音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

初心者がDPでOzoneを使いこなすために3〜プリセット/アンドゥ/Stem Focus/Master Rebalance/MatchEQ

前回

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それぞれのモジュールで統一した機能の表記は省いていますので前回以前のページや

docs.izotope.com

こちらを日本語訳して参照し慣れておいてください。

始める前にoptionを開いてみてください。 歯車マークです。

波形表示は、線形表示(Linear)フルオクターブ1/3オクターブ、人間の耳が一緒の帯域と聞きやすい帯域で分けたcriticalというメニューがあります。それぞれ下記のような感じです。

ミックスがよくわからなくなった時とかは結構有用ですので、波形が読み解けなくなったらこうした感じで使ってみてください。

耳が疲れてくると、ラウドネス曲線で聞き取りやすい帯域に耳が反応してしまう、またはその帯域に対して鈍くなるので、妙に気になったり、妙な違和感が出てきたりしてしまった時でもミックスを続けなくてはいけない場合、情報を正しく認識する1つの手段として視覚情報をちょっと変えてみることで違和感自体が違和感であることに気付いたり、疲れているから休もうとかいろいろ決断できるようになったりします。耳も疲れると、腕が重いものが持てなくなるように、聴覚のゲシュタルト崩壊 みたいなことが起きる時があります。

 

またディフォルトのlinearオプションでShow Peak Holdをつけると、その下のPeak Hold Timeのミリ秒だけピークを表示してくれます。

5秒とかinfiniteとか初心者にはオススメです。

ミックスがほどよく済んだところで飛び出ている帯域とかをぼんやり眺める時に役立ちます。Ozoneがそういうところを中心にカットしてくれるのですが変にスタビライザーとかダイナミックイコライザーとかをかけられないように事前にこちらで均しておくというのもより正確に AI に計算してもらう工夫かと思います。

 

 

プリセットメニュー

設定を全てリセットするにはプリセットメニューからDefaultを選びます。

 

アンドゥ・リドゥ

前のデータに戻したい時、または作業のアンドゥを行いたいときは、トップの時計マークから作業履歴が見れ、左側の戻る矢印からアンドゥができます。

<Inisial State>でAIが計算した値の設定に戻すこともできます。

履歴をセットごとに分けておいて、後で「比較検討するABCDリファレンスセットにする」ということもできます。

履歴をクリックしてAの文字の下「Set」をクリックするとAという文字が履歴に入ります。これで履歴の比較が簡単にできます。説明書の方も見てみてください。こちら

あくまで履歴の中で比較するので、途中に作業履歴が挟まってしまうとそれらの設定が影響するので、必ず最新版の状態で幾度かセット更新されると良いと思います。

 

 

早速Ozoneのモジュールから述べていきます。

少しずつご自身でモジュールを動かしながら、前回ページのtonal balanceやExtrasを動かして細かいセッティングに慣れてください。

 

 

各種モジュールの概略

引用はこちら

 

===

Stem Focus

一つ、モジュールに入る前に要説明箇所がありました。

 

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こちらの動画が詳しいです。

2mixになってからでもボーカル、ドラム、ベースの信号に対してのみOzoneのエフェクトを掛けられる、というものです。最後の最後でボーカルあげる、とかベース下げる、とかなかなかの荒技ツールです。

いずれピアノだけ、ギターだけ、とかにも掛けられそうですね。
OzoneのこのStem Focusをはじめ、マスタリングですることなのかな、と普通の人間には思える作業を行える「元の音にはなかったものを追加できる機能」が出てきます。

しかしながら、実際業務となると「いや、そのくらいやらないと良くならないものだってあるよ」という声が聞こえてきそうです。このへんがOzoneの使い勝手の良さ、というか良すぎて怖いOzoneらしさがあります。

目的はクライアントもエンジニアもみんな、これは最高だと信じる音にすることで、そのために一つのプラグインであらゆることが可能になる必要がある、という心意気を感じます。

ただこの機能、まだちょっと結果に違和感あるかもしれないのであんまり大きく変えるようであればミックスに戻った方がいいと思います。

本来 マスタリングで行う作業ではないので、自分の楽曲で、2MIXになってから楽器のバランスを調節する必要がある間は、マスタリング作業は難しいと思います。またここを変える必要がある時はクライアントに一度確認しておいた方がいいかもしれません。またミックスとしてバランスを変えた音源をお送りしてどっちがいいか聞いた方がいいかもしれません。結構ボーカルが大きめなミックスが好き、とかベースが大きいミックスが好きという方がいます。

Master Rebalance

では最初のモジュール、Master Rebalanceを入れてみましょう。

これはStem Focusと類似した概念ですが、2mixの中のボーカルだけ、ドラムだけ、ベースだけの音量を上下できるという、RXを持つIzotopeならではの技術です。

下のゲインで調節するだけです。

ドラムを選択すると、青色の波形が選んだドラムの信号と識別されたデータです。

後ろの灰色はドラム以外と識別された信号だそうです。

 

注意したいのは、一度に選択できるのはどれか一つなので、ドラム1dB上げて、ベース2dBあげよう、ということはまだできないようです。

Deltaボタンをつけて再生すると、変化させた差分が聞けます。Ozoneで一番重要視される機能です。

自分のミックスでここであんまりはっきり輪郭が出るほど変化する場合は、ミックスに戻れるなら、ベース上げてきたほうがいいです。

 

また、マスターリバランスでは、楽曲のミックスにもよりますが、ボーカルを上げると(下げても)、波形が変わります。

元はサイン派の波形が、

リバランスの加工によって棘が立ってくる。音の微細な変化にご注意を。

 

Match EQ

次にMatch EQを考えます。これも必ずOzoneを使うときに用いなければならないモジュールではありませんし、ベテランな人ならご自身でリファレンスをチェックするやり方をすでにお持ちでしょう。

また決してこのモジュールがマスタリングに慣れていない人が使う初歩的ツールだ、と考えるのもどうやら間違いなようです。そのあたりは下記でジョナサンの動画を提示して説明しています。

"作業のヒントにするもので結論として用いるわけではない"

 

に尽きます。疑心暗鬼に陥ってしまうこともあるミックス作業を整えてくれるツールとしては非常に優秀です。物理的なモジュールということ以上に、心理的な危機を助ける役目が非常に大きいとも感じました。

「あれ?これ大丈夫かな?」という焦りを一瞬で鎮めてくれるツールになっています。

 

 

ある程度リファレンスが整っている人は、先にも書いたtonal balance controlを最初の基盤にしても十分かと思います。

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こちらの10:00前後からリファレンスミックスをどのように使うか、についての提案が聞けます。

・自分が細部まで聞き慣れた楽曲を使用する

・自分のミックスから切り替えてリファレンス曲を聞いた時、低域が多すぎた等の違和感に気がつける作業であることがリファレンスを用いポイント

ただ最近流行りだから、憧れてるからという理由でリファレンス曲を使うと、自分に合わない教科書を使って受験勉強する、みたいなチグハグが待っているかもしれません。

 

モジュールで考えましょう。

8,000 バンドを超える周波数においてマッチングを行うデジタルのリニアフェーズ EQ だそうです。かなりCPUを食いそうです。

 

これがリセットボタンです。設定をディフォルト状態に戻します。アンドゥではありません。

まず参考楽曲を読みこみます。

右のReferenceボタンを押して、ファイルから読み込むか投げ込みます。

 

 

左の+マークから何曲か読み込むことも可能です。

 

読み込みたいところをクリックして青地に指定します。

この後referenceボタンを切って、

さらにその横のIボタンを押してDAWの再生(キーボードのスペース等)を押すと、選択したリファレンス曲の選択部分が再生されます。

この時referrenceボタンを押すと、該当箇所が再生されているのが見えます。そのままそこだけが繰り返し再生されますので、下記の作業に移ります。

1.「キャプチャ」をクリックして、カスタムターゲットスペクトルのスナップショットを記録します。スペクトルのスナップショットをプリセットとして保存できます。

そのEQカーブがリファレンスになります。

終わったらstopを押して、2に移ります。

 

Aメロが静かでサビがうるさい曲だと、スペクトルが複雑になるので、二つとも別々に保存してプリセットにしておいて、自分のミックスでもそれぞれ静かなところ、サビ、などでカーブを参考にして作業を進めるとより正確です。

手間はかかりますが、それらの作業が複合されることによって、より自分のミックスに合ったリファレンスの活用ができると思います。

2.「キャプチャ」をクリックして、トラックのスペクトルのスナップショットを記録します。

 

ここで

referrenceのボタンを切って、再生させるとDAWのトラック曲が再生されるので、該当部分をリピート再生にして、2をキャプチャしてもいいです。

 

MEQスペクトル

引用

グレー : 全体の信号の振幅、デシベル単位のリアルタイム表示

ホワイト: 一致したカーブ。スペクトル全体に描かれた太い白い線。
ゴールデン : 参考楽曲のスペクトル。
ブルー : 参考楽曲のスペクトルを適用した後のスペクトル。

 

あとは調整です。

  • smoothing: スムージングを高くすると精度が低く(曖昧になだらかに)なる。スムージングは​​低いほどリファレンスに正確。

  • Amount : 参照カーブを適用先カーブに一致させるときに使用する処理の強度。

 

 

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こちらではRXを用いて、リファレンス楽曲とのラウドネスを確認する方法が紹介されています。

急にRX???と思うかもしれませんが、マスタリング作業でRXを使うシーンは結構あります。かなり高価なソフトなので簡単に手に入らないでしょうが、毎年信じられないセール組み合わせがあるので、マスタリングをがっつりやりたい方は上位版を持っておくと良いでしょう。

RXとミックスマスタリングとの関わりについては、このシリーズでも随時触れてゆきます。非常に練度の高い処理が可能です。

 

下記にも概略がありますが、この記事で書いてある範囲の内容です。

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最後にジョナサン・ワイナーが考えるMatchEQの有用性についてのコメントが非常に説得力があります。

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この記事シリーズでも後半にcodecについても詳しく書くので、その後に再度見ていただくとより内容がわかると思います。

 

リファレンストラックのより高品質な音源の利用を促す理由は、ストリーミング配信によって、少なからず音質を変えられ、リスナーに届く頃にはどんな音質になったときにできる限り劣化を免れるためです。

音楽発売において、できる限り自分が目指すジャンルの音楽と競い合える、かつ受け入れやすい音質を作り、リスナーに届ける必要があるエンジニアにとって適切なリファレンスを持つ、ということは重要です。

 

リファレンスを探す時もレコード、CD、WAVE音源などはもちろん

高いbpsを持つリファレンスを探しましょう、と言っています。

リファレンストラックとして使った音源が非可逆コーデック(WAV→mp3等)されたものなのか、そうでないのか、を確かめる方法も動画では説明実演されています。

 

ジョナサンもアーティストから直接ファイルをもらったり、レコード屋やCDショップの音源を探しに行くそうです。全ては良いリファレンスのために!

前回までに示したジョナサン・ワイナーのリファレンストラック集も高い技術やアイディアが封じ込められた「作業中に参照にすべきトラック」とのことです。

それらは録音、楽器の音色、絶妙なバランス、が記録されたリファレンスだから、それを聞くことで、問題は解決されないが、今自分が抱えている問題解決の糸口になるような音像をそこから感じ取り、解決作業に展開できる音楽的なクオリアの手順を作れるトラック集なのでしょう。

当然自分の聞き方の癖なども関係してくるので最終的には自分なりに聴きやすさを探求したり、自分なりのリファレンストラック集が出来上がることがミックスレベルの向上の証でしょう。

 

そうした良いリファレンスで用いている、という前提で、動画の13:00すぎにジョナサンがMatchEQを実際に使いながらsmoothフェーダーの重要性を語ってくれます。

全く同じにしようとすると計算されたEQカーブはおかしなものになるが、smooth機能でリファレンスに近づけてゆくことでEQカーブの違いが逆に明確になり、次の作業でどこを持ち上げ、カットしていけばいいかの戦略が立てやすくなることを示してくれます。またtonal balance controlを用いて説明してくれているように、どこをどうすれうば良いか一目で教えてくれるツールがあれば、変に疑心暗鬼にならず、色々いじってよくわからなくなってしまう、という事故を減らしてくれる有用性を伝えてくれています。

それらが微細な差異と分かればほんの少しEQをかけるだけで済み、ダイナミクスをかけてヘッドルームを無駄にすることなく、最後のリミッターまで十分なヘッドルームを確保して余裕を持って作業できる、となります。

またリファレストラックの音圧に合わせようとして、今ミックスしているトラックも即座にボリュームを大きくしすぎないように。

リファレンストラックのボリューム自体に惑わされないようにリファレンスのボリュームを下げて作業、するような工夫も忘れずに。

 

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