音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

クリシェの多用、クオリアの活用についての問題提起〜スティービー・ワンダー楽曲(コード進行)研究レポート7-2

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事例22 Respect (CDタイム 0:48-) 

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Aメロ

G  |F  |G  |F  |G  |F  |C  |F  |C  |F  |

間奏

F#m  |F#m  |B  |B  |F#m  |F#m  |G  |G  |

Aメロ

G  |F  |G  |F  |G  |F  |C  |F  |C  |F  |〜

 

オーティス・レディングの作品。

一風脈絡のない流れがとてもスリリング。

こうした楽曲を既存理論で解説すると、どのような体になるでしょう。

できない、ことはないけど、なぜこのような転調にしたか、ということを考えると曲の勢いが分析で亡くなってしまうのではないか感がすごいです。

これはビートルズのコード展開を機能分析した時にも起きました。

 

"絶対ジョンはそんなこと考えていないだろう"感

 

です。

だから学習時の一時期は、一般論と、不定調性的な個人的立場を双方活用すると、良いと私は思います。

 

この間奏のF#mはエリック・クラプトンの名曲“Layla”には影響を及ぼしたでしょうか。

 

またAメロをCメジャーキーと考えると、V-IVを繰り返す感じが前曲に似てます。

そして間奏最後もF#m→GはフリジアンのIm→II♭の進行感に似てます。

F→F#mは音色の変化は、一音を軸に下部がせり上がる、波乗りをしている時に地面である海面が急に盛り上がってくるような感覚を覚えました。

盲目のスティービーにとって「上下する」という動きはどのような感覚なんでしょう。エレベーターに乗った時に感じる重力の感じは、視力のない人にとってどのような意味をもつものなのでしょう。

   

事例23 Baby Don't You Do It

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曲全体を通してB♭一発の楽曲

これも音楽的なクオリアによる旋律的指向性の活用曲と言えます。

コードの変化がなくても、旋律の変化に文章的な起承転結を設けることで、セクションを積み重ねていく作り方。

モータウンチームの作品でマーヴィン・ゲイの歌唱やThe Whoなどのカバーも有名な作品。

 

事例24 I Pity The Fool

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Fブルース(6/8ブルース)

F7   |F7 G♭7(9) |F7 |F7 |

B♭7   |B♭7  |F7  |F7 G♭7(9)  |〜

レイ・チャールズによるスローブルース。

ブルースはいかに通常のブルースにその曲だけの変化をつけるかが非常に大切です。

この曲では、II♭7が効果的に挿入されてます。

半音上のコードは、揺り戻し効果、木枯らしに擦れる感じ、サビ臭いにおいなどを感じる、など様々なクオリアを個人に惹き起こすでしょう。

"こんなこと感じたって、別にどうということはない"

などと思ってしまうかも、ですが、あなたが楽曲を聴き、感じたことはとっても大事。

 

同曲を聴くと、大きなスイングによるレイの体の揺れを感じ、彼の音楽でのパフォーマンスのタイミングの取り方を彷彿とさせる和音を感じます。

スティービーはチャールズの音楽が理解しやすかったかな?

実に意識の歯車がきっちりハマったような印象も受けました。

 

これでもかと打ち付けられるII♭は彼らにしかわからない「動きの概念」を持っているのかも、ですね。

 

事例25 Every Time I See You, I Go Wild! (CDタイム 0:16-)

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E♭m |F/E♭ |E/E♭ |E♭m |×4

A♭m |B♭/A♭ |E♭m E♭m/D♭ |A♭/C |

Bm  |Bm  |B |B♭7 |

Cm7(♭5) |F7  |EM7 |E♭m(または三度抜きのM7(9)かadd9的なメジャーさがある) |

Cm7(♭5) |F7  |EM7 |E♭m(または三度抜きのM7(9)かadd9的なメジャーさがある) |

=degree= Key=E♭m

Im |II/I |II♭/I |Im |×4

IVm |V/IV |Im Im/VII♭ |IV/VI |

VI♭m  |VI♭m  |VI♭ |V7 |

VIm7(♭5) |II7  |II♭M7 |Im(?)|

VIm7(♭5) |II7  |II♭M7 |Im(?)|

スティービーのクレジットあり。

この曲では、

E♭m |F/E♭ |E/E♭ |E♭m |

A♭m |B♭/A♭ |E♭m E♭m/D♭ |A♭/C |

Bm  |Bm  |B |B♭7 |

Cm7(♭5) |F7  |EM7 |E♭m |

この四つの進行を組み合わせ。それぞれが異なる緊張感を放って連結してます。

クリシェ(常套句)はそれぞれの印象が強いため、二つ以上組み合わせれば組み合わせるほど、イメージが散漫になる危険もありますが、ここでは同質の緊張が保たれてます。

 

問題は、なぜこれほどまでにクリシェを多用するのだろうか、先の「安易とされるような処方」を彼は用いるのか。でした。

スティービーがクリシェを使っているから、クリシェを使う、という発想は、目が見えるのに盲導犬と一緒に歩くようなものと感じます。彼にはクリシェが必要だったんです。

 

このレポートなりの答えはすでに出していますので各ページご覧頂ければ幸いです。

その8

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