音楽教育活動奮闘記

不定調性論からの展開~音楽思考の玩具箱

進行感と融和変化〜不定調性論的進行理解の方法

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例えば、

C  |Eb   | F   |Ab  :|

再生できない場合ANA1.mp3

この進行を機能和声アナライズしてみてください。

 

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こういう感じに書くのがコードアナライズです。

機能和声とは、調を特定し、機能を明確にし、音階等を特定することで楽曲の形態分析を行うことができます。HTMLを読める人が、ソースを眺めて「なるほど」と思うような作業です。

 

作曲行為では、

何で最初にCを置くのか

なんでその次Ebにしたのか?

どういう気持ちでそのコードを置いたか?

そのコード進行はどういう気持ちになるべきか?

などを瞬時に把握して作ります。確信を持ってほぼ直感的に選びます。

「音楽的素養」とは、上記感覚に迷いなく取り組めるは難感覚を持つことを指します。

 

機能和声分析なら使えるコードが限られているので、組み合わせがだいたい決まりますが、ジャズや不定調性楽曲は、聞いたこともない和声進行で「なぜこれを選んだか」が明確になりづらく、コードアナライズだけでは動機がますます抽象性になり、説明が破綻するため私はこの方法論を作りました。

 

例えば、

Dm7   |G7   |Em7   |A7    :|

再生できない場合ANA3.mp3

G7→Em7は慣習でEm7はトニック(Iの代理)だから偽終止だ、と定着しています。この時機能和声論が機能しづらくなっていることに気がつくのです。本来社員しか入れない入り口なのに、「社員の家族だから」という理由で入れてしまう入り口になった、ということです。この時理論ではなくなったのです。

下記の場合はどうでしょう。Em7に9thは本来載せられません。

Dm7   |G7   |Em7(9)   |A7    |

Dm7  |G7  |Fm7(9)   |Bb7    |

AM7 ||

再生できない場合ANA42.mp3

最近はこういうのも浸透してきました。

「これはpivot使った転調だからOKだよ」とするとなんでも良くなってしまうのです。

そこで、一つ一つのコードの流れに既視感ならぬ「既聴感」が個人にどれだけあるか、を判断材料にする方法が生まれました。

Dm7   |G7   |

はわかりますね、この二つのコードの流れた時に感じる感覚を「II-V感」とここでは言っておきましょう。また、

A7  :|Dm7   |

と最初に戻るとこは、いわゆるドミナントモーションです。これが最も親しんだ「進行感」だと思います。

しかしこれを「解決感」と決めつけるのはやめましょう。

本当に解決感なら、

Dm7   |G7   |Em7(9)   |A7    |

Dm7  |G7  |〜

とA7後のDmがG7に進むのは違和感があるはずです。まるでハッピーエンドを迎えた映画の最後から、また問題が起き始めるようなものですから。「いらんやろこのシーン」となるはずです。でもG7に向かってもやはりまた新たな進行感を感じている筈です。

なぜでしょう?

それは「聞きなれた進行」を覚えるたびに人はそれを受け入れるからです。進行感の種類をたくさんもている人にとて新鮮なコード進行が少なくなってくるので時に奇抜さが増えます。

本当に純粋に解決感だけが欲しいなら、CM7で終えれば良いのです。

トニックとは「解決感」であり「満足感」であり「次への期待感」です。不安定から安定へ、という単純な話ではなく「そう流れるならそう受け止めて遊ぶ脳の性質」の結果音楽はここまで豊かに進化しました。

この音楽の連鎖感を「進行感」と呼びます。拙論では「音楽的なクオリア」と言っています。個人がいかに自分のそれを感じるか、です。

 

G7   |Em7 |

これはkey=Cで「IIIm7帰着感」「IIImへの進行感」「IIIm感」などと表現します。IIm7-V7-IIIm7-VIm7がジャズスタンダードで無数に使われたことから、親しまれて定着しました。

G  |Em7(9) |でも同じです。

 

次の進行感を聞いてみてください。

G   |Em7  |Am7  |D7  |

G7   |Em7  |Am7  |D7  |

再生できない場合ANA5.mp3

Gのキーのイチロクニーゴーです。ここにG-Em7があります。後半にはわざとGを7thにしてありますここで「お!ブルージーだね」って思う人もいるかも。

こうやってその進行が進行できる理由、が様々な音楽経験を通して自然に身についていきます。

この、

コードが流れた時に、なんらかの"既聴感"を捉えられたなら、それがあなたがその進行を使える理由

としてみて下さい。

このように音を心象から捉えていくのが不定調性論の最大の特徴です。実践ではこの直感が働けば音楽を判断できます。

これを和音連鎖の認知ヒューリスティックとでもこの記事では呼びましょう。

 

いくつかやってみましょう。

C   |G  |D  |A  |

C   |G  |Bb  |F  :|

再生できない場合ANA6.mp3

この進行が二回繰り返されます。ビートルズ的な特殊進行です。これを進行感で分析してみてください。

C   |G  |

G   |D  |

D  |A  |

Bb  |F  :|

まずこの四つはI→Vですから、単品での進行感はシンプルですね。

これを「I-V感」とします。五度進行感覚。自分なりに分かりやすい表現でいいです。

 

この感覚は下記のような進行を聞くことで、覚えられます。

C   |G  |Am  |F  :|

再生できない場合ANA7.mp3

最初の部分のC-Gでこの「I-V進行感」を覚えます。

 

ただ次の

G   |D  |

これは前のCとの絡みで聞いているためにDが少し外れた感じがします。

これは「ドッペルドミナント=ダブルドミナント」として知られるコードで、下記のようにIIやII7を使って進行感で身につきます。

C   |G  |D  |Dm7  G7 |

C   |F  |D7  |G F Em7 Dm7 |

C   |Gsus4  G   |D  |Dm7  G7 |

C   |D7  |G7  |C  |

再生できない場合ANA8.mp3

これを「II感」「ドッペルに行った感」「少し飛び上がって明るくなった感」みたいに覚えます。

 

この辺を覚えてしまうと、

C   |G  |D  |A  |

C   |G  |

このAも人によってはcから見た「VI感」として捉えてもOKです。この

C   |G  |D  |A  |

 はそもそも

C   |G  |Dm  |Am  |

からの変形と考えてもいいです。下記を聞いてみてください。

C   |G  |Dm  |Am  |

C   |G  |Dm  |A  |

C   |G  |Dm7  |A7  |

C   |G  |D  |A  |

再生できない場合ANA9.mp3

この辺をいろいろ弾き回しているうちに覚えます。

理屈を知るより先にだれかの曲で聴いたり、作曲時にコードを1フレット間違って弾いて「これがいい!」と思ったりして「進行感」を覚えます。

 

C |G  |Bb  |F  :|

この進行も、ギターでは

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同じポジションのコード移動をそのまま2フレットずらして繰り返せばいいだけですから、アイディアとしてはギタリストは早くから気がつきます。

ニルヴァーナがそうですね「Smells Like Teen Spirit」。

この時、G→Bbの斜め移動感がスリルあると思います。リヒャルト・シュトラウス 2つの歌曲とか、1895年からこの短三度の長三和音移動はあります。個人的には、Bon Joviの「Keep the Faith」とかBlondie「Call Me」そしてかっこいいな、と思った「Please Please Me」(メジャーコードが連鎖するコード進行を考える)などで体に入ってます。

 

CM7  E7(III7感)

C DbM7 とか E7 FM7(IIbM7上昇感)

FM7 Em7 とか Bb7 Am7 (IIIm7下降感)

Am7  G とか CM7  Bb  (VIIb感)

Dm7  DbM7 (ルート半音下降感)

CM7 C#m7(b5) (半音上ハーフディミニッシュ感)...etc

名前などつけなくていいですから、様々な常套句進行の持つ

「進行した時に感じる"あの"感じ」

を覚えます。そして作曲する時もこの「進行感」を頼りに作業を進めます。

C  |DbM7  |がフラメンコ的、とか。

C7  |F7 |はブルース的、とか。

CM7   Gm7 C7 |FM7 はジャズ的とか。

C  Cm  |C  |Cm |(主和音転調)とかCm   |Abm   |Cm    |Abm  |とかCm   |Ebm  |Cm  |Ebm  (クロマチック・ミディアント)はSF映画の火星の夜明け的、スターウォーズ的とか。

この進行感論=心象連環分析、が自分にとっては最も有用でした。

 

C |E7  |FM7  |Bb7  |

Am7 |AbM7  |Gm7  |F#M7  |

FM7 ||

再生できない場合ANA10.mp3

例えばこういう進行。

C |E7=(III7感)|FM7=(IIb上昇感)  |Bb7=(五度進行変化感)  |

Am7=(IIIm感) |AbM7=(VIb感) |Gm7=(IIIm感)  |F#M7=(IIb下降感)   |FM7=(IIb下降感)  |

C →E7(すこし引き締まって)  |FM7(解き放つ)  |Bb7(それでね...)  |

Am7(実は) |AbM7(遠い昔のこと)  |Gm7(ちゃんと話そうか)  |F#M7(そこから解放されて)  |FM7(生きたいから) ||

こんな風に物語が感じられれば、曲はできます。 

 

メロディも和音と流れの雰囲気を紡ぐように載せていきます。

再生できない場合ANA11.mp3

 

なぜその和音が次の和音につながったか、を思い出しやすさ(ヒューリスティック)、音楽的なクオリアを総動員して意味を当て込みます。

ここで述べたやり方はあくまで私が使ってきたやり方です。

このやり方を応用して、

ありえない和音→ありえない和音進行も

ノイズ→ノイズ、静寂→静寂も「進行感」を創造して当て込むことで音楽になります。

 

次にカノン進行を見てみましょう。

C  |G  |Am |G |F |C |F  |G  |

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こちらと、次。

 C  |G/B  |Am |G |F  |C/E |F/D  |G  |

f:id:terraxart:20210814175443p:plain

この二つでは微妙に流れているストーリーが違うように感じます。

最後のF/DはいわゆるDm7になります。

 C  |G  |

 C  |G/B  |

不定調性論では、この二つのコードは「異なる意味を持つコード」として理解します。

 

 C  |G  |

は力強く、少し威圧的に説得を試みてくる印象があります。

 C  |G/B  |

こちらはどちらかという穏やかに「流れるに任せるように」とうとうとつたう感があります。

そうなると、「俺はこうなんだ!」って訴える時は前者の進行を使い、「あの日のことを話そう」と老人が語る時、後者になるでしょう。

人によっては逆かもしれません。

 

もっと抽象的でもいいです。

 C  |G  |

は真っ赤。

 C  |G/B  |

はグリーン。

と感じても、前者はより力強い時、夏、意欲がある時、後者は、春/秋、優しさ、軽さを表現したい時、と使い所を判断できます。

和音は転回するだけでも雰囲気が変わります。

 

Dm7  G7  |D/C  |

f:id:terraxart:20210814200122p:plain

D/Cはリディアンコードと呼ばれる明るく透明感のあるサウンドです。

 

Dm7  G7  |B/C  |

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こちらのB/Cはトニックディミニッシュサウンドにつながるちょっと怪しげで、擦れるような響きを持ちます。ちょっと気だるい曲、宵の曲、そういう時に使えるな、と感じます。

 

 

Dm7  G7  |EM7/C  |

f:id:terraxart:20210814200146p:plain

 

 

すべての分数和音が意味を持って訴えかけてきます。

Dm7 G7 |C#/B/D/C7  |

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12音が全て使われています。列車が通り過ぎていく風景が浮かびます。

列車と線路の隙間の向こうのドラマが見え隠れするようなざわざわした光景が浮かびます。

 

音の響きが耳の中で融和して、自分にしか通じない感覚になります。

D/C

は本当にDとCが合体した和音の響き、と言えますか?

もっと何か違う感じ、ではないでしょうか。

このように和音が合成されて作り出される新たな雰囲気を「融和変化」と呼びましょう。

 

①GM7 |CM7 |GM7 |CM7 |

②Em7 |CM7 |Em7 |CM7 |

③GM7 |CM7 |GM7 |CM7 |

ここに出てくるCM7は全て同じです。①〜③と流れます。

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①の時のCM7に対して②の時のCM7は憂いを含んでいるように感じます。

さらに③の時は、①と同じ流れなのに少し寂しい感じが追加されたような気がします。

時間と記憶の芸術、とでもいいましょうか。頭の中で今なっている和音の心象が目の和音とリンクして変化していきます。融和変化も起きた上で進行感が心象の中で常に刷新されます。これらのCM7を全て同じとすることも時には必要ですが、それぞれ違う、という方法論があっても良いと思うのです。

 

認知心理学等では当たり前のように定義されています。

style.nikkei.com

 

「人間は夕焼けの光のもとや夜間の薄明かりの中で色を見て肉の新鮮さや果実の熟れ具合を判断してきた。もし『色の恒常性』が働かなければ、こうしたことはできていなかったはず」と東京大学大学院助教の福田玄明さんは言う。

音楽の印象も個人の脳が判断する、皆が同じ人間なのであれば、それぞれ違った結論ではあっても、必ず何かを感じる、と思います。

私は、自分が感じたことを音にする明けで精一杯ですが、でもそれって音楽制作の最初の一歩なのではないでしょうか。音楽理論から始めるのではなく、音楽を感じることから始めたいと思っています。

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