音楽教育活動奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と...旧音楽教室運営奮闘記。

短調ではなく哀調。秋桜/さだまさし

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人間、長く生き始めるとフォークソングがすごく好きになります。

いや、多分、フォークシンガーの存在が好きになるんだと思います。 

その中でさだまさしというアーティストは多分フォークソングというのものを変状させてなんだかあと100年くらい先の人でないとその存在意義が理解できないような存在になってしまっていると思います。その音楽も。

 

(ライブ版)秋桜 - YouTube


25歳前?(ぐらい)のときに書かれたそうで。


リンク先ライブ版youtubeのギターのイントロ。まるで田舎に置いてきた純日本人のにおいが亡霊のように自分の中に蘇るような。

振り払おうとするけど、難しいものです。あきらめて素直になって、これを聴くと、すごく肩の力が抜けて。

 

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このイントロ、曲のキーがCmですから、
Cm7(9) | AbM7(b5) |(G7)が繰り返されます。
匂いのする音の連なり。なんというか、基本中の基本。

幸せと不安が二つ存在していて、自分が幸せになる代わりに母が寂しい思いをする恐怖。
 
メロディの音域はサビでオクターブg3-g4とジャンプする難易度。
  
ユーミンレポートの折、歌詞との関連性を細かく考えました。
関連性、というのは、歌詞が持っている言葉の語感や印象などが音楽と一緒に頭に思い浮かべさせるもの・こと、という意味です。

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秋の桜。紅白の祝い事をにじませるように桃色となり、めでたいはずの結婚が寂しさ。
花言葉は、「真心、少女の純真」なのだそう。


ユーミンの歌詞に
「少女たちは雨に打たれるコスモスのように、手を振ってる」
というのがあり、これも怖い表現と感じました。

 

人は花ではないけど、花のように脆いところもあります。
コスモスは外来の花。
 
「淡紅の秋桜が秋の日の 何気ない陽溜まりに揺れている
此頃 涙脆くなった母が 庭先でひとつ咳をする」

母の音、声を聞くと、自分がかつて子供であったことを思い出す。

母は年老いてゆくと、どんどん小さくなります。

人は家族に理想的な人間であって欲しいと思いすぎて、互いに余計なことを言い合います。お互いの声を聞くと、本当にイライラした思い出と後々考えると母の娘の言う通りだった、なんて思い出すこともある声。

親子の間に響く声は、音だけで成り立ってしまうような存在ですよね。

 


そんなに急がず、春まで待って嫁げばいいものを、なぜ、これから体にこたえる冬を前に母を残して嫁いでいくのか。

それとも、そうやってずるずる何年か春を越してしまったのか。

「こんな小春日和の穏やかな日は あなたの優しさが浸みて来る
明日嫁ぐ私に 苦労はしても 笑い話に時が変えるよ
心配いらないと 笑った」

 

すこしだけ暖かい日は気持ちも穏やかだから、母は体が楽なのでしょう。

 

コードは、
Cm  |Fm  |Bb  |Eb |と進んでいきます。

時に調を飛び出してしまいがちな進行だけど、ここではCmという母の元に戻ってきます。

 
「心配いらないと 笑った」
のところは、Ab  G  Cmではなく、Ab  Gm  Cm
となっておりドミナントではありません。


ドミナント7thでは「笑っていない」からでしょう。

でも笑ったなら
Ab  Gm C のはず・・・でもそういう笑いではないのだから、Cmがしっくりきます。

 

こういうあたりを歌とかしと表現だけでやるから、フォークシンガーの存在はたまらなくなります。なにせギター一本ですからね。

ただスリーコードを使い回すだけではなく、音楽全て写す心象が日本人の普遍的(?)な心象にピッタりはまってくる、それができるのがフォークシンガーだと思います。

コードは簡単でも、世界を思いやる心の音楽力に1ミリも追いつけません。

 

  
人生の調べは、長調ではないのが普通。

ただ自分に深みがなかった。守るものが出てくると、これをエネルギーにするから頑張れるんだと思えるようになります。

短調は悲しくなんかない。

この人が作る短調の調べに名前を付けるなら「哀調」なんてどうでしょう。

 

日本人にとってのフォークソングの調性は、明るいだけでも、悲しだけでもない、新たな調性を発明しちゃってるんじゃないですか?

この曲についてこの記事を見ますと、アンサーソング的な作品があり、

秋の虹という歌詞を見ますと、とてもこの母親が穏やかなのが印象的です。

歌詞の中のマルメロの花言葉は「魅惑、幸福」。

 

氏のもう一つの曲調を聴くと、長調が長調ではなくこちらは「愛調」かなと、思います。温かい感じ、「温調」でも良いです。絶対に"ただの"長調ではない。

戦前の文献には、「明調」「暗調」「哀調」「喜調」と言う表記が確かにあったのだ、と菊池成孔氏は東大講義で述べています(p24)。

さだまさし×佐渡裕 「風に立つライオン」 - YouTube

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よく、本当か嘘か「ノリで10分ぐらいで作った」みたいな話を聞きます。

それでも何十年も歌われる。。なんとも不思議です。

そこにいろんな価値を後輩が当てていきますし、本人も価値を再創造させて行って。

今のアイドル曲だって、きっと心に沁みる曲になるんだと思います。少なくともリアルタイムで聞いている人たちにとっては。

私はこの時の10分を「縦の時間を含んだ10分...」とか表現します。

縦の時間とは、いってみれば私たちがイメージでしか認識できない膨大なわたしたちとは別の時空にある時間を想定して述べた仮想の概念です。

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作ったのは10分でも膨大なネルギーが注がれる結果になったから、まだ私たちはこの曲を消費鑑賞しきれていません。


 
あとひとつ、さださんの「う」行の音になぜか胸を締め付けられます。どこかクラシック音楽に通じる構造美。
オーケストラでアレンジしてやっと曲が引き立つわけだ、、、。
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当時の『二百三高地』映画のサントラがベストですけどね。

ボーイソプラノの独特の質感が凄すぎて泣けます。そして夏目雅子が綺麗すぎるやつ。

 


あと、コンサートに行こう笑!MC(も)最高。

 

さだまさしコンサート情報。

https://www.sada.co.jp/concert.html