音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

ビートルズも分析(?)できる「進行感作曲法」

terraxart動画リンクへ

 

 

動画にしたものを記事で改めて解説します。

大きく出てすみませんが、作曲する人なら多くの方が自然と行えているやり方についてです。作曲指南書にはっきりとした特定した方法論名が書かれていないので、誠に勝手ながら、上記で説明できる楽曲の作曲法を「進行感作曲法」として記事を作りました。

このビートルズの作曲法の話は理論と感覚が剥離する境目になっている話でもあると思います。

ビートルズの音楽的感覚は彼らがリアルタイムで聴いてきたレコードから生まれています。理論的な要素は、それらの音楽にあったので、ビートルズも西洋音楽和声っぽいことをしている、と感じるかもしれませんが、彼らは単にレコードから覚えたかっこよさを正確に吸収し、的確に応用していっただけです。

ビートルズ楽曲を分析するとき、機能和声のみでアプローチしてわかった気になるのは一義的すぎます。ぜひもう一つ二つ別のアプローチと兼用で、かつ「自分が納得できる考え方」で"理解を創造"してください。そしてその理解は、単に「あなたの創作に都合よく理解できる独自論である」としておくと、良し悪しはともかく都合だけは良いです。

究極には、ビートルズがすごいかどうかが問題ではなく、あなたがあなたの人生で音楽をどう表現するか、だけが問われることになります。

 

ここで述べるのも、そうした「もう一つのアプローチ」の一つだと考えています。

 

コードをいくつか覚えたら作曲してみよう。

と、言われたらあなたはどう思いますか?

 

小学生ぐらいから自分勝手にメロディを歌ったり、歌詞を適当に書いたり、ドラムを叩きまくってる、みたいなタイプの方でしたら、これもすぐできるかもしれません。

音楽の先生方もこの感覚はご存知のはずで、それぞれの先生方のやり方で教室では体系化されておられると思います。

 

ここでは簡単なコード、ギターならバレーを使わない

E,G,A,C,D,

を使って動画を作ってます。

 

この中からコードを二つ連続に1小節ずつ(4拍ずつ)弾いた時に、才覚ある人は「あ!」って思います。

・どこかで聞いたことある

・昨日聴いたあの曲だ

・なんか知らんけどカッコ良い

・あ、行ったことはないけどパリの空だ

・あ、なんか空飛びたい...

...etc

音をトリガーとして様々なイメージングができるタイプの人がいます。

そういう人はこの手の創作法が得意でしょう。

考え方を自分で想像できず、既存の誰かの分析法を用いいないと分析できないタイプ、の人は学術派なので、ぜひそのスキルを活かして、一般理論を使ってビートルズを解析して下さい。むしろ、その方がウケます。

 

私は子供の頃ワクワクすると便意が催されるタイプでした笑

それが感じられると、それが自分をワクワクさせるものだと知ることができました。

そしてトイレに行ったあとじっくり"その遊び"を楽しむ権利を得たように遊んでいました。そのワクワクは私にとって「それが自分にとって良いことを示している」サインなんです。

・音楽を聴いてみんながダメと言っても、自分だけなんかムラムラくる

・みんなあんまり好きじゃないけど、自分にとってはすごくいい感じを覚える

こういう嗜好判断をしてしまう人間が一般理論でまともに判断できるはずがありません。理論的に素晴らしくても、何の興奮もしないものを好きにはなれないからです。

人間の脳と腸はつながっていると後で知り、すごく納得しました。

好きではないこと、違和感があることを社会に従って続けていくと体が壊れてしまうタイプです。そういう人は、自分の体が壊れないような方法論を自分で作るしかないんです。この進行感作曲法も自分にとってとても有意義なものです。

 

この作業は理論でも感覚でもなく、脳が行っている作業であり、本人の意思すら飛び越えている場合もあります。和音を繋げていくと「あ、そこいい!!!」と思ってしまうのです。そこに性感帯がないとそうは思わないでしょう。逆にそう思ってしまう人に、「感じても我慢しなさい」といってくるのが機能和声です。そんなのただストレスになるだけです。

ビートルズは四人とも、そういった感覚優先なことを受け入れられるタイプだったので、ビートルズのやり方が出来上がり、彼らはそのやり方で世界を制しました。

 

この手の創造作業は、本人はただ感じるだけです。なぜいいのか、が問題ではありません。その理由を飛び越えて、「いい」と先に思ってしまうんです。

そしてそのいいと思った理由なんかどうでもよく、自分の能力を信じているから、良いと思った根拠など見つけぬうちにどんどん先に進みます。

 

とにかく「音現象の聴取」をトリガーとして、何か行動や思想を起こせるタイプの人は、その能力に全権限を与えてみてください。

料理をしたり、絵を描いたり、なんでもいいです。一日中やってても飽きない行為。

それが見つかった人は、幸福だと思います。

あっ、これやってみたい、ワクワクする感じを持ったなら、それです。

 

時折その、自分が心から喜べるものが、普段自分が持っている自分へのイメージとは全く異なる時もあります。ゲンナリするようなものを作ってしまうかもしれません。

「やっぱり勘だけで作るのはダメだよな」

なんて思うかもしれません。それはギターを弾き始めて一週間後に「こんなに弾けないんじゃやめた方がいいな」と思うようなものです。

そのやり方が好きなら、一生かけて磨いて鍛えていってください。それしか道がないと感じたなら。

また、自己の嗜好を知ることで、自分の性癖を知ることになり、自分の等級のようなものを知る結果になり、落胆したり、現実を受け入れられなかったりする人もありましょう。

そういう場合も焦らなくていいいので、少しずつ自分を受け入れ、自分ができることで世界に発信してください。

 

 

この素養があれば、コードをいくつも教える必要はなく、ワンコードでも音楽を作ることはできます。

しかし通例は1コードで聞くに耐える音楽を完成させるのは容易ではありません。

steely dan - show biz kids

Do Yourself A Favor

上記は1コードの楽曲です。

曲の骨格だけでなく、リズム感や展開、盛り上がりの作り方、などに高い音楽性が要求されます。

1コードではあまりに難度が高いので3コード程度で始めてみると容易にできるタイプもいらっしゃるでしょう。

 

5つコードを覚えて弾けるようにして、適当にコードを並べた時、理屈ではなく「お!この繋がりいいじゃん」と自発的に感じることができる人は1曲すぐできます。

ものその人がその和音の連鎖に何らかの「進行感」を感じ、情動や、欲求を感じ、それを音楽として認識し、何かをリアクション(弾き語り、ダンス、作曲...)できるなら、そこから彼彼女の能力を引き出してあげてください。

 

この作曲方法で根拠になるのは自身の確信だけです。

あなたの脳が、それをよし、と計算結果を出すこと、それが条件です。

「よくわからない」という確信しか持てないようであれば焦らずじっくり教科書を勉強しても良いでしょう。一方でその人の性格も重要でしょう。「人がなんて言おうと、俺はこれでいい」と思える性格の人はこの作曲法が向いています。

 

降ってくる直感に従って行動していると、時々自分でも驚くようなことが発想できたり、着想できたりします(直感時はモヤモヤとしかわからないが、どことなくそれをよし、とわかる自分がいる)。

 

指導者は学習者それぞれの直感を抑え込まないように、受講生以上に常に理解力と忍耐力が必要だと思います。

 

ビートルズメンバーはもれなくこの進行感作曲法で、音楽を即興的に作ってきました。

極めて限られた納期、ギリギリのところで戦い続けて培われた彼らの判断力は参考にならないかもしれませんが、理屈でないところで戦う、というレベルでやらなければならない時、このやり方は役に立つと思います。

若い時は、行き当たりばったりで、無計画に、しかしそこに責任を持ってしっかりと成果を出す方向に舵取りをする、という体験をなさることを期待します。それはビートルズが経験してきたものと同じ理不尽の中での戦いだからです。

 

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「ビートルズも分析できる」というのは語弊があるかもですが、私はそうした理解でだいぶビートルズのやろうとしたことが初めて理解できました。

彼らはこれまで聞いてきた「かっこいい」音楽を肌で覚えていて、自分が繰り出したものが、自分の過去の音楽体験とすり合わせてどのくらいの濃度のあるものかを瞬間的に判断し、曲に仕上げてきました(その吸収力、再現力、応用力がすごい)。

そこには音楽理論的判断があるのではなく、彼らのそれまでの音楽体験による正誤判定があるのみでした(もちろんアップルチームの音楽力があったればこそですが)。

私はそのやり方をもとに自分のやり方も作れました。だから私にはこの方法でビートルズの楽曲のありようを感じ、そこに悩まず、同様なスタンスで自分の制作作業に対して邁進できるようになりました。彼らがすごいのは結果論であり、自分がすごくないのも結果論でだ、そこには差などない。としたなら、黙って自分の創作を続けていくしか道はありません。

 

ビートルズの楽曲がどのような先例に基づいているかを調べることはできると思いますが、「なぜそれをその瞬間良しとしたのか」は当たり前ですが、永遠に謎です。

分析などできようはずがありません。それっぽい言葉で括るほうが危険です(←私)。

 

このような理由で彼らの曲を機能和声でのみ論じて分析しようとすれば、ビートルズのアイデンティティそのものすら破壊しか出ません。武士道を英国紳士の理屈で理解されたいわあんありませんか?二次的には面白いですが。

 

強いて「分析」的側面を述べるならば、彼らが良しとしたコード進行の感覚をあなたも追体験するように、その進行感を感じ、その感覚を自分なりに一時的に解釈し、その進行感をいつ使えばいいかをあなたの音楽の方法論として把握できることが出来たなら、それが進行感作曲法における分析と言えると思います。

 

そのあたりをどのように理解するかは分析者それぞれの価値観や考え方、信念が影響を及ぼす範囲ですので、私が定めることができません。

 

一方で皆さんのビートルズ分析もそれは皆様にとって正解であると思います。

最終的には、皆さんそれぞれのやり方を信じて、それを研ぎ澄ませてご自身なりの作品制作に当たる人生にしてください。

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