音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

初心者がDPでOzoneを使いこなすために2〜Master Assistant

前回

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それぞれのモジュールで統一した機能の表記は省いていますので前回以前のページや

docs.izotope.com

こちらをいつでも開けるようにしてください(要日本語訳)。

ここからいつでもユーザーガイドは開けます。

 

Master Asistance

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10のバージョンとすでにUIが変わってきていますが、基本的な仕様は学べます。

 

 

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19:00ごろからmaster Assitantの機能の使い方の提案があります。

この機能は

・マスタリングを代わりにやってくれるものではない

・たくさんの計算結果に基づく「AIの提案」であること(サジェスト付きメータープラグインとして)

・マスタリングのスタート地点をゴールに少し近いところに置いてくれるくツール

・しかし楽曲によっては逆にスタートラインからも遠ざかってしまう場合がある。そうした時は、マスタリングの理想形に近い音源をリファレンスとして用いてAudio Lensを用いるなどの一手間を加える必要があるのではないか

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・青木氏は客観的にミックスの流れや方向性を再確認するためにミックスがある程度できた時点で使ってみる時がある=ソフトが「そっちに行きすぎてませんか?」を提示してくれるような結果を出してくれる時がある(その後外して自分でミックスし直す)。

など有用なご意見。

 

下記はOzoneの開発に携わったJonathan Wynerのリファレンスリストです。

リンクを覚えておいて損はないかと。

open.spotify.com

 

早速触ってみましょう。前回計算結果を出したAI の画面に戻ってください。

ここで覚えるのは上記の1−4です。

 

楽曲の一番聞かせどころ、または全体を聴いてみて一番違和感があるところ、気になるところをDAW側でリピート再生に設定ください。

リピート位置決定。

 

 

次に以下を試してみてください。

 

1.まずOzoneをバイパスしてみる(Master Assistantの解除)

(下記のようにGain Matchをオンして)。

bypass

GainMatch

 

バイパスした時

・音の広がり

・音のくぐもり

・キラキラ度

・タイトさ

など微細に変化しているのがイヤフォンなどでも聞き取れると思います。

慣れるまでは、ドラムはどうかな、ベースはどうかな、ボーカルはどうかな、最も目立たせたい楽器の音はどうかな、一番目立たない音はどうかな、全体はどうかな。と何度も何度も注視する音を変えながら聞きます。

 

大抵はOzoneをonにした方がキラキラして、立ち上がりがくっきりしていい感じになっていると思います。

その変化にとりあえずは大体OKと思ったら、次に、

 

2.Loudnessを変えてみる。

3のTonal Balanceを変えるのを先にしてもいいですが、慣れないとわかりづらいと思います。

音は良いけど、何度も聞いてると少し耳が疲れる、ガー!!!!とくる感じが少しでもあるようなら、ちょっと"ラウドネス"がきついかもしれません。

カーソルを近づけると上下に矢印が出るのでマウスでクリックしながらマウスを上下してみてください。マキシマイザーのかかり具合を増減できます。

alt+円内クリック、または円内ダブルクリックで0(最初のOzoneのAI計算初期値)に戻ります。

時には最大値にして、その下の「I」ボタンを切ってみてください。ラウドネスがバイパスされます。

変化感が掴めます。

変化感はとても微妙なので、Ozoneを扱う時はその微細な変化に慣れるようにしてください。

また画面のデータ上でも波形で視覚的に圧を確認できて便利です。

このマキシマイザーの値は、後で見る個別のマキシマイザーモジュールのメインのゲインにリンクしています。ここでは+6.5dBが計算された初期値のようです。聞いた感じちょっと圧が強すぎます。


最初はこんながっつりでした。ピンクの線は叩き潰している分の軌跡です。

 

下げるとこうした余裕のあるデータになります。

 

このラウドネス値を上下させると、最初にAIで計算した計算結果のマキシマイザーのゲイン値を±4db*1を調節してくれます。

 

0はマキシマイザーが0ではなく、最初の計算結果からの可変量が0という意味です。ピンクの波形が少しでも変化していたら、それはマキシマイザーがかかっているという意味です。

この「I」ボタンで切った状況がマキシマイザー0です。

 

OzoneのIボタンは基本on/offとして機能します。

 

 

最初はこのラウドネス値を決める、だけでも音源が整うことを感じられるでしょう。

逆に音量が出ているところでは効きすぎて、静かめのところでは足らない、的な現象はミックスのほうの問題であり、Ozoneが悪いわけではないと思います。

Ozoneが自動計算しただけのミックスでもとりあえず満遍なくちょうどいい、となるまで、ミックス自体を作り上げられるようにするのが秘訣だと思います。

何でもかんでもどんな音楽もOzoneを通せば良くなる、という魔法のグッズではありません。

 

画面右の

Full Scale: ほとんどの通例ミックスにとって有効な設定で、トゥルーピーク制限無効状態で-0.1 dB に設定します。

Streaming: ストリーミングサービス配信用。トゥルー ピーク制限有効状態で -1 dBに設定します。用途によって決めてください。通例-0.3〜-1.5あたりで設定する、とされていますので、適切な値と思います。この違いにこだわりが出るまでは従っておいた方が良いです。

現代においては全部ストリーミング配信用で設定しておいてもそこまで問題はありません。

 

Full Scale設定ではtrue peak制限スイッチが切れます。

 

ストリーミングではtrue peak*2制限が入ります=ラウドネスノーマライゼーション。

 

それぞれCDやライブ音源用か、ストリーミング配信用か、でざっくり選んでみてください。

true peakをはじめとしたデジタル音源の扱いの怖さ(?)は実際体験しないと身につきません。

逆にこういう理論値にこだわれない人は、現代のマスタリングには向いていないかもしれません。

 

音楽は感性でやるのですが、数値と理論が頭に入った上で教科書を閉じて画面の数値の判断を心象的判断で執り行うだけで、理論値がわからない状態で感性でやっても現代においては支離滅裂になるでしょう。配信サービスの値は理論値でできているからです。

 

 

 

 

もしまだ余力があったら

3.Tonal Balanceでバランスを変えてみる

膨大な楽曲を分析させた結果の波形平均を上記のように青いトンネルで示してくれます。この中に波形が収まればいいというわけではないのですが、一般的な傾向からどのくらいズレてるかの個性がすぐわかります。

 

OzoneのTonal Balanceもこの仕組みを展開しています。

今回自分が使った曲が、まだボーカルが入っていない曲であったために上記のように足りないところもありますが、この辺をOzoneの各モジュールに飛んで、足らない帯域をブーストして、一般的な効きやすさに整えるか、曲の性格上、この欠落を許すか、などを後々モジュールで調整していきます。

 

 

 

ここで上下させれば、上記EQ設定の0-200%の変化量を調整できます。

 

一番下は変化量0です。EQラインはフラットになります。

上目一杯で変化量最大です。下記のEQカーブが随時変わってくれます。

真ん中の値は、Ozoneが計算したEQの計算初期値です。

 

このTonal Balanceをあげた方がいいのか、ラウドネスをあげた方がいいのかのバランスを考えるだけでも微細な変化の練習になります。変化させることで

・ベースとドラムはどうなった?

・ボーカルとセンターの音はどうなった

・サイドの音はどうなった?

・ハットやクラッシュ、ギターのシャリシャリ感、ボーカルの生っぽさはどう?

とかぞれぞれ確認して差し引きちょうどいいところを見つけます。

簡単にはできないので、一つ一つ良い値を見つけて、それぞれの値の平均値を考えると良いです。上記ですと、ラウドネスは0から1、トーナルバランスは0から−2を目安に聴きながら、どこを活かして、どこを妥協するか、その値を決めます。

ヘッドフォンで聞かないとわからないこと、防音ルームで聞かないとわからないことがありますのでしっかり作りたいならそれなりの環境で行ってください。

どの位置にしても気に入らなければ、一番平均している位置に設定した上で、より細かく各モジュールで修正していくしかありません。

ダブルクリックで小数点以下も打てます。

 

最初はこの辺でへとへとかと思います。マスタリングを専門家に依頼する気持ちもわかることでしょう。

 

下記はiZotopeスタッフが考える「素晴らしいミックスとマスタリングが施されていると思う曲」「素晴らしいボーカルミックス」として共有しているデータがピックアップされています。izotopeの理想が伺えます。

www.izotope.com

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<ピックアップされたミックス>

 "Semente" by Snarky Puppy

Producer: Nic Hard

・楽器の分離、ステレオフィールドの定義、奥行き感が卓越しており、魅力的で生き生きとしたサウンド。
・効果的なパンニングとEQによる楽器の分離がなされている。
・ダイナミックレンジの効果的な配置が明瞭さに寄与している。

 

"Colomb" by Nicolas Jaar (self-produced)

Mastering: Rashad Becker

・適切に「接着された」ミックスの実現。統一感ある雰囲気。
・衝突を避けつつ、パンニングと周波数配置により、空間認識を向上させている。

 

 "Chevrolet" by Derek Trucks

Producer: Jay Joyce

Mastering: Jim Demaine
・素晴らしいトランジェント、リズミカル、調和のとれた音質の組み合わせ。

・リファレンス ミックスとしての位置づけ。

 

"bel_air.obj" by Eero Johannes (self-produced)

・異なる周波数帯域が特定の楽器とほぼ一対一で対応、各部分には異なる空間感覚が与えられている。
・ミキシング段階の問題を早期に解決する素晴らしい例。

 

"Dusk" by Werkha (self-produced)

・異なる音響要素と電子要素が一体化がグルーヴのある体験を形成している。
・適切なサンプルの選択、スペースの効果的な使用、優れた録音

 

<ボーカルミックス>詳細は記事参照。

“How Deep Is Your Love” by PJ Morton (Bee Gees cover)

選出者: マット・ハインズ、オーディオ マルチメディア プロフェッショナル

 

2. “Nothing More To Say” by The Frightnrs

選出者: Jack Tarricone、QA エンジニア

 

“Fun” by Blondie

選出者: Udayan Sinha、プロダクト マーケティング スペシャリスト

 

“Homemade Dynamite” by Lorde

選出者: Rachel Alix、カスタマー ケア

 

“Billie Jean” by Michael Jackson

選出者: Juergen Wirtz、販売および製品スペシャリスト EMEA

 

その他にもリファレンス曲をあげたページがあります。

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これらの音像評価は、まかり間違うとオーディオオカルト的な意見や発想に繋がりかねません。違いを感じるためには視覚的に、聴覚的に、確かに誰にでも説得力を与えられる根拠の明示を意識しながら作業してください。

ボーカルバランス/エクストラ

ここから沼です。

ボーカルバランスはバランスが取れているmixの場合は以下のように表示されるようです。

自分の曲でボーカルバランスから直さなければならないなら、トラックダウン前のミックスに戻った方が良いと思います。

 

その下のExtrasはOzoneの中核機能の総合評価なので、それぞれの機能や癖を見切るまではここをいじらない方がいいと思います。

また、いじるなら元の値を覚えておいてください。それぞれのモジュールに飛んでamountの数字や、スライダーにカーソルを乗せると42%などと数字が出ますので

これを覚えておかず最初の画面で動かしちゃうと、ダブルクリックとかで元に戻せないからです。

とにかくここは全ての機能を俯瞰してからで良いと思います。

 

Ozoneが重い時

PC重くない人は下記は無視してOKです。

この辺の作業で、もしPCが重くてしょうがない、みたいになったら下記のような最適化案が提案されています。

https://docs.izotope.com/ozone11/en/getting-started/index.html

使用していないモジュールとは下記の列の中で電源「I」ボタンを切っているモジュールを消せ、とのこと。

またDAW/NLE*3のバッファサイズを上げろ、

とか。

 

Ozone上での各種バッファサイズを上げろ、などの指示があります。Ozoneの歯車メニューからそれぞれのモジュールで再生時の計算に必要のため、データのバッファ(再生時の計算緩衝材みたいな時間)がある程度必要とのこと。

多少再生ボタンとか押したあとタイムラグがあるかもしれないけど、気持ちよく作業したければ、バッファ数の増大をご検討ください。

初期のM1マックであればPhotoshopで編集しながらでもサクサクOzoneは動くので、CPUの負担を考えても、あまりに重いなら、新規PCのご検討を優先された方が良いかもです。

落ちるのはapple siliconでも落ちますが。

 

その3に続きます。

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*1:

+6db(デシベル)が2倍の値ですから、

+4dbで1.58倍

-4dbで0.63倍

として、現状の値の63%〜158%の値でマキシマイザーのゲインを可変できる、と考えてください。

*2:デジタルサンプルデータの隙間に隠れてしまうアナログデータに置き換えた時の周波数のピーク値=ストリーミングサービスではtrue peak値に具体的な制限値を設けているため、無難な配信データになるようにこのtrue peak時における音量の割れの発生を理論的になくす=耳でこの割れは聞き取れない場合が多いが...

*3:NLEとはノンリニア編集ソフトウエアのことを指すと思います。DAWではないけど、DAWのように複数トラックを並べデータを貼り付けて編集するソフト。ご自身がDAWを使っているならDAWもまた同様にノンリニア編集機器なので、特に気にしなくてoKです。