2018.1.25→2020.2.3更新c
ビートルズの不定調性コード進行研究
全ての記事はこちらから
ほぼ全曲ビートルズのコード進行不定調性考察「A Hard Day's Night」2(2018)
ユー・キャント・ドゥ・ザット
Aメロから
G7(#9) |% |% |% |
C7 |% |G7(#9) |% |
D7(#9) |C7sus4(10→9) |G7(#9) |D7 |
この#9のコンセプトと最後のサブドミナントC7の曖昧さは、もはやコードの伝統概念の中にいません。
イントロの部分から、#9が使われていて怪しい感じです。
これは、ギターコードはD7なのですが、ジョンが歌うメロディがm3rd=#9thと解釈、ということなんですね。
#9がコンセプトとして使われているのか。それとも偶然なのか。
#9thって聞くとテンションだ、って感じてしまうのが勉強のディメリットといえばディメリットですね。テンションという考え方を取り除いてしまえば、「変んな音だけどいい感じ」とすぐにそれが使えることに気が付きます。それは「テンションだ」とかって考えないからです。彼らが聴いてきたロックンロールでも出てきていたでしょうから、なんとなく「それっぽさ」ゆえに違和感がなかった、のかもしれません。
「ちょっとおかしいけど、これはイケる」
って感じられることも才能かもしれませんね。
展開部もいいです。
B7 |Em7 |Am7 B7 |Em7 |
B7 |Em7 |Am7 |Bm7 D7 |
ベースラインとコード設定の妙技。
平行調に行っているのですが、いやまてまて。
曲はブルース進行で始まっていたではないか。
これってファーストフードの店に入って、出てきた料理がフランス料理だったみたいな感じじゃないか。
ブルースと調性音楽の合わせみそ。
洒落たコードが添えられています。
Am7 |Bm7 D7 |
これってIIIm7からV7に行ってます。指癖からできたのか。
Bm7=B,D,F#,A
D7=D,F#,A,C
構成音が似ています。とても綺麗なIIIm7→V7のグラデーション。
アイル・ビー・バック - I'll Be Back
アルバム最後を飾る曲。
これも綺麗なコーラス。
Am |G |F |E |
A | % |
Am |G |F |E |
A | % |
というAメロ。
よくあるエオリアン進行で、ピカルディの三度(つまり、最後メジャーコードで陽転する感じ=明るいんだけど切ない感じしますね=若者が失恋して無理して笑ってるような)。
2メロでまた雰囲気落ち込ませて、みたいな起伏の変化を楽しめるかどうか、みたいな作曲者の多才さを思います。
弾き込むと、これがとても綺麗に感じます。
それから展開部。
Bm BmM7 |Bm7 |C#m |% |
F#m |B7 |D |E7 |D E7 |D E7 |
IImのクリシェ。
そのままIIIm7のC#に上がるところかっこいい。ぐっとシフトチェンジする感じ。
ノッてくる。
そのあと、II7のBがまた明瞭に雰囲気を持ってきます。三度のグラーデション進行。
最後にこれは皆さんへのチャレンジ。
例;
みたいな進行に、皆さんはどんな和声の流れのストーリーを感じるんでしょうか。
あまり変化感のない進行感にうすーーい流れの雰囲気を感じてみると、機能和声だけが音楽でないかも!なんて気付いちゃうかも。こういう感じでも表現している空気感があると思います。
ジャズ・フュージョンぽい感じ。
音は下記で聴けます。
これを理屈でとらえようとすると、その理屈が何でその雰囲気を作っているか、という問いに答えてくれないことが分かります。その雰囲気を感じているのはあなたの脳です。あなたの経験に基づいた知覚です。
不定調性論は、そのあなたが感じた知覚を自覚させる方法論です。