Giant Stepsの機能和声分析
B D7 | G B♭7 | E♭ | Am7 D7 |
G B♭7 | E♭ G♭7 |B | Fm7 B♭7 |
E♭ | Am7 D7 | G | C♯m7 F♯7 |
B |Fm7 B♭7 |E♭ |C♯m7 F♯7 |
まずUSTに該当させてまとめます。
D7(b9,13) | G B♭7 | E♭ | Am7 D7 |
B♭7(b9,13) | E♭ G♭7 |B | Fm7 B♭7 |
E♭ | Am7 D7 | G | C♯m7 F♯7 |
B |Fm7 B♭7 |E♭ |C♯m7 F♯7 |
これで機能和声的な分類はできちゃいますね。
D7+B=D7(b9,13)です。
コルトレーンは普段からUSTをアルペジオにしてシーツオブサウンド(単音で和音の流れを創ろうとするスピードプレイ)を作ってます(と、私は習った)。
さらにこの曲はII-Vがあるのでキー別に分けてしまいましょう。
D7(b9,13)はミクソリディアンb2というハーモニックメジャースケールのモードで弾くことができます。
d,e♭,f#,g,a,b,c,d
です。
Bb7(b9,13)も同様です。
b♭,c♭,d,e♭,f,g,a♭,b♭
です。あとは通例のドミナントモーションです。
(注;G+Bb7も同様なことができます。どこまでやるかはあなた次第)
II-Vについて
C | F# |
という二つのコードを機能和声的につなげようと思ったら、
C Dm7 G7| F# |
とればG7→F#が裏コード(サブスティテュートコード)としてつながります。
Giant Stepsでは新たな調と調をII-Vで接続する、というジャズの暗黙の手法を用いてコーラスの後半はII-Vでひたすら接続しています。
後半のE♭-Am7もUST分解進行解釈してみます。
Eb+Am7=A7(b9,#9,#11)です。また、
Eb+C#m7=Eb7(b9,b13)ですから、すると全体は
B7(b9,#9) | B♭7(b9,13) |A7(b9,#9,#11) | A7(b9,#9,#11) D7 |
G7(b9,#9) |G♭7(b9,13) |F7(b9,#9,#11) | F7(b9,#9,#11) B♭7 |
A7(b9,#9,#11) |A7(b9,#9,#11) D7 | C#7(b9,#9,#11) | C#7(b9,#9,#11) F♯7 |
F7(b9,#9,#11) |F7(b9,#9,#11) B♭7 |Eb7(b9,b13) |Eb7(b9,b13) F♯7 |
となり、簡略表記すると、
B7 | B♭7 |A7 | A7 D7 |
G7 |G♭7 |F7 | F7 B♭7 |
A7 |A7 D7 | C#7 | C#7 F♯7 |
F7 |F7 B♭7 |Eb7 |Eb7 F♯7 |
です。全体的に裏コードに置き換えられます。これでも同曲は演奏できますのでやってみてください。
<バリエーション1>
B7 | B♭7 |A7 | A7 Ab7 |
G7 |G♭7 |F7 | F7 E7 |
Eb7 |Eb7 D7 | C#7 | C#7 C7 |
B7 |B7 B♭7 |Eb7 |Eb7 B7 |
不格好ですが、この曲は半音で7th下降、という形を無理矢理構成することができます。
これはジャズ理論を最大限に駆使した「過解釈なアナライズ」となると思います。
ジャズ理論の自在性はこういうところにあり、またこの自在性がジャズ理論の限界を示唆するようになりました。何でも解釈が可能になってしまうからです。
なんでもいいなら、元の曲のまま弾くのが一番聞き手に伝わるじゃないか。
なんでもいいなら、誰が適当に間違ったことをしても正当性を主張できると言うことじゃないか。
そういうのも時代と文化の流れでしょう。
私個人は、正当性を外部に求めず、自分が良いと思ったものが自分にしか通じないところで音楽を行う、と言うやり方を選択しました。
それが不定調性論です。
同時に後期のコルトレーンのように、我が道を行くことで社会的価値を削がれていく、ことの意義のほうに少し親近感が持てるようにもなりました。
もちろん同じレベルで語れる話ではないのですが。
またこちらの講座等で私がリディアンクロマチックコンセプト(LCC)を学んだ際に面白かった視点が、
B D7 | G B♭7 | E♭ | Am7 D7 |
G B♭7 | E♭ G♭7 |B | Fm7 B♭7 |
E♭ | Am7 D7 | G | C♯m7 F♯7 |
B |Fm7 B♭7 |E♭ |C♯m7 F♯7 |
とTonic Starion(LCC用語=ケーデンスやメロディが示唆する重力の中心=機能和声における主音/主和音の根音等)をあらかじめ振り分けることで、その構造と移転の方向を明らかにする分析方法において、
前半と後半が中心の動きがちょうど逆方向に動いている、という分析は勉強になりました。LCCは調性ではなく、LCCが定めた重力の動きを明らかにすることで、難解な曲を機能和声ではないやり方で、その流れを明確に表記することができます。
こうした理知的なスタンスが面白いと感じた方は、ぜひライセンサーから受講してみてください。