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瞑想に代わるもの〜音楽制作で考える脳科学44

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同書最後です。同書は専門家のインタビューを多く含めながら脳を鍛えるための様々なエビデンスを提示し、話題を提供してくれます。直感について調べようと思って買ったのですが、瞑想についての科学的見地が知れたことが大変良かったです。

私はここで音楽制作を瞑想と同一にせよと述べているのではありません。ただ、こうした専門家のデータや話を見ていると、音楽制作を瞑想と同じような状態で行うことは可能ではないかと感じるばかりなので、皆さんにここで問うておきたいと思います。

 皆様一人一人で、自分が集中できる作業にどのような可能性があるのか考えてみていただければ幸いです。

 

瞑想といってもいろんなタイプがあります。同書、アンドリュー・ニューバーグ博士のインタビューなど豊富に紹介されています。

<瞑想の種類>抜粋引用

1.何も考えない状態にできるだけ近く(基本的な瞑想法)

2.特定の対象に焦点を当てる(音、ロウソクの炎、マントラ、呼吸)(焦点をあてる瞑想法)

3.ヨガやウォーキング、反復的な行動に没頭する(行動志向の瞑想法)(唱和する=キリタン・クリヤ瞑想)

4.過去や未来を考えず、今この瞬間のみを意識し、心をそれで満たす=マインドフルネス瞑想法

5.祈りなど精神的な儀式に没頭する=スピリチュアル瞑想法

 

我々音楽家は2,3,4を複合してその状態に極めて集中した時、瞑想と同じ効果が出ます。ずっとPCに向かっていても肩がこらない、3時間ぐらいその作業をやっていても疲れない、そんな時ってありませんか?

それは状態としては瞑想と同じです。

 

人は自分が没頭することのできる状態が最も精神と身体に良いフィードバックが現れるようです。下記はマインドフルネス瞑想による脳の状態変化の引用です。

最近、私たちは、1か月間(日に30分、1週間に5日、計11時間)のマインドフルネス瞑想が、注意力や自己調整力を改善するメカニズムを発見しました(Tangetal2010;2012)。マインドフルネス瞑想が、前帯状回に出入りする電気信号を伝えている白質に変化を起こすのです。前帯状回は、先ほどから述べている、行動を自主的に制御するシステムにおいて大切な領域です。

瞑想を2週間行なったあとに調べると、この前帯状回内で、情報を伝達する神経線維が増えていることが確認できたのです。神経線維の増加に伴ってポジティブな気分でいることが多くなり、ネガティブな気分でいることが少なくなったとする報告も見られます。4週間の瞑想をしたあとの白質の改善には、神経線維を覆う膜であるミエリン鞘の質の向上がかかわっています。ミエリン鞘には、神経線維を伝わっていく電気信号が漏れないように絶縁する役割があり、これによって自己調整にかかわるネットワークの効率性が向上するのです。

 

いい音楽ができるとポジティブになれますよね。高揚したり、元気になれます。

しかし、同じ音楽作業でもストレスのある作業だと逆効果です。

音楽家はいかに音楽をすること自体の行為を瞑想と同等の効果にすることができるか、を考えるべきだと思います。変なソファ買ってどこかで聞いたような瞑想をするんじゃなくて。

 

人間は考え、行動し、また考え、という過程で進化してきました。じっと目を瞑って座って進化してきたわけではありません。同様なことが同書にも書かれていました。

人間の進化は移動することから始まっています。歩く、そして、時には走って、つまり運動しながら移動した。たとえば獲物を追って移動する時は、ワーキングメモリを使ってどこへ行くか計画し、家に戻る目印になる場所を記憶していきます。旅の途上で危険に出会ったら、意思決定能力や問題解決能力を使って立ち向かっていきます。このように、まず、移動すること自体が脳のトレーニングになっています。

 

音楽家はその音楽作業への向き合い方をどう構築するか、で全く違う次元になるのではないでしょうか。

2012年のルーダースらの研究によって、瞑想者たちが記憶のコントロールセンターである海馬の容量を増加させていることがあきらかになりました。大脳皮質の別の領域でも容量増加は見られます。脳内の各領域の構造的なつながりや、大脳皮質のひだも増えています。興味深いことに、ホルゼルらの2011年の研究によれば、変化はとても速く起こります。8週間の瞑想を行なえば、大脳皮質の灰白質密度を高める可能性がだれにでも出てきます。

「瞑想者」=「ちゃんと音楽作る人」に置き換えてみてください。

じゃあ、何を持って「ちゃんと音楽作る人」なのでしょうか。

瞑想をやろうとしている人へのニューバーグ博士のアドバイスは以下のとおりだ。「たくさんの瞑想技術があり、各々の瞑想法が目指すものと瞑想スタイルの組み合わせもさまざまです。そのため、初心者はどれを選んでいいかよくわかりません。瞑想に興味がある人へのアドバイスとしては、シンプルな内容で、初めからかんたんにでき、自分の信仰や信念と認知的なゴールを両立できるものを探すことでしょう。場合によっては、たくさん訓練する必要が出てくるので、納得しながらできるものでないと嫌になるのは明白です。心のなかにある目的はなにかをよく考え、ふだんのスケジュールやライフスタイルを思い出して無理がないか吟味し、現実的に実行できる瞑想法を探すのです。そうでなければ、続けるのはむずかしいでしょう」

このコメントから察することができるとすれば

「自分が作りたいと思う音楽を作る行為」

「自分が行いたいと思う音楽行為」

が良いと感じます。

スケール練習にだけ没頭して曲が弾けるようにならないのは、きっとその人はスケール練習でより瞑想的な状態を作り出せる(気持ちいい)ので、それがやめられないのだと思います。

 

せっかくライブパフォーマンスを専門に学んだのに作曲ではなく、プラグインを開発してしまう人は、その開発作業状態が最も瞑想に近い「心地よい状態」である、ということがわかります。

 

ただ楽なことをするのとはちょっと違います。クリエイティブで、誰かの役に立ち、自分を慰め、前向きになれる作業が瞑想と同等の状態を脳に作りやすいようです。

 

この欲求が社会の利益と重なる人は最強ですね。

その作業をしている時、彼は瞑想状態と同じ状態になっていると思います。

スティーブ・ジョブスの瞑想への興味も自身のクリエイティブをいかに刺激するか、に合ったはずです。座って瞑想でリラックスするのではなく。

瞑想は、集中力と注意力を要する能動的なプロセスです。これは、なぜ、瞑想訓練中に前頭葉の活性の高まりを観察することになるかの説明になります。瞑想時には通常、なにかに焦点をあわせる必要があります。それは、マントラだったり、ビジュアルや言葉だったりしますが、一方で呼吸を観察します。多様な研究によって、瞑想が持つストレスコントロール効果があきらかになり、マインドフルネスをベースにしたストレス低減法(MBSR)も生まれています。

博士は「キルタン・クリヤ瞑想」が簡単で効果の報告がある、と推しています。

興味のある方はエビデンスを検索してみてください。

 

PC作業を一段上にあげて見ましょう。

 

・呼吸を整えて作業に入る

・静かな環境にして作業に入る

・PC画面一点に集中できるようにスマホを消す

・作業目的や、完成後の依頼者の気持ちなどを想定して作業に入る

・リラックスした姿勢、服装、ちょい空腹程度で作業に入る...etc

 

いろいろ考えられますね。

ただファッション瞑想は30分ぐらいで十分らしいので、いつも3時間とか作業される方は、もうかなりの瞑想熟練者かもしれません笑。

ただスマホを見ないで一気にやる、的な作業がその集中力を生み出し、脳に適切なリズムと状態を提供するのかな、と自分の体験から感じます。

いくつもの作業のマルチタスクではなく、制作という一つの作業の中のマルチタスクに集中力を集まってリズムを作ってくれるからです。

これは、きっとスポーツでも、執筆でも、絵画でも同じなのでしょうね。

わざわざ"スピリチュアルな瞑想"をしなくても、自分の作業への姿勢やスタンスを変えて、集中してやる技術をクリエイトしていけば、仕事もはかどり、脳もリフレッシュされて一石二鳥です。

 

私は30分−45分ぐらいで終わるミックス仕事などは、スマホを遠くに放り投げて行います。あっという間に集中できますし、あっという間に終わります。

 

まあそれから3時間ぐらいだらだら制作してしまって元も子もなくなるのですが笑。

 

ピン!と来た方はお試しください。