スティービー・ワンダーの不定調性進行分析
Overjoyed / Stevie Wonder
<スティービー・ワンダーレポートより展開>
事例104;Overjoyed(CDタイム 0:00)
イントロ
D♭6 C7 |BM7 C7 |D♭6 C7 |BM7 B♭7 |
Aメロ
E♭ |Cm7 |Fm7 |B♭7 |
E♭M7 |Cm7 |Dm7 |G7 |
CM7 |GM7 |Cm7 F7 |B♭7 |×2
サビ
A♭M7 |Gm7(E♭M7) |Fm7 B♭7 |B♭m7/D♭ C7 |
B♭M7 |Am7 A♭7(13) |Fm7 |B♭7 |
サビ2
A♭M7 |Gm7(E♭M7) |Fm7 B♭7 |B♭m7/D♭ C7 |
B♭M7 |Am7 A♭7(13) |Fm7 |B♭7 |C7sus4 |C7 |
B♭M7 |Am7(FM7) |Gm7 C7 |Cm7/E♭ F7 |
CM7 |Bm7 B♭7(13) |Gm7 |C7 |
FM7 |F#M7 FM7|EM7 |E7 B♭7 |
E♭M7 |
ここまでスティービーの全曲のコードの骨格構造を眺めきたうえで、改めてこの名曲を今みてみると、これまでの和声の流れが十分に咀嚼されたうえで生まれた必然的な楽曲のように感じます。
キーはE♭で、彼が、黒鍵を活用して鍵盤を見つける、という目的にふさわしいキー。
I-VI-II-Vときて、7-8小節で変化。
VIIm7-III7と経て、VIM7へと進行。
いわゆる平行短調の同主長調の主和音への進行で、こうした陽転はこれまでも彼の得意としてきた手法ですね。
Cm7→Dm7への変化感がドラマチック。
ここからがまたダイナミックです。
CM7をIV7扱いして、IM7-IM7への帰着感を持ってきて、そのあとIVM7→IVm7への変化感をそのまま、元のキーのII-Vにしているのである。
これは天才的なつじつま合わせ(言葉が悪いけど)を一つの特技とするスティービーのこれまでの進行パターンから見てもピカイチの上手さですね。文学的ですらあります。
そこからサビへは、IVM7よりスタートする流れを作ろうとしています。
B♭7-B♭m7(V7-Vm7)も変則技で、本来のキーのV7をサブドミナントマイナー進行させるがごとく用いています。
これもコード機能に縛られていたら出てこない発想。
そして1サビの最後のA♭7 |Fm7 |B♭7 。
緻密にA♭7まで来て、いきなり元キーのII-Vを用います。
それもメロディがうまく二つのコードをつないでいるので、つながっているように感じますが、これを皆さんアカペラで歌ってみてください。
ちょっとむずいと思います。音楽知ってないとできない節回しです。
A♭7 |Gm7 |C7 |という感じで流れてしまう方もおられるのではないでしょうか。
曲後半の転調も、テクニカルというよりは、歌唱の正確さが活かされた構成になっています。
ブラックミュージックでここまでコードに凝っている有名なポップソングもありません。
コード進行だけなく、歌のメッセージといい、バラードの雰囲気といい、アレンジといい、このキャリアの時点で、唯一無二の魅力が120%発揮された作品になっていますね。
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