音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

そもそもあなたの感性は機能和声論に縛られてはいない~ビートルズ楽曲topic★★★

ほぼ全曲ビートルズのコード進行不定調性考察「Magical Mystery Tour」1(2017)

1、マジカル・ミステリー・ツアー - Magical Mystery Tour
E |% |G |A |
E |% |G |A |
D |D/C |G/B |Gm/Bb |
D |A |

   

Eではじまりますよね。

GやAはEからみたIIIb,IVで、いつものビートルコードです。キーや機能による脈絡を考えるのではなく、響きの連鎖として理解してください。
そのあとVIIbとなるDもビートルコードの代表格ですね。

問題はその後、G→Gmの流れって、
これってこの感じだけ聞くとIV-IVmの印象っぽいです。いわゆる「サブドミナントマイナーに行った感」です。

でも最初はEなのでこれは、ディグリーにするとIIIb-IIIbmになります。。。。

この曲は、


A→DでDに転調している、と機能和声的には云えます。そうしないとG-Gmがもたらす「サブドミナントマイナーに行った感」が説明できませんよね。よくあるIVの和音がマイナーになって、終息する流れです。IIIb-IIIbmだとトニックからトニックマイナーになったとしか解釈できない流れになっています。

べつにどちらでも良いのですが、いきなりサビの後半で主調転調する曲っていきなり過ぎるし、ここでくるマイナー変化はSD-SDmが妥当です。

でもこうした「機能和声論に当てはめて何とかしようとする説明」はあなた自身の自在な感性によっていつか矛盾を引き起こします。次の言葉をよく覚えておいてください。

そもそもあなたの感性は機能和声論に縛られてはいない。

です。

 

このA→Dに流れる感じは「転調感」というよりも、
A=Iとし、D=IVに進行したような印象と、
A=Vにした、D=Iに進行したような印象が、

「混ざっている感じ」といったほうが適切のように感じます。

でも音楽学校では、こうした「微妙に機能感がはっきりしない進行」については教えてもらえません。

     

これが今日のお題です。"機能解釈混合コード進行"です。

トニックとサブドミナントを混ぜたらどうなるのか。

サブドミナントとドミナントマイナーを混ぜたらどうなるのか。

トニックと別のキーのトニックマイナーを混ぜたらどうなるのか。

ここでの進行は、A→Dに向かう五度進行に自然と「展開感」があるので、それを活用した、と考えることができます。

作曲の過程でただ「お、これいいじゃん」となったのかもしれません。

 

DはEにとってのVIIbですから、ビートルコードと解釈できるのでいつもの作曲癖で自然と流れていったように感じます。

ポイントは、ここではまだDがセンターコード(曲を構成する上で意識の中央に置いた和音、トーナルセンターになることもあるし、単純に個人が曲を作る際の支点に置く場合の意志的中心和音になる場合もある)になり得ていないところです。


最初のE-G-Aが強烈ですからね。
本来このDが来る場所は、IVが来ます。この曲のこの部分を理論的に正しくなるように置き換えてみましょう。

E|E|G|A|

E |E|G|A B7|

E|E7|A|Am|E|B7|

でしょう。これだと違和感なく曲頭に戻れます。


おそらく多くの作曲経験者は、このDを「曲の最初のキーのIVに行ったんだろうな感」を持って弾くと思います。

 

でも全体から眺めると全然違う!というのが痛快ですよね。
E→Dという転調的現象が起きているんです。
だから次のG-Gmがしっくり来るんですね。
ミスディレクションを用いた素晴らしい進行。

センスと言ってしまえばそれまでですが、ここでのポイントは、流れていく感じをただ受け入れるだけ、です。

作曲していて気がついたら転調してた、なんて経験ありません?

それで罪悪感を感じたり笑

不定調性論はそこで罪悪感など感じず、その理由や自分の感覚感をちゃんと理解してあげてもしおもしろいと思ったらちゃんと作ってみる、という発想を持って頂きます。

で、ビートルズはそれが自ずとできたので自分達の一風変わった音楽性に臆することなく食らいつき、成功した、とも言えます。

 

そしてこの曲、D→A→Eとまた戻るんですね。ここで転調感を覚えるでしょう。

この違和感最高。
でもVIIb-IV-Iというビートル進行だから彼らには自然。

だから、この曲、アカペラで歌ってみると、意外と上手に戻れない人いると思います。
カラオケで全音あげる転調のようなことをさせられるからです。

最初にがーん!とEがなるから戻れるんですね。

いろいろ不定調性的な技を上手に機能和声に入れ込んで、ジャズとは違う複調性をポップに演出していると思います。

 

この曲でビートルズが教えてくれることは

理論的に正しいアレンジに収めようとせず、自分が行きたい方向にいかにも自然に行かせるために上手に理論(慣習による思い込み)を活用せよ、と言っているわけです。

 

そう考えると、難しそうに見えるジャズのほうがまだ構えて取り組める理論的根拠がある分、理解がしやすいように思います。