音楽教育活動奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と...旧音楽教室運営奮闘記。

初心者がDPでOzoneを使いこなすために6〜Exciter

前回

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それぞれのモジュールで統一した機能の表記は省いていますので前回以前のページや下記を日本語訳していつでも参照できるようにしてください。

docs.izotope.com

 

 

動画のポイントはこの記事内にも盛り込んでありますが、翻訳つけて後でじっくりご覧ください。

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中域だけにエキサイターをかけたり、サイドのギターの成分だけエキサイターをかけたり、といったOzoneならではのtopicが出てきて面白いです。

ジョナサンなりのアルゴリズムの使い分けなどにも触れています。

 

Exciter

高域の成分を追加して音質に張りや存在感を与える加算信号ツールです。

サチュレーションと違うのは、新しい倍音を足さず、元ある高周波成分(の欠落部分)を強調することで、輪郭をはっきりさせる効能に特化しているといえます。その意味では暖かさや丸みを与えるサチュレーションとは真逆です。

マキシマイザー同様使い過ぎ要注意です。

マキシマイザーは音圧自体を持ち上げますが、エキサイターは音圧を上げる効果はありません(音が立つ)。

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歪ませる行為を行うので、昔の安いスタジオで録音したバカウマハードロックバンドのインディーズ発売音源が持ってたような生き生きとしたレアさが追加される感じです。ほんの少しわからないくらいで追加する、というところでやらないと「割れてるね、0点。」と言われる可能性のあるモジュールです。

ミックスで使うディストーションとは異なるので、耳に確かに感じられるまで掛けるとかけすぎです。最初は浮き立たせたい楽器の音色にのみ耳を集中させて丁寧に変化を聞くことで、確かに変化したその目盛りを少し戻す、くらいの感覚で慣れていくしかありません(初心者の場合、一旦納得いく値でかけたら数時間後もう一回聞いてみて...たいてい掛け過ぎてます)。

・ギターにかけるなら曲中目立つギターソロの入り口のド頭の音から1秒に集中して、かける前とかけた後で印象が良い方をベースにします。

最終的に掛けない方が良かったってなるのが凡人、最初からほぼ一発で狙いの量をかけられる人がマスタリングエンジニア、という職に就いた人です(イメージ)。

やるのは簡単、

・帯域を指定して

・メイン左フェーダーの「Amount」で調節

だけです。

右中段Bandsボタンは一括フェーダー操作。メインの右側フェーダーの「Mix」は原音とエフェクト音のミックスです。

前回も述べましたがLearnボタンは要注意です。場所によって結果が変わります。あくまで参考程度に最初にlearnしてください。あとで掛けると自分の設定がめちゃくちゃになります。

 

 

  • Analog: トランジスタタイプの奇数倍音追加でざらつきを。低音がカットされます。低音帯域で使って低音感をカットしつつカラッと仕上げたいときに便利。
  • Retro : トランジスタタイプ(ゲインを上げても歪みにくい)に基づき、減衰する奇数倍音で構成。アナログより柔らかい。音域全体に滲むようにかかるのでAmountの調節がしやすい、一番扱いやすい歪みです。
  • Tape : アナログテープを微細に歪ませたような明るいサウンド。ただしTape機器が音楽にもたらす良い効果だけを加えるのでlowfatミルクや減塩味噌汁みたいな感じになり牧場の味、田舎の味が再現できるわけではありません。センスが必要(?)なやつ。
  • Tube : アタックに重点を置いた、立ち上がりの明るいサウンド。ライトで自然な歪みです。
  • Warm : 減衰の早い偶数倍音のみを生成=ふくよかで厚みのあるサウンド。ライトすぎてすぐ「割れてる」と感じるような歪みなので中途半端なかけ方は要注意です。
  • Triode : 真空管回路タイプ(偶数倍音が増える=主にオクターブ音や五度に相当する倍音。ゲインを上げるとふくよかな温かみが増す)=アナログの暖かさをモデリング。Warmよりライトな分、一番Exciterらしい歪みです。
  • Dual Triode : Triodeよりも明るく野太く。Triode同様自然ですが、より低音域にかかるので、ライトな曲で使うと重さが増します。真空管的な暖かさ+エッジ。

 

このモジュールを使うなら、最初はAmountを多めにして試聴し、全部のアルゴリズムを試した上で一番近いサウンドモードを活用してください。

シンプルにExciterを入れるなら、Triodeで目安をつけていくと良いです。

音の立ち具外、目立ち具合にもともと完成イメージがあなたにないとなかなか使いこなせないモジュールです。

「くっきり分離させる」「なんとなく前に出る」「目立っていないけど立っている」

のそれぞれの中間など。

ピアノがメインのバンドの、ピアノが主体の曲なら、目立って欲しいリフ、印象的なフィルイン、かっこいいイントロ、気分が上がるエンディングのソロ、などどこをターゲットにするか考えて(アルバム曲順でも変わる)、あとは曲想や、曲のメッセージ、世界観(晴れか雨か夜か夕暮れか朝か)などからどこをどう立たせるか、などと考えてどうしても必要ならかけるモジュール、だと思います。めちゃくちゃプロ仕様やん!

 

お好み焼きに添えるガツンと来させるマヨネーズの量的な。

マヨ添えなくてもいいけど、添えるカロリーリスクを犠牲にしてもいい感じにしたい状況で勢いでかけると、明日胃もたれるよ。

 

下記でTriodeとDual Triodeを用いる動画が上がっています。

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このエキサイターの利点は、必要帯域だけに掛けることができる点です。

必要な帯域だけかけて、あとはI電源ボタンを切っておくのが賢明に思いますが、楽曲によっては下記のように、その他の帯域も電源入れておいてamountはかけない、方がいいのかどうか...

適宜ご判断ください。

帯域を分けた時点で両隣のEQカーブにクロスフェードが生まれますので変な位相ずれによる音痩せなどを注意して聞いて、電源のon,offを判断してください。onにするとフェードする分位相ずれが目立たなくなる可能性と、その帯域がぼやける可能性があるトレードオフであることをお忘れずに。帯域設定に命懸けなモジュール。

 

ただOzoneはそんなヤワなプラグインではないので我ら初心者には判別つかない。

(自分の楽曲とかで、ミックスに戻れるなら、戻ってトラックに戻った方がレアな感じは保てます)

 

 

高音域amountをマックスにしてみましょう。波形の白線と灰色の線の隙間に黒い空間ができていますが、実際にブーストされている範囲です。

ここにポストフィルターで高音域をカットしてみます。

このポストフィルターは「エキサイターで持ち上がった効果をカットするフィルター」です。エキサイターの魅力はこの高音域にあるのですが、それを調節できる、という心憎いのか混乱させてるのか素人には理解が及びません。

今度は灰色部分が上に来てます。実音波形である白い波形はそれよりも下になってます。つまりモジュールをかける前の音より倍音が増えて、かつこもっているわけです。

なんか心臓なんとかバイパス手術、的な凄さを感じます。

画面を縦長に拡大してそのカット容量を調整してください。

なおこのポストフィルターはCPU負荷かなりでかいです。

 

なんだかんだやったけどエキサイターでうまくいかなかったら、普通にEQ使った方がいいです、とはジョナサンの弁。笑。

 

Oversamplingとエイリアシング

このOversamplingボタンは、ディストーションデータに対してより細かなサンプリングを行いますよ、という意味です。

詳しく書くと、

青の波形を正確に点で描くのに(データを取得した点=サンプリング)ピンク色の点だけでは緑の線のような概略しか掴めません。

そこでこのように「たくさんサンプリング=オーバーサンプリング」すればするほど正確に波形を取得/再現/加工できます。CPUも使いますし、遅延可能性も出てきますが。

しかしながら、こうすることでエキサイターを掛けたことでゆがんだ結果生まれる余計なノイズ(エイリアシング)を防ぐことができます。

エキサイターという性格上、膨大な高調波が生まれるので、それらを可能な限り正確にデジタルサンプリング把握しておくことで、おかしなノイズや別の音が現れて音像がぼんやりするのを防ぐのがオーバーサンプリングという概念です。

下手っくそだとエキサイターかけた瞬間、音像がぼやける、みたいなことが起きるわけです。

つまり"エキサイターモジュールで歪ませてデータがめちゃくちゃになっても、その分細かくサンプリングするからクリアな歪みになるよ"ボタンです。

 

 

下記はエイリアシングの考え方です。

引用

上図の一番下は波をこれまで通りサンプリングしていたはずなのにサンプルされた周波数の点を繋ぐと低い別の周波数となってしまいます。デジタルはこれを実際に鳴っている音と区別できず、この存在しない波形を実音にしてしまうわけです(エイリアシング=折り返し雑音)。これは、人間の目がヘリコプターの羽をサンプリングするときに逆回転して見えたり、ゆっくり回転して見えたりする現象と同じ、ということです。存在しないものが実体化してしまうわけです。これは目のサンプリング精度がヘリコプターの回転に追いつかないためです。

その残像は音楽で言えばいわゆるノイズになります。

ノイズですから当然完成品の透明度を奪います。

原則的にはエイリアシングなど具現化されない方が音はクリアなはずです。

昔の人はこれらのノイズを温かみと表現する場合があるかもしれず、感じ方に個人差があるので気をつけてください。

 

その楽曲の性質と、amountとMixバランスによっては、ちょうど良い歪みが生まれ、Oversampleしない方がいい、と感じる時もあるかもしれないので、十分に吟味して追加してください。

最初はわからないかもです。Ozone買ったから自分もエキサイター使っていいと思うのは、ナイフ買ったから人も刺していい、みたいな理屈(?)です。それ、本当に必要な作業か?を考えてください。

決断力のある人、耳がいい人のみ、ぜひ使いこなしてください。

もちろん私もまだ使えません笑。

 

具体的にOversamplingボタンを使って折り返し雑音を抑える効果があることを示す参考動画です。

www.youtube.com

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どの辺までを「意図しない雑音」とするか「ふくよかさが加わるノイズ」と判断するかが難しいところです。

波形が目で見えるので、二つを切ったり入れたりして、どちらが良いのかをご判断ください。

 

しかし、機能が増えると、作業が楽になる分、もっと高度なことに時間が取られたりしますね。

<参考>

www.izotope.com

エイリアシングについては下記のページで詳しく扱っています。

www.terrax.site

 

 

音の歪み

ただのサイン波1音だけ鳴らしてエキサイターで少しいじって、その後ろにイコライザーを入れて変化した波形を見れば、追加強調された倍音が見て取れます(通例サイン波には倍音はない)。

 

エキサイターモジュールを使ったとき、歪みすぎに感じたり、ただ汚れただけ、とか、厚みの感じが違う、と感じたときにはoversamplingを押してみて、より良い感じになるかどうかを確かめてください。

その歪み自体が気に入らなかったり、この厚み必要?、こんなに元気にする必要がある?という疑問をエキサイターを使う時に持ってみると完成イメージからブレなくて良いと思います。

 

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