2018.2.4→2020.6.14更新c
ビートルズの不定調性コード進行研究
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ほぼ全曲ビートルズのコード進行不定調性考察「Magical Mystery Tour」3
ブルー・ジェイ・ウェイ - Blue Jay Way
ジョージの曲。
アルバムコンセプトにはぴったりの不思議な曲ですね。
C |Cdim |C |Cdim |
Cdim |% |% |C |
という導入部があり、そのあとは
C(的な空間)一発で続きます。
これが繰り返される感じです。怪しいですね。
歌詞はというと、約束した相手が来ないジョージの待たされた感をひたすら歌った、何とも云えないこの雰囲気は、この頃のジョージの作品の特徴です。
ジョージはどのくらいポールやジョンの才能と競おうと思っていたのでしょう。ポールやジョンとは少し違う実験音楽観を出していますね。
ハロー・グッドバイ - Hello Goodbye
この曲もビートルコードの絶妙さが出ている曲です。
サビの部分です。
C C/B |Am Am/G |F Ab |
C C/B |Am Am/G |F Bb |C |
はろーはろー!というところですね。メロディは全く同じなのですが、AbとBbが使い分けられています。
この進行感、それぞれどんなふうに感じますか?
これは私の印象ですが、
Abのときは、ぐんと伸び上がる感じ、Bbのときは説得する感じ、という流れでちゃんと上がって戻る、展開して戻る、というような楽曲の流れの雰囲気を作っていると思うのです。
ビートルコードが持つ雰囲気の機微を完全に使いこなしている感があります。
これがビートルズが中心になって確立させた和声の新しい「脈絡」だと思います。
機能進行の理論的脈絡で音楽を無私に構築するのではなく、音楽がもたらす「感覚」を自分で判断し、そこにしかないストーリーを作る感じです。
これが「機能に変わるもの」「伝統的ロック進行に変わる何か新しいもの」を、ジャズではなく、ポップス、ロックで試みたことによって、人々はこうした和声感を覚え、理解し、音楽的脈絡の構成方法が拡大していったのだと思います。
これにより、音楽は伝統を守らなければ新しいものは生まれない、というタブーは破られました。自己の感覚を信じることでそれまでにない音楽の進行感を生み出す可能性があることを世に示したのです。
これ、たとえば、
例1
C C/B |Am Am/G |F Bb |
C C/B |Am Am/G |F Bb |C |
や
例2
C C/B |Am Am/G |F Ab |
C C/B |Am Am/G |F Ab |C |
で弾いてみてください。
"二回フレーズを繰り返すときはコードを変えてみる"
これはある意味鉄則です。
あまり変化の大きくない変え方ではポップスになりません。
Dm7-G7-CM7をFM7-G7-CM7に変えてもなんだそれ、って感じでしょ?
といってニュアンスがまるで違う変え方でもいけません。
Dm7-G7-CM7をDm7-Bb7-CM7に変えても「どういう脈絡?」っとなってしまうかもしれません(成立する場合もあります、中心軸システムを使う人なら、G7とBb7は同じドミナントだと豪語されるかもしれません、ジャズ理論ではサブドミナントマイナーです)。
ではどうやって、その脈絡の関連性や類似性を判断できるようにするか、というと、やはり個人の感性をどのように鍛え上げていくか、にかかっているわけです。
「私自身はこれこれこうだからこう思う!」
って発信しなくてもいいですから、思える事、判断できること、選択できること、創造できること、そうした判断を信じられること、それに裏切られてもその理由を把握できること、そういった感情の使い方がしっかりできるように、日ごろの生活からしっかり構築していく、わけですね。それが"実践的音楽理論"そのものだったりするわけです。
そういうやり方は学校の先生は教えません(ここで書いたから、いずれ教えるようになるでしょう)。
凄く勇気が要ります。
それまで教科書の内容を書くことで評価されていた人間が、いきなり自分の中にあるものが全て、と思えるでしょうか?それも慣れです。毎日人前で裸になって家うと、裸になることを恐れなくなります。人生なんて単純に"慣れ"だけなんです。
驚きを求めて常に"慣れない"ところに進む人はすごいと思います。
若い方は学生のうちに「自分の感覚によって行動する(人前で自分を曝け出せる)」ことをマスターしていってください。それがビートルズが教えてくれたことです。