ビートルズの不定調性コード進行研究
ほぼ全曲ビートルズのコード進行不定調性考察「Magical Mystery Tour」3
4、ブルー・ジェイ・ウェイ - Blue Jay Way
ジョージの曲。
アルバムコンセプトにはぴったりの不思議な曲ですね。
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C |Cdim |C |Cdim |
Cdim |% |% |C |
という導入部があり、そのあとは
C(的な空間)一発で続きます。
これが繰り返される感じです。怪しいですね。
歌詞はというと、約束した相手が来ないジョージの待たされた感をひたすら歌った、何とも云えないこの雰囲気は、この頃のジョージの作品の特徴です。
ポールやジョンのようにコードにこだわる、というよりもサウンドや文字にできない感じの音楽の雰囲気を求めていたのかもしれません。
こういう発想が二人の才能の隙間を突く個性、という主張だったのでしょうか。
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5、ハロー・グッドバイ - Hello Goodbye
この曲もビートルコードの絶妙さが出ている曲です。
サビの部分です。
C C/B |Am Am/G |F Ab |
C C/B |Am Am/G |F Bb |C |
はろーはろー!というところですね。メロディは全く同じなのですが、AbとBbが使い分けられています。
この進行感、それぞれどんなふうに感じますか?
これは私の印象ですが、
Abのときは、ぐんと伸び上がる感じ、Bbのときは説得する感じ、という流れでちゃんと上がって戻る、展開して戻る、というような楽曲の流れの雰囲気を作っていると思うのです。
ビートルコードが持つ雰囲気の機微を完全に使いこなしている感があります。
これがビートルズが中心になって確立させた和声の新しい「脈絡」だと思います。
機能進行の理論的脈絡で音楽を無私に構築するのではなく、音楽がもたらす「感覚」を自分で判断し、そこにしかないストーリーを作る感じです。
これが「機能に変わるもの」「伝統的ロック進行に変わる何か新しいもの」を、ジャズではなく、ポップス、ロックで試みたことによって、より多くの人がこうした和声感を覚え、理解し、音楽的脈絡の構成方法が拡大していったのだと思います。
これ、たとえば、
例1
C C/B |Am Am/G |F Bb |
C C/B |Am Am/G |F Bb |C |
や
例2
C C/B |Am Am/G |F Ab |
C C/B |Am Am/G |F Ab |C |
で弾いてみてください。
"二回フレーズを繰り返すときはコードを変えてみる"
これはある意味鉄則です。
あまり変わらない変え方ではポップスになりません。
Dm7-G7-CM7をFM7-G7-CM7に変えてもなんだそれ、って感じでしょ?
といってニュアンスがまるで違う変え方でもいけません。
Dm7-G7-CM7をDm7-Bb7-CM7に変えても「どういう脈絡?」っとなってしまうかもしれません(成立する場合もあります、中心軸システムを使う人なら、G7とBb7は同じドミナントだと豪語されるかもしれません、ジャズ理論ではサブドミナントマイナーです)。
ではどうやって、その脈絡の関連性や類似性を判断できるようにするか、というと、やはり個人の感性をどのように鍛え上げていくか、にかかっているわけです。
「私自身はこれこれこうだからこう思う!」
って発信しなくてもいいですから、思える事、判断できること、洗濯できること、創造できること、そうした判断を信じられること、それに裏切られてもその理由を把握できること、そういった感情の使い方がしっかりできるように、日ごろの生活からしっかり構築していく、わけですね。それが"実践的音楽理論"そのものだったりするわけです。
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