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M-Bankスティービー・ワンダー楽曲(コード進行)研究レポート公開シリーズ2
スティービー・ワンダーの不定調性進行分析
1973年のアルバム「Innervisions」からの一曲です。
イントロからe♭-g♭-a♭のベースラインが印象的です。
さて。
この曲も、コード進行というより、旋法的楽曲として感じるのですがいかがでしょうか?つまりコードで作らずメロディの流れで作ってる感じ、です。
スティーブ本人の多重録音だそうです。
このリフ部分、コードが一つである場合、Ebm(11)みたいに書くのでしょうか?
それとも、一音一音にコードを乗せて、| Ebm Gb Ab |とするのでしょうか?
いや、曲がブルージーだからひとまとめにしてEb7(#9)でしょうか。
コードでまとめようとすると変になる曲、と言うものがあります。
演奏した感じでは、Ebm7が無難に感じますが。
でも、マイナーコード一発、という割には「短調」という感じがあまりしません。ポジティブで、少し攻撃的で、つまり、ロックでファンクでカッコいい。
「コード表記」というのは、いわゆる和声学でいう「還元」にあたるので、音楽的に常にそれが出来なければ不十分である、ということにはなりません。"小説のあらすじ"みたいなものです。
ではこの「コードが乗らない部分=いちいち乗せないようなフレーズ」が醸し出す印象に注目しましょう。
不定調性論での領域表記としては、| Ebm Gb Ab |というコード部分は、
Ebm7 Gbu4 Abu4 |
などと表記できます。
Gbu4=g♭、d♭、f
Abu4=a♭、e♭、g♭
です。
こうした四度領域和音が色づけをしている、という解釈が可能になります。
三度のない和音がコード表記として存在数方法論なのでこういうことができます。
また本来こういうことができないといけません。これがあった上での機能和声論なんです。音楽やってた人たちが優れすぎていてこのステップを飛ばした、とかって考えてください。
本当にみんなIQ150以上あったら社会に小学と高校は必要ないんです。
これを単に「E♭マイナーペンタのリフ」と、素通りしてしまうと、コード演奏の際に、どうもはっきりくっきりしません。従来の五度領域の和音では歩幅が狭すぎるんです=動画シリーズなどでは解説していますが、忘れてください。
2コーラスの“power”のメロディのみM3rdを歌っています、そこだけE7(#9)またはEm7(10)になります。
ここもEu4として、三度が自由に動けるコードを弾く、という考え方で当たるとスムーズでしょう。
三度概念がない和音の世界がある、と考えて頂ければ良いかなと思います。
これを四度領域和音とするわけです。
展開部は、0:24からは、またE♭マイナーペンタのフレーズがきます。
ここのコードも
A7 |E7 |
とするのでしょうか?
A7sus4 |E7(#9) |
とかと少し厳密にするのでしょうか。
こうしたコードも良いとは思います。そこでもう一つ提案します。
Au4 |Eu4 |
です。つまりA7omit3、E7omit3という和音です。このomitで表現すると、いかにも三度が欠けた、中途半端な和音を使ってますよ、この音楽にはちょっとブルースが入ってて、三度が明確でない音楽ですよ、という解釈が含まれ、すこし認識が甘いのではないか?
という印象を持ってしまいます。
三度が曖昧な和音なのではなく、もともと三度の取り決めのない和音(必要のない領域にある和音=四度領域和音)というものを"設ける"んです。
(四度の和音はポピュラーな理論定型がないので、各位が自在に解釈してトライしているのが実情です。)
不定調性論は三度を持たない性質の領域を作り、通常の長三和音(u5)、短三和音(u5)と同様に、4度領域の長三和音(u4)、短三和音(u4)を作った、というわけです。
この概念により、五音階以下のブルースや、各種の民族音楽と七音階の音楽の融合された方法論を提案しているのが、教材の第六章です。
こんなカッコいい感覚的で野性的な曲をやたらと理屈っぽく語ってしまいました。
逆を云えば、厳密なクラシック音楽も野性味だけで聞くこともできる、ということになります。
三度のない(混合された)和音の存在を皆さんも独自に探ってみてください。