音楽教育活動奮闘記

不定調性論からの展開~音楽思考の玩具箱

心象連環分析の応用〜十二音連関表による空間デザイン・音楽鑑賞のその先へ

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内的概念マッピング

内的概念マッピングは、音楽鑑賞を用いた自己整理の方法です。ジャーナリング、セルフリフレクション、マインドフルネス、感情整理、自己理解、内省的ライティング、表現的ライティング、アートセラピー的な自己表現に関心がある人には、比較的近い感覚で捉えてもらえると思います。

内的概念マッピングでは、音楽を聴いているときに自分の中で生じる心象や感情の動きを、言葉だけでなく、概念の位置関係として記録していきます。

たとえば、

ある音に「あの頃」を感じる...

ある響きに「行ったことのない風景」を感じる...

ふとした旋律に「あの人」「残り香」「寂寞」「夢」のようなイメージが浮かぶ...

そうした曖昧な感覚を、そのまま流してしまうのではなく、自分の中でどのような関係を持って現れたのかを見つめていきます。「ちょっと丁寧な音楽鑑賞」です。

 

これは楽曲を正しく分析するための方法ではありません。楽譜を読まず、音楽理論を使わず、ただ音楽を聴いているときに自分の心の中で何が起きているのかを整理するための、音楽鑑賞型のセルフリフレクションです。

 

音楽鑑賞を単なる趣味ではなく、自分の内側を見つめる時間にして、心的整理を行い、リフレッシュまたは脳内デトックスのような効果を目指す...そんな目的でトライしてもいいでしょう。

 

ここでは私の12音連関表に基づいた不定調性論原理編の概念を用いた心象記述を紹介します。

連関表の大きな括りは、

こうでした。

例えばこれを時間概念に置き換えると、

このような表にできます。これは個人の考え方や思想、イメージで決めないとその後の分析がうまく機能しません。12の象徴的な枠組みに概念を当てはめることで、これを記号化することができます。

今、現在において、過去を自省し、未来の可能性に賭けている...

なら

こういう配置になるわけで、中心をSとすると、

/Sqw/

という概念の空間配置集合がそこに構築されます。

これを「内的概念マッピング」ということにします。

/Sqw/ は、左・内左・右・外右が響いています。あなたにとってそれぞれの方向性(方角)にはどんな意味がありますか?いろんな感情が渦巻くと思いますが、ただ左・内左・右・外右が響いているだけ、として終えてください。心象の深みに浸りすぎて侵食されることもなくなります。読み方もあります。

"スラッシュ セルフ キュー ウイン スラッシュ"

Cmaj7という記号が、複数の音をひとつの響きとして扱うための名前であるように、/Sqw/ は、これは複数の心象の関係をひとつのまとまりとして扱うための名前です。

人には見せたくない言葉の羅列によって、生まれた連関表が作り出す光景を抽象化した記号による記録です。これは、密教における種子や梵字が、広い意味世界を一文字に託すことに少し似ているかも(阿字観)。宗教的な意味ではなく、人々がやってきた「記号化」を継承しているにすぎません。
連関表が心象の曼荼羅だとすれば、記号はその意味合いをクールに凝縮した護符のようなものです。

拙論原理編では「曖昧さの収束」という表現を使っています。それが一つできると、人は安心して前に進みすくなります。私にとっての音楽鑑賞はほとんどセルフセラピーだと感じてます。

 

音楽鑑賞の特徴

楽譜を活用した分析や、一つの楽器、楽節、ミックス過程に伴う詳細な技法・スキル的解説は楽曲分析というより、それぞれの職に必要な技術論として有意義です。そしてそれらを理解した先に音楽が持つ親近感や、努力感、人間味が楽曲に新たなクオリアを感じさせるのも事実です。

一方で、運転中にラジオからふっと流れてくる楽曲がその人のクオリアにもたらす影響は独特なものです。インスタントでナチュラルな現象、と言ってもいいでしょう。

楽譜を用いた楽曲分析、各トラックの楽器スキル・音響的技能はそれぞれの専門家が記述する術、プレゼンテーションの方法をすでに持っています。

そしてラジオから流れた楽曲は「分析」などせず、聴き流し聴きながら、その空間に生まれるやんごとなき雰囲気を楽しむのみです。

つまりこの「聴き流している」ときに生まれるなんらかは、なんとなくでしか感じていません。

 

もし楽譜もなく、その歌詞も文字として見ず、しかしなんらかの行為をしながら聞き流すのではなく、より集中して聞いているときに浮かんでくる心象について、より深く感じ、内的概念マッピングをしたらどういうことになるでしょう。

これは絵画鑑賞や彫刻鑑賞=美術鑑賞に似ているかもしれません。

少しだけじっくり眺めてそれを少しだけ記述して具体化してみましょう。

 

武満徹《リタニ — マイケル・ヴァイナーの追憶に》

Takemitsu - Litany

まずはこの曲の最初の1分だけを題材にやってみます。

当時の楽曲は、レコードを再生し、目を瞑って聞くことで成り立ちました。

ここでもそのような状況に近い感じで鑑賞しました。

まず何回か聴いてください。

内省的で夜の帷(とばり)を感じさせます。

これを連関表に落とし込んでいくのですが、今回は内省と夜帷の二つを同じ表に落とし込んでいくと解析しやすいです。

 

各12の領域は、中心音からの方向性で示されます。

呼び方はこのように決めましたが、意味合いとしては、

こういう感じです。見たままです。

例えば自分が中心にあって、

上..と言えば、目上の人、目標の人、上司、先輩、などがメタファーになります。

逆に下なら、弟妹、後輩、部下、子供、などですね。

左右は両翼的概念です。では、小学校からの友達、仕事場の同僚は、あなたにとって左側ですか?右側ですか?自分が感じる通りに選んでいきます。

分析では生まれないところも出てきます。無理に埋める必要もありませんし気がついた時埋めてもいいです。後で修正してもいいですし、整合性の完璧さが求められることはありません。自分が納得のいくイメージ配置を心がけます。

 

下記は例えば、の例です。各領域のイメージに合う概念を自分なりに当てこんでいきます。

最初からこのように埋めてもいいですし、下記のように、わかっているところだけ埋めて、あとは聞きながら心象の変化を描く領域のどこに当てはまるか自分で決めてもいいです。

また、言葉の概念で出てこなければ、こんなふうに色にしてもいいです。

あとは楽曲を聴きながら、「内省的であること」と「夜の帷(とばり)の雰囲気」に意識を集中して、曲頭からイメージし、その心象がどんなふうに変化したかを感じとります。

 

では実際にやってみます。最初の58−9秒くらいまでです。

最初は内省的な気分が襲ってきて、それらを受け入れた瞬間、静かな旋律と共に夜のイメージが湧いて、夜というより静けさの中で内省している自分が出てきて、それらの想いが溶け、夜の美しさに気が紛らわされ、その思いはただ影となり、夜すらもどこかに行ったようになり、静寂とそれまでの幻感がただ自分にあった...

        

 

みたいに読み解けました。

二番目の「受容」がセンターになっている連関表は、内省よりも、それを受容したことが変化のきっかけになったため、ここは私のイメージで内省を真ん中に置きました。

これでこの心象の流れを記号化できます。

\Sq \-W\ S-/ >|Sh- /Lh Sh-/

これがこの楽曲冒頭の「心象連環進行」と言えます。

 

また下記のように二つの連関表を作り、二つを同時に感じながら作れるなら、

 

下記のような二段和音も...

/Lh-‾/|S+

等と、書く方法はいくらでもあります。

 

Mrs. GREEN APPLE《lulu.》

この記事を書いているときに一番だった楽曲です。こちらを題材にしてみましょう。

Mrs. GREEN APPLE《lulu.》

現代の楽曲はPVを見て、コメントを読みながら、バックヤードの情報を読み、撮影の裏側を見てそこに込められたアーティストの想いを吸収して、全部盛りで浴びるように聞く音楽文化となりました。

ここでもそうした事前勉強を含め、そこから生まれる心象とともに丁寧に聴いてみました。

基本的にはこんなワード配置ができました。特徴的なのは内外の裏がどちらも輪廻だ、という点です。前世の行いが実り、前進した身であってもそれは輪廻、過去の罪を背負い、宿命で構成された来世もまた輪廻。人はその概念に抗えないし、それがいいものか、悪いものかを人の概念で判断しきれないからこそ、対照的な意味の隠れた部分に「輪廻」というシステムがかっちり存在している印象を持ったのでこのようにしました。また彼らの話を聞いていると、音楽の裏にもう一つ彼ら自身の旅路があって、下記のようなメッセージが曲の進行とともにキラキラとランダムに反応し溢れているようなイメージが重なります。

楽曲全体の心象の流れです。

 

 

楽曲全体に一つのメッセージが繰り返されているように感じました。前向きで、ずっと過去の前世の宿命も乗り越えて輪廻の先まで自分を駆け抜ける、という野望というか願望というか、強い意志を感じました。

\S|/ |S|±/ -W|h+w\ |+W|±/ >U|h-<

 

楽曲が自分にもたらすもの

こうした楽曲鑑賞は、自分だけのものです。誰かにシェアする必要も、忖度する必要もありません。ただ自分のために活用し、明日の活力にするだけです。みんなとシェアする方法論や仕組みは現代にはたくさんあります。それとは別に、自分の内面を充実させる方法はあまり確立されていないように感じます。おそらく"お金にならない"からではないかと感じます。結果現代人は「個」を崩壊させられているのではないか、と感じます。

《リタニ — マイケル・ヴァイナーの追憶に》は私に"君は内省の仕方が厄介すぎる"と問いかけられたような気がしました。なるほど、とも思いました。内省とは自分を戒めるのではなく、歪になった部分を肯定して、凸凹のまま磨いて光沢を付け、そういう自分を受け入れる作業なのだよ、と言われた気がしました。そして夜、内省のしすぎはあまり良くないかな、と。

《lulu.》は私に光の如く過ぎ去る一日は一瞬で、人生も一瞬で、全てを消費し尽くす日々だけど、これは旅であり、旅先だとマナーを守り、その場限りに出会った人とも気持ちよく会話ができる...人生も旅なのだから、この旅路においてもマナーがあるんじゃないかな?という若い人たちのまっすぐな輝きを見たように思います。人生全部をひっくるめてもっとちゃんと生きて、前世も来世もそのまま走れるように、今が誰かの来世であり前世なら、その先転生した時もそうあれるように今を生きればいいじゃないかな。と聞いた気がします。

このように一回楽曲について理解を向けて出てきた言葉は、次の行動に反映され、次の意欲を支えてくれます。これはシェア文化では十分に自分の中にガツん!と入ってきません。自分だけの、自分のための行為だから全部が自分に転用されます。

そういう生活の一瞬を現代人はもっと作っていいじゃないかという気がします。

 

音楽鑑賞

心象記述

記号化

自己整理

自分専用の選曲地図

内的概念マッピングを続けていくと、楽曲は単なる「好きな曲」ではなく、自分の内面にどのように作用する曲なのかとして見えてきます。

ある曲は、疲れているときに気持ちを開いてくれるかもしれません。
ある曲は、反省したいときに過去を静かに見つめさせてくれるかもしれません。
また別の曲は、頭の中が散らかっているときに、心象を受容や理解の方向へ整理してくれるかもしれません。

あくまで、自分にとってその音楽がどのような心象の流れを生じさせやすいかを記録することで、自分が疲れているとき、内省したいとき、気持ちを切り替えたいときに、どの曲を聴けば自分の内側を整理しやすいかが少しずつ見えてくるのではないかと思います。無限に楽曲が量産されていく中で、自分にどんな最適な効果がある曲を選ぶのは不可能です。それは一期一会、自分が選んだ曲から読み解くことで、選曲眼が鍛えられ、より適切な音楽との付き合いができるのではないでしょうか。

 

内的概念マッピングは、音楽を分析するためだけの方法ではなく、自分の状態に応じて音楽を選び、自分の内面を整えるための個人的な選曲地図にもなる、というのが今回の結論です。

 

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