飲んで死にそうになったり(彼はお酒をほとんど飲まない、三浦氏によれば数カ月に日本酒を数杯だけ、という記述がある)、料理が出来るか、と周囲にあおられて料理をやって指を火傷だらけにして火が怖い、ということを体で覚えたり、とにかく今まで良く生きていた、と思える人生で、その都度母親や周囲の激昂を受け、ママを怒らせてはいけない、という反省から自分の行動を把握し、自分という存在のありようを把握していったようです。

 

当然、周囲のスタッフは、彼を心配させないように気遣いました。

しかしそのケアは大変うまく行き、また良い人間に恵まれ、彼が慢心しないように、かといって自分の能力を十分引き出せるように厳しく優しくケアしていたことが参考文献(後出)にも書かれています。

そうしたサポートと彼独自の常人では考えられない研究努力によって、彼のその後の音楽は生まれていることになります。

膨大な時間を音楽に注ぎ、生死を彷徨う大事故(交通事故)なども経験し、長いキャリアを第一線で作り上げてきた彼の音楽の魅力は、音楽を志す者なら誰でも一度は刺激を受けることでしょう。

 

 

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==コーヒーブレイク〜M-Bankロビーの話題== 

スティービーのハーモニカ・・。かっこええ。

HOHNER ホーナー スーパー 64 C調 7582/64

情報源はこちらです。

theharmonicacompany.com

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