たまの不定調性進行分析
どんぶらこ / たま
https://www.youtube.com/watch?v=GS96QqAyIEQ
1990年のデビューアルバム「さんだる」からです。オリコン2位!たま現象です。
この曲は、
E |G |A |A |
これだけです。
E=I
G=IIIb
A=IV
となります。
では、なぜEとGとAが連続すると、こういう雰囲気を作るのでしょうか。
不定調性論では、この曲のような手法は、u5和声単位連鎖による作曲技法、という形式にしています。手法としての地位を確立しました。
平たく言うと同じコードネームで音楽を作るという意味だけなのですが、ジャズ理論ではコンスタントストラクチャーなどと言われます。
例えば
C△-C#△-D△-D#△-E△-F△-F#△-G△-G#△-A△-A#△-B△
という12のメジャーコードを三つ選んで自由に和声連鎖を作ってみなさい、という課題を作ることができます。
最初の和音をC△とすると、それぞれどんなふうに進むか、自分の音楽的経験を通じて自由に作ってみてください。ビートルズが得意としていた曲想になります。
もちろんメジャーコードではなく、マイナーコードやm7、7thコードなどを使っても同じことができます。
たとえば、
C△-Bb△-F#△-F#△
というのはどうでしょう。
このような連鎖を不定調性論では「和声旋律」といいます。
機能に依って連鎖しているのではなく、作者の響きの印象の連鎖によってつなげたものなので、メロディを作るように和声を作っている、というイメージです。音楽理論を知らなくてもコードさえ知っていればできてしまう手法です。
この四つが繋がったとき、どんな印象を感じますか?
不穏な感じ?
微妙?
涼しい秋の朝?
いろいろ感じると思います。
何かクリエイティブに感じる人は、その着想から言葉が浮かんだり、メロディが浮かんだりして曲ができてしまうと思います。
その感覚と過程に不定調性論は名前をつけたわけです。
コードの連鎖の印象が「言語化」「ストーリー化」して聴こえてくると、そのストーリーに合った歌詞やメロディを乗せていけば良いわけです。
その「印象」が生まれるかどうかをトレーニングしていきます。もちろんこんなこといちいち説明しなくても即興的にできる人が音楽を仕事にしています。
そんなこと簡単にできる人たちが集まっているから、たま、のようにそれをさらに発展させてコンセプトを作ることができます。
あとは経験です。日頃から、16小節程度の楽曲をいくつも作っていれば、和声の進行印象は様々にイメージできるようになると思います。
結局作りまくってその感覚感を肌に染み込ませるしかない、です。
そうやって選ばれたE |G |A |A |という進行が持つ印象も、経験が豊富になるにつれて変わっていきます。
コード進行は楽曲の様々な位置で「異なって響き」ます。これを感じ取りながら、楽曲を見ていくと、「コード三つのつまらない曲」にはならないと思います。
しかしこの、繰り返されることで圧倒的な心地よい違和感で圧迫してくる感じ、すごいですよね。このバンドの独特の表現手法の一つだと思います。
「圧迫」。は表現になる。
たとえご本人たちが「そんなこと考えてない」といったとしても、作品というのは長く残すことで意味や意義が多くの人の中で熟成されるのが音楽の良いところです(それはユーミンレポートでも書いてます)。そしてそれは文化の継承なので、作曲家本人というより、我々庶民の仕事だと思います。SNS社会になって、そういう地に足がついた個人でしこしこやる文化の継承行為よりも、人を批判したり、弄んだりすることを楽しむようになってしまいましたね。
たま情報提供;マーサ
シンガーソングライター マーサのブログ♪