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音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

音楽をやめるか、続けるか。批判する者への最良の対応策〜スティービー・ワンダーレポート1-2

前回

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スティービーは、肩書きや立場で人を判断することを嫌う、といいます。

君もひとりの人間、僕もただの一人の人間、何の違いもないし、何も怖気づくこともない。

そういう考え方です。

有名音楽雑誌者が、横柄な態度で有名雑誌の肩書をふりかざし、コントロールルームに入りこんで彼を“たいそう失礼な態度”で取材した時のスティービーとのやりとりは印象的です。

 

スティーブ「きみの今の発言は音楽誌の記者という立場での発言か」

記者「もちろん」

スティーブ「もし、きみが音楽誌の記者という立場から離れ、ただの人間になったら、今のような態度や発言をするかね」

記者「私は音楽誌の記者という立場で来たのであって、もしそうでなければこんなところまで来る必要はない。そうだろう?」

スティーブ「よくわかった。それでは僕もひとりの人間としてきみに接することは場違いだろうから、音楽家スティービー・ワンダーとして答えよう。僕は、レコード制作に追われて忙しい。こんなことで時間をつぶされるのは迷惑だ。取材のために時間をさく意志はない。きみの音楽誌のページを飾るために僕はここでレコード制作をしてるんじゃない。これが僕の答えだ。」

 “スティービー・ワンダー わが半生の記録” 三浦憲 著 より

 

 

裸になれば人間みな同じ、という発想。

マネージャーを訪れさせたり、電話で関係者を通して依頼してきたりしたビッグ・ネームで彼にフラれてしまった人物も多いといいます。

 

これは彼が気難しい、というエピソードを示したいのではありません。

 

逆にフランク・ザッパが彼のスタジオを訪れ、もしスティーブの都合が良いなら、録音した音を聴ければ、とても嬉しい、と思ってはるばる来ました、と尋ねると、スティービーが出てきて、とっておきのお気に入りの曲を選び、順番を決め、一曲ずつ説明して40分近く彼は手を止めて対応し、初対面とは思えないほど互いを尊重した率直なやり取りがあったそうです。

ザッパがどれほどのジェントルマンで“イイ奴”であったことはこの話から容易に想像できますね。

 

ではスティービーが全くもって大人の男か、というと当然茶目っ気たっぷりだ、という記述が多いようです。

自分が欲しがったものなら相手の帽子だろうが楽器だろうが、とにかく手に取るまでは「ねえ、それ僕にくれない?」とせがんで、それがもらえないとひどくいじけたりする、全く大きな体をした目のみえない子供だ、と周囲に訝られるような一面も記されています。

 

自伝だけでは彼という人物、盲目の音楽を知ることができません。

そのためにまず盲目のミュージシャンの自伝等を読み漁り、その言葉を並べてみました(レポート後半の文言集参照)。

それでもまだ分かりません。

そこから、このレポートは推理小説になりました。

なぜあんなことが音楽で出来るのか、、、

レポートは1年をさかのぼり、順に考えて書かれていますので、謎解きの過程を見て頂くことになろうかと思います。

その謎解きの過程を楽しんでみてください。

 

このレポートの主たる内容は、スティービー・ワンダーの楽曲の骨組みをとらえ、その手法と理解の方法、考え方等を簡単にまとめたものです。

最終的には皆さんが作曲をする際のコード進行のバリエーションブックにして頂ければ幸いです。

 

===== 

<やめるか、続けるか>

彼は学校が嫌いでした。小学校の女教師も幼きスティーブに言い放ちます。

“黒人で目が見えず勉強が嫌いな子は、将来鍋つかみを作るぐらいしか能がないのよ。それがイヤだったら勉強をしなさい”

 

スティービーが22歳の時、白人の審査員に、自分がグラミーを受賞できない理由を尋ねたところ、その理由は、

 “君の歌は黒人くさいんだ。とてつもなくね、理由はそれだけさ”

でした。

 

批判する天才、という人は、いつの時代もどこにでもいるものです。その批判は困ったことに適切で、崩しがたい論理や真実に塗り固められているように一瞬見えます。

しかしこの問題への解決策はシンプルです。

それでやめるか、続けるか。それだけです。

 

彼が続けた結果は周知のとおりです。勉強が嫌いでも夢をちゃんと叶えました。

そして時代も理解も進んだ72年、彼はグラミー賞を受賞しています。

なぜでしょう。辞めなかったからです。

私たちは彼のようになれないかもしれませんが、続けたいなら続けることができる、辞めたいならいつでもやめることができる、とそこに自分の意思があることを本当に知ることができる、という意味で全然覚悟が変わってきます。人の批判を理由に辞めるのもあなたの意思です。それを無視して続けるのもあなたの意思です。それが誤りである、と決めるのは相手の意思です。あなたさえ自分を信じていれば。

批判した人は翌日にはあなたのことも、自分が言ったことも覚えていません。だからあなたもその批判が持っている事実を忘れていいんです、こだわらなくて良いんです。1日経てばあなたはより忍耐強くなり、より成長しています。もう昨日のあなたではありません。今のあなたが昨日のそこにいたらもはや同じ批判は浴びないかもしれません。

 

こうした世相環境が彼の音楽にもこれらの意思に反映されているはずであり、結果としてポピュラーコード進行の自在性を推し進めた要素になっているかもしれない、とレポート作成時は直感しました。

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