2018.1.29⇨2020.6.23更新
ビートルズの不定調性コード進行研究
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ほぼ全曲ビートルズのコード進行不定調性考察「The Beatles」3(2018)
マーサ・マイ・ディア - Martha My Dear
特徴的なのは変拍子の多用です。このアルバムは"サージェントペパーズ~"の成功をビートルズ的に解釈した結果なのではないでしょうか?
"サージェント~"で自分たちのコンセプトを見つけ、ホワイトアルバムではすでにそれを破り、新しい方向に向かい始めている、そんな印象も受けます。
Aメロ
3/4Eb |2/4Eb D |4/4Gm Gm/F C7 |F |
Bb Abadd9 |Bb7 Abadd9 |Bb7 Abadd9 |Bb Bb7 |
Bメロ
Dm7 |Gm9 |F |F |
Csus4 C |Csus4 C A7 |Dm7 |Gm9 |
Cメロ
2/4Dm7 |4/4 G9 |2/4Dm7 |4/4 G9 |
BbM7/C |BbM7 |Dm7 |Gm9 |~
すごい進行です。
なんだかブレッカーブラザーズの曲か?と思うような進行です。
不定調性のチャートをまた出しておきます。
Cレベル3周辺コード
C-Dm-Em-F-G-Am
CM7-Dm7-Em7-FM7-7-Am7-Bm7(b5)
Csus4-Dsus4-Esus4 =Gsus4-Asus4
C7-D7-E7-F7-G7-A7-B7
Cm-Eb-Fm-Gm-Ab-Bb
Cm7-Dm7(b5)-EbM7-Fm7-Gm7-AbM7-Bb7
さらにadd9もビートルズはよく使うのでそれらも加えてみましょう。
Cadd9-Dmadd9-Ebadd9-Fadd9-Fmadd9-Gadd9-Abadd9-Amadd9-Bbadd9
これらを出てくるがままにコードリックと組み合わせます。
II-V的な感じでつなげると、
例;
CM7 B7 |Em Ebadd9 |AbM7 |G7 A7 |
Dmadd9 |EbM7 |FM7 |AbM7 |
Dm7(b5) |Esus4 Gsus4 |CM7 |F G |
というのが不定調性的なアレンジです。
これはチャートから何となく拾いながら流れを構成したに過ぎません。
あとは慣れです。どんなコードからどんなコードに流れた時に、どんな印象になるか、その音楽的意味をしっかり把握しながら、自分自身を説得できる不定調性な流れを構築してみてください。
コツなど考える必要はありません。
毎日16小節のコード進行を1曲メロディをつけて作ってください。作曲に向いている人は、一月30曲もやれば、その中で10曲は1コーラスできてしまうでしょう。
もしこの作業のために楽器の練習が必要なら教室に通ってください。DAWでやりたいならYoutubeで勉強してコードとメロディを並べてください。
アイム・ソー・タイアード - I'm So Tired
いかにもジョン的な不定調性。
主題
A G#7 |D E |A F#m |D E |
A Eaug |2/4F#m |Dm |
また2/4!
この最初の部分、
例;
A F#m |D E |A F#m |D E |
でもいいですよね。別に。でもこのG#7が来るからこそ、そのあとの「普通な」A-F#m-D-Eが映えるんだとおもいます。
不定調性進行と、調的進行をうまく組み合わせる、これも不定調性の楽しみの一つです。
G#7は機能和声で云ったら何ですか?裏サブドミナントブルージーIV7th?
いやいや、単にAのあとにG#を弾いたら、とてもイイ感じになった、だけかもしれませんよ?どっちの感覚であなたが音楽を作りたいか、です。選択してください。どっちがいいよ、とここではあなたに対して指定はできません。
ギターだったら、同じフォームでスライドするだけです。
Eaugはジョンの好きなコード、
「augの展開感」
「augのじりじりした感じ」
そうした印象を知っていたであろうジョンが用いる、必殺技ですね。
Julia
ビートルズの曲の中でもとりわけコード進行が美しい楽曲、という印象があります。
この曲の進行は夜やBlack color(黒色)をイメージさせてくれて、独特で怪しげでいいなぁ、と思ったものです。何かよからぬものを呼んで召喚でもされてしまう曲なんじゃないか、なんて子供心に感じました。
D | Bm7 | F#m7 |F#m7 |
D | Bm7 | F#m7 |A7 |
D | Bm7 | Am |Am7 |
B7 | B7 | Gm7(9) |Gm7 |
D | Bm7 | F#m7 |A7 |
==展開部
C#m |C#m | D |D |
Bm7 |Bm6 |F#m7(9) |F#m6 |F#m7(b6) |F#m7 |
Dをセンターコードとして作っていきます。
Am7はVmです。これはドミナントマイナーですね。しかもVm-Vm7という二つ用いています。繊細な感じです。
また、Gm7(9)-Gm7も同じように一つのコードでじりじりと動きます。この辺も私は「夜の感じ」を覚えます。メロディに乗っている9thを上手く際立たせます。Gmは IVmです。
B7はVI7ですが、Am7のあとなのでIII7のように響きます(III7感)。そこからGmに向かいます。この辺りも機能性というよりも、脈絡で紡いでいった方が出てくる展開なのではないかと思います。
展開部のC#m-Dはフリジアン的な進行です。C#マイナーキーに転調してしまったような印象も受けますね。Dを聴いた時C#m7がVIIm7に感じる人もあるでしょう。
次のBm6の6th音がF#mの9thに引き継がれて、暗いクリシェを呼び込みます。
ここはゾクゾクっとします。怖い感じ。夜の風が急に背筋を脅かす、悪心を感じます。わかります?
F#m7はDメジャーキーのIIIm7ですから、ピヴォットコード(二つのキーのダイアトニックコードに共通するコード)になりDに戻れます。
センターコードをDと定め、それを作曲の起点として、あとは雰囲気の赴くままコードを連鎖し、またDに戻ればよい、というルールでの作曲できます。メジャーなのかマイナーなのか分からない雰囲気はビートルズの楽曲の一つの特徴でもあると思います。
何一つ音楽理論はいりません。
知ってるコードを並べて、その印象に合うメロディと歌詞を書くだけです。
それができるなら、音楽理論の勉強などプロになってでもできますから(むしろその方がまわりも積極的に助けてくれます)、今はいち早くこの作曲の脳回路の回線を太くしてください。たくさん作りまくってください。