音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

音楽制作に"危険"を潜ませる工夫?〜音楽制作で考える脳科学37

同じトピックはブログ内を「音楽制作心理学 」で検索してください。

前回 

www.terrax.site

 

不定調性論では直感的作曲を行うことに注目しています。

楽器を弾きながら、ピントくる、街を歩いていてピンとくる、制作作業をしながら「あ!こうしよう!」と思える、今日はやたら手がどんどん動く、といった現象を「音楽的なクオリアによる(不定調性論的な)作曲技術」と拙論では勝手に呼んでいます。

 

この時、根拠はわからないと思います。そう思った!わかる!が先に来ます。

それはワクワクしたり、やらずにはいられない気分です。

「うわぁ、こんなメロディが浮かんじゃった、困るなぁ」という人の元に直感は降ってきません。日頃からそれに取り組み、それを考えてるからこそ脳があるタイミングでその答えを具現化します。

そうした直感を得るために、よく睡眠をとったり、バランスの良い食事をする、と言ったストイックな姿勢も大事なのでしょうが、自分が嫌なことまで必死でやっていつ降ってくるかわからない直感を待つような生活をする、というようなことは個人的にはあまり魅力的ではありません。悟りは開けるのでしょうが。

今回から、その直感の使い方について、なんらかのヒントをいくつか提示できればと考えています。

 

こうした直感は、人間の基本的欲求である本能とは違い、直感による「総合的判断」なのだそうです。下記参考書によれば、人間の判断の8割は直感的な判断といえるそうです。

https://m.media-amazon.com/images/I/31Lm5c3-izL._SY445_SX342_.jpg

上記同書によれば、直感は経験と知識、に本能を加えた「総合的判断」なのだそうです。

確かに普段「出典はこうだ」「この論文にこうある」「このノウハウ本にこうすると良いと書かれている」というのを信じて行っている行為も「完全に論理的」とは言えません。

その出典を信じる理由は、その出典が確からしいというあなたの直感的判断に従っているからです。専門誌の論文でも捏造であることがあります。

上記同書では朝出かける時、傘を持っていくかどうかの判断を天気予報に委ねるのは「論理的ではない」と述べています。

"先週も当たったし、先週は持って行かなくてすっかりずぶ濡れになったから、今日も予報も雨だから持って行こう"というような思いには実は「根拠」はなく、天気予報を信じる、という"予報を鵜呑みにしている私たちの判断"自体、経験と知識に基づいた直感的判断だ、というわけです。

 

完全な論理的な判断は10-20%なのだそうです。

「ベリーとブロードベントという心理学者のグループが、「乗客スケジューリング手続きなどの追跡調査(1988)」(同書引用)

によれば、人は手頃な交通機関の組み合わせを論理的に思考せずとも、直感的に割り出している、というようなことが報告されているそうです。人の直感はそれを用いても結構生活に役立つ感覚を自分に示してくれるようです。

天気予報が当たっていると感じるのもこうした「直感が当たっている」ということになります。

 

また、生命が本能と直感的感覚を最も研ぎ澄ますのが「危険に直面したとき」だそうです。生命誕生から何十億年、危険をかいくぐり進化した生き物の底力は人智を超えています。これこそ人が使うべき能力です。

虫たちは脳を持ちませんが、蚊取り線香を向ければ、とりあえずその場から離れます。なんらかの本能が働くからでしょう。

 

それに対して、脊椎動物以上になると、判断のための専門領域である「脳」を持っている。この「脳」のおかげで、個体だけの経験というものを、蓄積することができる。つまり、その個体だけが持つ経験に基づいた「総合的判断」と、生まれつき備えている「本能的判断」の、双方をまとめた新しい判断能力が出てきたのだ。これが「直感」の始まりだ。

佐々木正悟『脳は直感している』

 

人間の脳には危険を察知した時に直感的に回避しようとする特別な回路があるそうです。考えるまえに”やばい”と感じる能力です。

「扁桃体」は、明らかに非言語的なメッセージを送っている。「扁桃体」が興奮すると、人はその状況から、逃れようとする。たとえば高いところに登ると「扁桃体」が激しく興奮してしまう人は、高いところを避けようとする。これが「高所恐怖症」と呼ばれる症例である。

佐々木正悟. 脳は直感している

 

向こうからクマが走ってきたら、やばい、って感じますね。あの感覚です。

youtu.be

その感覚が、生命が育ててきた危険察知の感覚で、論理でも推測でもない感覚です。

とりあえず腰を浮かせたくなる感覚。変な脳内物質たくさん出ていそうです(アドレナリン)。

こういう時、あたふたするのと同時に、明らかにはっきりと生存への対処ができる人材がいます。そういう人の直観力は適切で、鋭い行動力になります。

 

また財布をどこかになくした!!と思った時のことを思い出してください。

f:id:terraxart:20210911101411j:plain

急に脳がフル回転しませんか?先ほどまでの記憶が一気に蘇り、

財布がいつの時点まであったかを記憶のハードウェアを検索します。脳のフルスロットルです。こういう時パニックになりますね。1秒を争います。

 

20分スーパーマリオで記録を伸ばしてもいいです。ゲームの中での喜怒哀楽は、たとえイライラして終わってもしばらくすれば制作のエネルギーになります。

あまりイライラするのは考えものですが笑

 

ジグソーパズルなども直感を働かせるには良いそうです。そのピースが大体どこに当てはまるか、を直感するのはそれ自体直感力です。

 

埼玉医科大学の和合治久教授によると、モーツァルトの音楽が肉体、精神の健康を増進するのは、とくにモーツァルトの音楽だけが豊富な高周波を含む曲が多いからだという。高周波の音というのは、いわゆる高い音のことだ。講習は、とくに3500ヘルツ以上の周波数の音は、神経系への好ましい刺激を与え、それが精神・生体機能に良い影響を及ぼす、というのである。

という話も掲載されていますが、

www.terrax.site

こちらでも触れましたが、熱帯雨林などでの生活の記憶が高周波の影響を人に与える、ということだと思うのですが、おそらくこれは生で聞かないと意味がありません。

人が聞こえない音域をカットしたらmp3や心地よく聞くためのヘッドフォンではそれらの高周波が再現できていないからです。

 

つまり音楽制作でも、その楽曲を作る上で、ある種の方法論的挑戦をしたり、商業的野望を持ったり、なんらかのセールス記録が掛かっていたり、常識的タブーを犯していたり、常識を飛び越えたような制作物である場合には、もし間違えば、あなたの名誉失墜、信頼失墜、「危険」が待っているかもしれません。

そういった状況で仕事をすることで、この危険察知能力が働くことで、脳が普段よりもクリアに仕事をしてくれる、自分に最適な選択をしてくれる、ということも考えられます。

 

もちろんそれには素養が必要だと思います。必要以上に逃げない人、ずるくない人、チャレンジ精神が旺盛な人、そういった人が修羅場をかいくぐり、ヒットメーカーになっていくのでしょう。

そうした天才たちと現場で働く第一線の人もまた、より鋭い判断を行う連鎖がつながり、ヒット曲を、ヒットメーカーを育てていける、というのもうなづけます。

 

表題は例えば、という意味で使ったのですが、もしあなたが作品を作るとき、何となく作るのではなく、そうした「危険」というキーワードに類似した感覚を想起させるような条件を自分に課して作ってみてください。もしそうやってあなたがそうした現場で結果を残せるなら、あなたこそ最前線で活躍するべき人材でしょう。

もしそれでワクワクするなら、ちょっとあなたの直感的感覚試してみませんか?

 

www.terrax.site