音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

初心者がDPでOzoneを使いこなすために11〜EQ/Dinamic EQ/VintageEQ

前回

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それぞれのモジュールで統一した機能の表記は省いていますので前回以前のページや

docs.izotope.com

こちらを日本語訳して参照し慣れてください。

 

Equalizer

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こちらの紹介で基本的な使い方は網羅されてますので必ずご覧になってから先に進んでください。

 

analog: 最小位相 IIR (無限インパルス応答=Infinite Impulse Response filter) フィルター。IIRは基本的なEQの計算方法ですが、高い技術力が網羅されてて素人は黙っとれです。使わせていただきましょう。

またフィルター形状なども仕様がこだわっているので、ただ形が違う、というだけではないので気になる方はBaxandall EQ(位相シフトが抑えられ、柔らかくクリアな変化をもたらすタイプのカーブ)についてとか調べてみてください。

モデルになっているEQによって、選ぶフィルタの形/角度によっていじった帯域以外の音の質感が必要以上まで変わった感じを与える場合もあるかと思います。

フィルター選びはEQを使う時は一番大事かも。

与える効果が分かりきっているハードのEQやヴィンテージタイプEQと違い、どんどんバージョンが変わって、仕様が洗練されていくOzoneは、そういう意味でも今のところまだまだ扱いづらい側面があると感じます(使い慣れる暇がない)。

 

 

Digital : リニアフェーズ FIR=finite impulse responseフィルター。CPU 使用率高。機能フェイズ画面表示やSurgicalフィルターが選べます。

IIRとFIRのフィルターの話は難しいので計算量が多いのがFIRと覚えておいてください。

 

HAT22:イコライザーの製作①

EQでは元の音と変化させた音をミックスして得たい音を得ます。

各帯域での加工処理が少しでも遅れると、アウトプット時に原音との混ざりにタイムラグが起きるので、その時位相差が生まれます(上図参照)。

少なくとも音楽表現のレベルでは、音楽家ゆえに位相差を「暖かさ」と感じるとか「デジタルさ」と感じるとか、ある意味雰囲気な世界観で処理されることもあります。

リニアフェイズはこの位相遅れをなくすシステムですが、音楽はEQだけが刺さっているわけではないので、必ずしもリニアフェイズが「完璧な音」を自動的に生み出すとは限りません。

自分のこだわりを優先しない、柔軟なタイプの人は、どんな音でもある程度「これはこれで良い音」と思ってしまうと思うので、ぶっちゃけ自分のPC環境で使いやすいEQを見つけていく方が良い、で片付く話です。

人の耳もそこまで正確に判別できませんし。

 

EQオプションでShow Extra Curvesをチェックすると、

下記の三つの波形もみることができます。これはすごく目安になります。

(マスタリングでこんなに下げることはありません/あくまでこの記事用です。)

Phase Delay : 時間 (ms) で表される位相応答ずれの計算。

Phase Response : 度数で表される位相応答ずれ表記。この曲線は、アナログまたは最小位相イコライゼーションを使用する場合に最も役立ちます。

Group Delay : 時間単位での振幅エンベロープの遅延の計算 (ミリ秒)。このカーブは、トランジェントを扱う場合に最も役立ちます。

これらのミリセカンドのズレが先ほど述べた、変調させた音を原音 とミックスする時に起きる時間のずれです。時間がずれれば位相ずれが起き、コーラス 効果が起きてしまいます。  

波形が同じ画面で配置されるので分かりづらいですが、画面の右側にはそれぞれの目盛りがあるのでグラフの見栄えではなく数値の方をご覧ください。

 

 

同じ量でかけたEQラインでもデジタルとアナログでは微妙に異なります。変調させる帯域によって処理にかかる所要時間が変わるからですね。

EQを使えば音データが発信されるとき歪むというのがわかると思います。

 

そもそもアナログEQは、あらかじめ決められた帯域をそれぞれの電子回路の中に配置された電子部品を使って音を変えていくもので、それぞれの機種にそれぞれの良さがあります。だいたい同じような変調になるので、結果として変わる音、自体がEQの音として認識されていました。

機種によって、扱える帯域が異なり、できる処理があらかじめ決まっています。

現代っ子からすると信じられないかもしれませんが、当時は加工する帯域はバンド編成などで大体決まっていたんです。現代のようにあらゆる効果音や楽器が音楽につかわれることは少なかったわけです。

お金のないバンドはギター2本、ボーカルとベース、とかってだいたい決まっていたんです。そういうバンドが星の数ほどいたんです。効果音にサンプル使ってグラニュラーエフェクトかける、的ミックスは存在しなかったんです。

よってぶつかる帯域も似通っていました。

 

アナログ機器を実際に持っていた人は、そのノイズ感や、操作感、変化感がクリエイティブに影響を与える人もいるでしょう。私はギター弾きでしたから、コンパクトエフェクターのグラフィックイコライザー、

この帯域でどこをのくらいいじればどういう音になるか、本当によく研究しました。

それでそう覚えて大体の音楽を弾くことができました。

 

アナログEQは温かみが出る、等と言いますが、それは個人の思い入れもありますので、後で「アナログEQを使った」と言われないとわかりません(言われてもわからない)。

単純に"音がどこで変わる"を自分なりに見分けられれば、初心者はOKだと思います。

 

下記をご覧ください。

analogのGloup delayです。

一番右です。

DigitalのGloup Delayです。

それぞれ同じ帯域幅で-4だけカットして、現れる波形への影響を計算してカーブを書いてくれています。白い点線が遅延の度数です。

 

位相の遅延とは、周波数を変化させる処理が、帯域別に違うために入力から出力において多少の遅延が生じることを意味します。大したことないじゃないか、と思うかもしれませんが、位相の遅延とはつまり位相ずれです。帯域の変化だけでなく音の出力、アタックに変化感が生まれる可能性があるわけです。

下記のように発音するタイミングがEQをいじったところからずれていく、わけです。上手右にmsとありますが、ミリ秒のズレが起きます。

しかも帯域でそれぞれのズレがあり、デジタル、アナログでそれぞれ違うずれ方をします(参考)。コーラス効果とは言えない 微細なこれらの変化を時には「暖かさ」とか表現してきたわけです。悪いことばかりではないのですが、音変化の事故が起きる可能性もあるのでEQは無難なツール、とか思わないことも時に必要です。マスタリングの場合はクライアントが満足した音色で依頼してきたわけで、それを変えてしまう恐れもあります。

右の数値部分をドラッグすると該当値まで見れます。ここでは-10ミリ秒遅れることになります。このGloup Delay(うなりのピーク差平均=このくらいずれてるよというビジュアルイメージ)はトランジェントなどをシビアに処理するときに目安にできると思います。

逆にこのミリ秒の遅延こそがアナログの質感だということもできます。

クールな曲で低音域にEQをかけなければならない時、アナログよりもデジタル処理の方が、遅延が少なく、固いサウンドが保てる、みたいな発想になります。

大抵低音域の方が処理が重いですが。

EQでカットしてもデータがクリップする時があると思います。カットによってカーブが歪み強化される帯域などがあり、音量が持ち上がります。難しいですよね。

www.soundonsound.com

 


同様にPahse Delay(信号のピーク差=信号の頂点について入力と出力でこれだけずれますよという数値指摘)も表示できます。

アナログ 

デジタル

高音のピークはほとんど変わりません。やはりアナログの方が大きいです。

デジタルEQの冷たさ、硬さは帯域の音色が変化したのに、その変化が周囲に及ぼす影響が小さいから、とも言えるかもです。反対意見認めます。

 

 

下記はPhase Resonance=位相応答を度数で示すものです。

右側の数値が何度ずれてるかわかります。さらに下の図のdegreesが角度です。

ミリ秒で示すか角度で示すか、イメージのわかりやすい方を自分の判断目安にすると良いです。

曲や音像、音質によってガラリとイメージ変わります。

analog

degital

undefined

 

 

 

こんなの見てもわからないのですが、へーこんなにズレるんだ、ってすぐにわかって勉強になります。

 

 

そしてDigital設定でPhaseを0にすると、今まで示してきた位相のずれが全てなくなります。

これがリニアフェイズEQです。

リニアフェイズにはプリリンギングというディメリットがある、とされています。

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スペックの低いPCだと位相ズレを解消するためにアタック部分がぼやける、という現象ですね。これがリニアフェイズEQの問題点だ、としていますが、

この辺りはizotopeさんは優秀ですし、リニアフェイズにおけるプリリンギングの注意とか説明書にありません笑。これはもしプリリンギングが起きるなら、その帯域はリニアフェイズ以外を選択すれば良い、的な発想自体がEQを選択するエンジニアの責任だ、とでも言わんばかりです。低音域はプリリンギングが起きやすいので、それもわかってつかってね。当たり前でしょ的な感じもします。怖い。

 

低音の位相ずれを戻すために、それぞれのphase値を変えたり、

その近所に別のnordを設けて、そこでフェイズ調整すると、若干低音の位相ずれが解消されたりするので、もうなんでもできるので気が済むまでいじってみてください。

要はこの三つのカーブを表示できていれば、何が何でもリニアフェイズにする必要性が減るし、別の方法で同じような効果を得ることができる、というわけです。

 

あまりにいろんなことができて、いつも通りのつまみ処理で対応できる説。

今日はこの3つのカーブが全て直線になっていればEQを入れても原曲の質感を全く変えないということになります。ありえないけど。

EQ のフェーズ誤差起こさせない選手権があっても良さそう、

 

 

また、あとで説明するmid-sideモードで合わせがけしてサイドのトランジェントを持ち上げる、とかサイドのhighをあげてリニアフェイズのボケた感じを音像の上で解消する、とか。。

耳で聞き取れるレベルではないのでこだわる人は、、、の話です。

 

 

EQもいじらないに越したことはないです。

そしていじっても「温かみが出た」「くっきりした」みたいに位相ずれを表現されても、それを証明することができません。私たちの多くには聞き取れないからです。

 

 

帯域地獄聞き。

ピンポイントで聞く時はalt+クリックで聞くことができます。

この時マウスホイールを回すと、

聞ける帯域が広がります。

また、ノード帯域別にソロ聞きしたい時は、soloボタン以外に、より簡単にalt押しながらノードの頭ボタンを押すとそのQ幅帯域に応じた範囲がソロで聞き取れます。そのまま右クリックもすると、指を離してもソロ機器の状態になりますので、Q帯域を広げるなどの微調整も行えます。

 

マニュアルにも書いてありますが、下記動画で青木氏が27-29:00ごろ実演してくれてる感じを見た方が感動します。

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alt+左クリックのまま→右クリック

と押すことで、クリックを離しても解除しないまま限定視聴できます。

これを解除するには、

alt+右クリックのまま→左クリック

で解除されます。

 

 

Dinamic EQ

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EQのように完全に音を変えてしまうことなく、必要な出っ張り部分だけ音を抑える、という使い方ができるのがダイナミックEQの特徴です。EQよりも音に変化を与えないのでピンポイントでここだけ直したい、という状況ではEQを挿して大雑把に音を変えて主張するよりもダイナミックEQの方が元の音像を守ってくれる分クライアントに親切です。 

基本はEQの考え方と同じなのでサクッと行きます。

 

・その楽曲のあるパートのその帯域の一部の音だけ上げたい/下げたい

・スレッショルドでその帯域部分がブースト/カットに反応するラインを曲を流しながら決める

・必要ならアタックとリリース値、オフセット値=基本ゲイン値を決める

この四種類のモードがある、ということですね。

上げて引っ張る

上げて抑える

下げて引っ張る

下げて抑える。

元の音を強調してさらに上げたいか下げたいか、抑制して戻したいか、さらに押さえ込みたいか。状況によってさまざまニーズがあります。

 

Auto Scaleはアタックリリースを自動計算してくれるそうですが、Auto Scale入れてみてご自身が与えた数値と違う値でしたら、個人の判断で。

帯域を変えると自動的に変わってくれます。

ディフォルトでonになっています。

 

VintageEQ

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VintageEQは上部はPultec EQP-1A、下部はPultec MEQ-5がモデルだそうです。

われわれDTM後続部隊は、ヴィンテージのEQ実機を触ったことがありません。

もうその時点で問題なのですが、波形が視覚で追えず、いじれる帯域も限定されているEQのどこがいいのか、とか本当に最初は思ったものです。

 

こういうイメージですね。アナログEQは画面左をinにしなくても音が変わる(少しレベルがあがる)という伝統がありますが、Ozone VintageEQを指しただけの波形とバイパスの波形を見てみましたが、そこまで視覚でわかる変化ではなかったです。

 

VintageEQon

 

Ozoneバイパス

重ね合わせ。ほとんど変化ありません。

 

よって、「挿しただけで変わる」とか思わなくてもいいのかな、と。

ヴィンテージEQのカーブを真似てくれている、ということで聞き馴染みのある低域、高域を作れながらも扱いは全く別物です。

カーブが視覚的に見える時点で、クリエイティビティが違います。

ヴィンテージEQのカーブの独自性は、

イコライザーモジュールでもヴィンテージEQのカーブの特性を真似たものが使えます。

カーブを持ち上げるとその分反対側が潜り込む/膨らむ領域がある、というのが特徴です。この特徴で音量が上がりすぎることが防げますからね。

Low45Hzでカットを一定にして、ブーストをいじったときのカーブ差です。

なかなか色っぽいカーブですよね。デジタルEQのこじんまりとした波形の動きに比べ、大きな範囲に影響が出ます。

こんなカーブは極端すぎますが、大体音の帯域をピアノの最低音以下、ピアノの音域、ピアノの最高音より上とすると、どの辺にカーブの軸が来るか、みたいなことでそれぞれの帯域のキャラクターがざっくり作れます。

High-Midの3Kをブーストしても上がってるのは4Kあたり、みたいなのがヴィンテージEQです。ハードだと波形が見られないので、つまみの数値解釈も癖があります。

いじってみるまでわからない??
これは内部の回路における設定による挙動なので意地悪ではありません。

昭和的にいうと、あそこのカレー、店主の機嫌がいいと多くなるよなぁ。店入る前に顔見て判断できるかどうか大事だ、的な。理不尽な目分量を楽しんでいた時代ってありました。

 

実際EQいじったときのカーブの特性を見たければ下記をご参照まで。

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EQも仕事やった感が出せるツールであり、その根拠を捏造しやすいので、核兵器の1万倍の破壊力の武器を持ったつもりになって慎重に扱っていくと良いと思います。

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マスタリングでのEQはクライアントが求めた音の"理想の復元"のための行為が主体、という話から、非常にわかりやすくEQツールについて全体像を示し、中半から実際にマスタリング作業におけるEQの使い方をOzoneで実践してくれます。この作業もイヤフォンで聴けるほど明瞭に良くなる実演で、聞いてて楽しいです。

ぜひ、特にミックス中級者の方でマスタリングにあまり明るくない(私のような)方は、ぜひ上の動画で一流の技をご覧になってみてはいかがでしょう。

30分の有意義な社会科見学です。

 

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いろんな人のミックスをそんなに長時間みなくても良いとは思いますが、ファンの方にはたまらないでしょう。

ご自身が好きなエンジニアの作業からインスパイアを受けると良いと思います。

 

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