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音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

「Talking Book」に見るスティービー技法ビッグバンの予兆/研究レポート公開シリーズ14-2

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事例59Tuesday Heartbreak (CDタイム 0:10-)

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Aメロ

E♭ |Fm7 |Gm7 |A♭m7 D♭7 |

Gm7 G♭7 |Fm7  B♭7 |E♭ |E♭ |×2

=degree=

Aメロ  key=E♭

I |IIm7 |IIIm7 |IVm7 VII♭7 |

IIIm7 III♭7 |IIm7  V7 |I |I |×2

シンプルな順次進行、IVm7のII-Vを用いて転回。

この危なげな変化感が、私もそろそろ自然に感じるようになってきました。

 

事例60You've Got it Bad Girl (CDタイム 0:25-)

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Aメロ

F#m7   G#m7 |Am7   |Am7 Bm7 Am7 / Gm7 Am7 Gm7 |F#m7  |

Am7    |E7sus4/A  |Am    | E7sus4/A  |

F#m   G#m |Am   |Am Bm Am / Gm Am Gm |F#m  |

Am    | E7sus4/A  |Am    |A♭7  |

Bメロ

C#m7  |F#7(♭9)  |Bm7  |E7  |

C#m7  |F#7(♭9)  |Bm7  |

F#m7/  G#m7 |Am7  | F#m7/  G#m7 |Am7  | F#m7/  G#m7 |Am7  |

Am7  G#m7/A |F#m7 |F#m7  |

実験的な作品性を感じます。

m7によって全体のバランスがとられてます。

センターコードF#m7を起点に流れを作るような方法?かな。

 

この辺りの作品から、degreeによって表現されることが難しい曲想が増えてきます。

 

新しい響きにどのくらい自分の音楽性が乗るのか、ということにまるで挑戦しているような楽曲が増えています。

 

事例61Superstition 

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Intro(CDタイム 0:10-)

(使用音)e♭-d♭-a♭-b♭-g♭/e♭(E♭u4)

Aメロ(0:30-)

E♭u4

A'メロ(0:50-)

E♭m7

Bメロ(1:09-)

B♭u4 Bla3 |B♭u4 Ala3 |A♭u4 |A♭7(またはB♭7(♭13)) |

(市販楽譜上のBメロ和音)

(B♭7 B7(♭5) |B♭7 A7(♭) |A♭7 |)

間奏

E♭u4(13) |E♭u4(13) |E♭u4(13) |E♭u4(13) |

~Aメロ~A' メロ~Bメロ~間奏-Bメロ後半~Intro

~Aメロ~A'メロ~Bメロ~間奏

間奏2(3:41-)

E♭m7(9) E♭m7 |E♭m7(9) E♭u4 |

~間奏パターン~A'メロ~間奏2~fade out

 

同曲は音楽的クオリアによる旋律指向性という考え方によって作られる代表曲と言えます。 

調性的にはE♭マイナーと言えますが、旋律のリフが様々なパターンを作ることによって展開を構成されてます。

和声によって展開を作るのではなく、旋律パターンのリピートが繰り返す雰囲気をそれぞれ堆積することで、同じE♭マイナーに還元される流れがそれぞれのリフに彩られた雰囲気となってセクションを作っているスティービーの代表曲。

 

 

リフミュージックの代表的楽曲と言えよう。

 

上記のE♭u4とは不定調性論による和音表記であり、その構成音は、三度のない7thコード。つまり、

E♭u4=e♭、b♭、d♭

e♭をセンタートーンとした場合の三度が明確でない雰囲気をそのセクションが持っていることを表現してます。ブルージー楽曲にありがち。

 

従来の表記であれば、E♭7omit3という表記になろうが、これではE♭7を前提としてしまうため、アレンジの際にE♭m7という選択肢はいわば、楽譜の意図と異なる別のアレンジとなり、同様にE♭m7omit3としても同様な解釈が発生してしまうため、はじめから3度の存在しない和音形態を不定調性論は持ってます。

 

A'メロ

今度はm3rdが鳴るため、E♭m7と表記。

これも同様にE♭u4(♭3)などと表記してもOK。

ブルースの場合は、m3rdと三度が定められてもM3rdが混入してくる場合もあるためm7コードである、と限定しないほうが良いんです。

実際に原曲のこの部分ではm3rd音がM3rd音にチョーキングされたような音感を持ってます。場合によってはE♭7(#9)という表記ものほうが、説得力があるかも知れません。

 

そして和声的要素と、低音の動き、そして横へのリフの流れが持つ雰囲気が混然一体となっているのがBメロ。この曲のBメロは、単純そうで、いったい何のコードが使われているのか判断しづらい。といって、E♭7の曲だ、と思って演奏していると、このBメロの扱いに困るはず。

 

B♭u4 Bla3 |B♭u4 Ala3 |A♭u4 |A♭7(またはB♭7(♭13)) |

(市販楽譜では、B♭7 C♭7(♭5)|B♭7 A7(♭5) |A♭7  |となっていて、こちらの方が彼の考え方にも沿っているコード割り振りとなっていますが、ここでは異なるアプローチによる彼の潜在的コード感について考えていきます。)

 

B♭u4 は先の和音と同様に三度を持たない7thコード。

Bla3は不定調性論で水平領域和声単位と呼ばれているコードで、構成音は、

 

Bla3=b,f,g#

これはこの前の部分で鳴るB♭u4のベース音であるB♭が単純に半音上がって演奏され、結果的に縦割りした時の和声的解釈がBdim7のような構成になっている、というだけであり、それを不定調性論的に表現したに過ぎません。

 

機能和声的に考えればたしかにBdim7のような感じに聴こえなくもありません。

しかしそうした解釈の限定はアレンジの限定にもつながってしまうため、単純に構成音が変化した状態を表記していきます。

機能和声に押し込まない、という発想はとても重要です。

 

ここではベースがうねるようにB♭のまわりを動き、最後にA♭に落ち着き、ブレイクではベースが明確には打たれません、このA♭7のところはベース音が存在しないため、調性音楽的にはB♭7(♭13)とかB♭7(#9)のような空間に感じられます。

これも機能和声に毒された先入観。またhそれをスティービーも利用してます。

 

こうしたスポットは「ハーモナイズポイント(不定調性論)」ですが、明らかにドミナントの雰囲気があるものの、明確に打ち出されていない(ベースが鳴っていない、テンションが混じっている、機能感の融合したコードが鳴っている等)場合があります。

これはありきたりなドミナントコードを配置しない手法の一つです。

 

なお、市販楽譜のコードも下記に括弧つきで併記してます。

これをみると、7thコードの平行連鎖の中うねるような♭5thの使用がいかにもスティービーコード(ツアー中に先輩ミュージシャンから学んだ、というような表記が参考図書にあった、または大学在学中に学んだはずであろうが…)であり、これらの響きの感じを私が上記のように解釈している、ということです。

 

しかしこれだけでは、色彩がめくるめく変わるE♭u4の姿を正確には捉えられていません。ドライブするグルーブの堆積を肌で感じ、このE♭u4の変化に対する音楽的なクオリアを明確に持てる必要です。

 

これらのイメージが進めば、「裏側を突き上げるような和音」「S時カーブを急速に滑っていくようなリフ」という感覚で音楽を捉え、その感じたように演奏することが、結果的にスティービー・ワンダーとは違うあなた自身の同曲が完成するわけです。

難しいコードとグルーブが渾然一体になった最強のポップスです。

フュージョンではいくらでも難しくできますが、退屈してしまいます。

退屈させない、って才能だと思います。

 

 

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