答えはいくつもありますので、個々人の方法論で考えてください。
一般概念的には、
特定の音(x)を主音(中心音)とした場合にこれをx調という。
ということですから、
CM7 A7 DmM7 G7(b5) C#m7(b5) CM7
というコード進行でもcを中心にメロディを作れるなら、このコード進行全体はC調と言う調性組織がある、と答えて良いと思います。
一般西欧音楽理論を学ぶ人達にとっての
"純度の高いCメジャーキー"は、例えば
CM7 Am7 Dm7 G7
こんなようなものです。
これはCメジャーダイアトニックコード(Cメジャースケール)だけで作られています。
CM7 A7 Dm7 G7
このようにA7というノンダイアトニックコード(またはIIm7=Dm7のセカンダリードミナント)を含んだ場合、どうでしょう。
このときCM7→A7に流れたときの雰囲気が独特です。
この進行自体はc,c#,d,e,f,g,a,b
と言う音集合で作ることができる世界といえます。拙論ではモーダリティモーションと呼んでいます。
この8音集合を一つの組織と考えることができれば、この集合から生まれる和音で連結を作ることもできます。Cのダイアトニックコード以外に、
C#m7(b5) DmM7 Em6 FM7(#5) G7(b5) A7 Bm7(b5,9)....
といったコードが作れます。
これらを使うと、CM7 A7 Dm7 G7の他にも
Dm DmM7 Dm7 G7 CM7
IImのクリシェ
C#m7(b5) CM7
I#m7(b5)からのIへの下降
F F(#5) F6 G7 CM7
IVの五度クリシェ
などが作れます。これらから派生して
CM7 A7 DmM7 G7
とか最初に提示した
CM7 A7 DmM7 G7(b5) C#m7(b5) CM7
というような流れも作れます。
Cメジャースケールにc#を足しただけで様々な色彩感が作れます。
このc,c#,d,e,f,g,a,bという組織を皆さんそれぞれの方法論的にどう理解するかだと思います。
c,d,e,f,g,a,b + c#,d,e,f,g,a,b
とするなら、Cメジャースケール+Dメロディックマイナー(C#オルタードドミナント) という音階が組み合わせされた集合、と考えるかもしれませんが、これは7音組織を主体として考えた場合です。
たとえば、このc#が平均律より50Hz低かったら音階による区分けで考えるよりもピッチクラスで考えないと成り立ちません。7音スケール縛りは狭い領域でのみ有効です。
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他の音についても表にしてみましょう。
クリックして拡大してください。図表はご自由にお持ち帰りください。
この表の中には、I7、II7、III7、IV7、VI7、IIIb7、VIb7などのセカンダリードミナントが現れます(VII7などは二音変化が必要なのでこの表には現れない)。
セカンダリードミナントを含んでも中心音が主音からブレない、という状況も作れるでしょう。
ダイアトニックスケール+1音という少し「調性の純度の下がった天然水状態」と言えます。ミネラル豊富。
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これをリディアンクロマチックコンセプトのトーナルグラビティチャートと同じ発想で五度圏から考えてみましょう。
メジャースケール
加わる音の序列は個々人の自由ですが、この表ではIV#→VIIb→IIb→IIIb→VIbとしてみます。
マイナースケール
マイナーダイアトニックも同様です。序列は各自の方法論で。
たとえば、メジャーダイアトニックの場合において、iv#が加わると、
こうなりますから、 II7が使えたり、フリジアンのIImで9thが使えたり、VIIm7やマイナーなところでVM7が使えたりします。これはIアイオ二アンとIリディアンの共存ですから、IメジャーキーとVメジャーキーが共存したような状態です。さらにviibまで勢力を広げると、
となり、I7やIVsus4、Vm7、VIbM7なども使えるようになります。
また二つの変化音の場合下記のように新たに作っていただく必要があります。
この場合iv#とvi#を両方含んだ和音を作ります。
7音集合の主音への重力の波及をノンスケールトーンの外側に広げるイメージです。
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たとえば、Cのブルースを考えると、
C7=i,iii,v,viib
F7=iv,vi,i,iiib
G7=v,vii,ii,iv
ですが、
C7 |F7 |C7 |C7 |
F7 |F7 |C7 |C7 |
G7 |F7 |C7 |C7 |
であるとき、G7は一箇所だけで、曲のほとんどのコードの響きは、
i-iiib-iii-iv-v-vi-viib
で作られていることがわかります。
Cメジャーキーだと
C |Fsus4 F|
はちょっと違和感ですが、Cのブルースの場合は最初からviibがC7で鳴っているので、
C7 |F7sus4 F7|
に違和感がありません。ブルース独自の調性組織があるんだな、と感じます。
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CM7 Am7 Dm7 G7
を選ぶか、
CM7 A7 Dm7 G7
を選ぶかは、そのときの気分、曲が与えてくれるイメージ、直観、といった拙論でいうところの「音楽的なクオリア」に依存します。
これこれこういう理由だからここはAm7ではダメで、A7でなければならない、という理由はありません(メロディが先にあるなら別ですが、作曲時はたいていメロディとコードを両方同時に考えるのが通例でしょう)。すべて作曲者のその時のクオリア次第です。
分析であれこれ後で理由付けするだけです。
なんとなくAm7のときは、優しい感じ、まろやかな感じ、安易な感じ、またはAmの感じを出したいときに選びます。A7にしたいときは、抽象的な気分、ドライな感じ、明転する感じ、サバサバと展開したいとき、などはA7、など作曲家個人でどちらにするか判断する基準を持っているでしょう。ゴルファーのクラブチョイスのように悩まず思考のリズムやノリの中でとっとと選んでいると思います。
一つ言えるのはA7を使おう、というのは「外向き」というかダイアトニック外への指向のような気概を感じます。
だからといって無調が完全開放感の音楽か、と言えば違うのですが、特に調性音楽という括りのある文化圏中での一音追加、一音だけ外部への触手といった感覚は、外向き、外交的、発散、混沌、拡散、拡大のイメージが伴うように感じる、という体感の話です。
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この絶妙な一音追加にとどまった不定調が、
CM7 A7 DmM7 G7(b5) C#m7(b5) CM7
といった物ですが、これが拡散し、
CM7(9,13) A7(b9,b13) D7 G7(b9,b13)
といった12音がすべて使われた進行をつくり、12音全体が現れるザワザワ感、混沌感、またはそれぞれが感じる流れの雰囲気などを意識することもできます。
(実利的にヴォイシングしても12音を使うようにしたと考えて。
CM7(9,13)=e,b,d,a
A7(b9,b13)=c#,f,g,a#
D7=d,f#,c
G7(b9,b13)=b,f,d#,g#)
いちいちこんな表など使わなくてもわかるのでしょうが、やれテンションを加えろ!難しいコードを使え!、ここはちょと変化和音だ!、ここはaugにしたろ!、といった「ただ好きを並べる」という和音連鎖において自分が何をしてるのか、ということがこうした「追加音の状況」からわかると面白いかな、と思って作ってみました。
テンション入れすぎのコード進行のやりすぎ感や、augコード使いすぎの非統一感、テンションつけてないけどコード分解すぎの雑多感の理由は、調性を意識しているのに12音をランダムに使いすぎていませんか?
みたいな別角度からの使用音のチェックができるとまた面白いのかな、と感じました。
こういった「調性」をもう一歩広げて「流性」、、、なんて呼んでいます。
川の流れに例えると、たとえCメジャーキーの"流"れの中にc#やf#が加わっても、流れがあるので、主音cへの重力は感じられる、という慣習的な状態です。
この「流」の感じが掴めてくると、完全な不定調性状態になっても、
中心音は明らかにあるけど、12音がランダムに使われている、という状況で音楽をコントロールすることができる、と思います。
さらにその先は中心音などおかずと「流」だけでコントロールする状態もできます。
私はこの状態で今曲表現を作ることに挑戦している段階です。
事例が拙作で恐れ入ります。
中心が現れては消え、現れては消え、カゲロウのように澄んでいくこの感じが自分は好きです。自分にとってはこれが調性であり、世間的には"流性"という方向から考えていただいた方がいいと思います。
一時期トライしたら、すぐ感覚で「使いすぎ感」はわかるので勉強して自覚したら表など見ずにバランスを感じていけるようにしてみてください。