Cu5(d#)
これはCの上方五度領域の和音に側面領域の基音を加えた和音です。CにとってのD#は同じエリアの音ですから、表面と側面の領域の音が同時に鳴り、弱い動的性格を有するが動和音ではない=静和音(せいわおん)、とします*1
一方で静和音は、次のような考えで定義もできます。

このように塗りつぶした配置のような構成音で用いる和音集合は増四度を持っていません。このように増四度関係のない和音は総じて「静和音」と呼びます。これは静的で動かない和音という意味ではなく、「不完全な動和音」という意味になります。
たいていの三和音、四和音は、裏面領域は持たずとも、たいてい側面領域を内部に持っています。C∇という和音はe,gという側面関係の音程を持ち、Amはa,cが側面の関係です。
側面領域とは基本動和音の内部にある短三度関係でもあるわけですから、微弱な動的欲求を持っている、と考えれば、あらゆるほとんどの和音はその構造に弱い動的欲求を有しているということができます。
G∇ C∇という進行も、F∇ C∇という進行も、トライトーンが無くても進行感、帰結感があるのは、静和音自体に弱い動的欲求があるからだ、とすることができます。
側面領域を含む和音は、その構造によって弱い動的欲求を内在させるため、それらの和声の進行にも進行感が存在する。
私達に刷り込まれた「ドミナントモーション」の感覚的よりどころを裏面領域、側面領域、という考え方にいったん落としてみることで生まれる、またこれまでとは異なる音楽、和音の進行感について考える発端となればよいと思います。
<静和音の分類>
第一種静和音・・・増四度関係を持たず、三度関係、半音関係を持たない和音。例;Csus4、c,g,dやc,f,b♭という和音etc..
第二種静和音・・・増四度関係を持たない和音。例;C∇、Cm、CM7、Cm7 またはc,e、c,gなどの二和音etc..
第三種静和音・・・増四度関係を持たず、半音または全音で成り立っている和音。例;c,c#,dなどのクラスター、c,dなどの二和音 etc..
完全静和音が進行する理由はなんでしょうか。
Csus4⇒Dsus4⇒Esus4
この連鎖は、完全静和音の連鎖ですが、静かな進行感は確かに存在します。
またCsus4→C∇という流れにおいて、一般的にはCsus4はすさまじい動性を有しているように思えるかもしれません。ここに
和音と和音が連鎖するときに生まれる動性を考えなければならない理由が生まれます。
当然C∇⇒Csus4にも同様に強烈な進行感があります(と、私は感じます)。
こうした「進行感(動和音の動性)」と「遷移感(静和音の動性)」はどれだけ勾配がきついか緩いか、によって「進行」なのか「遷移」なのかが分かれる、と考えてみましょう。
これにより拙論では、 和音には二種類しかない、という分類方法が生まれました。
それは増4度を含むか含まないかの違い
です。この分類について先達を探していたらP.ヒンデミットの「作曲の手引」に、そうした分類の萌芽が見られました。簡易的にまとめると、
動和音=動性を持つ和音
静和音=弱い動性を持つ和音
となります。
*1:またCu5⊕Au5というコードは、表面基音によるu5和音と側面基音によるu5和音の二つのu5トライアドによる和声を示しています。このコードの構成音は、
C-E-G-A-C#
となります。調性音楽的表記ですと、C6(♭9)となります。この和音はcを中心に考えると側面音aの追加とgとc#の増四度関係により第三種動和音といえます。この音集合は五音ですから和声として扱ってもいいですし、音階として扱っても面白いでしょう。つまりCメジャートライアドが与えられた小節でメジャースケールをただ弾くのではなく、この側面領域が働く音階、すなわち、
C-C#-E-G-A
というものを使ってメロディを作る等、アドリブをとることもできます。これは側面領域を利用したC∇の音階となります。またこの五音の集合から自由に音をピックアップして独自の機能和声論的和音を作ることも可能です。例えば、
A-C#-E-G-C
とするとこのコードはA7(#9)と解釈もできます。例えば
C-A7
と簡単に作ってしまう和声進行を
C6(♭9) -A7(#9)
とすることでこの音階での和声進行を作ることも可能です。