2018.9.15⇨2020.9.28更新
『メリーさんのひつじ』を題材に、いろんな雰囲気のコード付けを音で確認してみましょう。
1、オーソドックスな感じ?
まずは比較的普通な感じで。
しかし自分なぜこの音域にしたのかな、すこし低いですね。
漆黒のメリーさん、と言う感じです。
2、浮遊/乖離系ハーモナイズ
最初に思いついたのは「sus4とadd9使いたいな?」という動機です。
この動機が浮かべば、それを置いていきます。
意識的に「ある程度浮遊するだろうな」と最初から"覚悟"しますから、多少の不協和に対しても「意味を感じよう」という気持ちでアレンジできます。
最初はある程度ラフにコードを載せてしまいます。一旦全部仕上げて乗せてみてから、全体を推敲します。
この辺の「アレンジしている時の意識」の解明はまだまだ未知の心理学ではないか?と思います。現代ではまだわからないので最初は、「今どういう気持ちで作ってるな?」としっかり把握していくことが不定調性論的思考のコツです。
それを何度も聴きながら、徐々に「あ、これ、地面にあと1cm届かない感じで浮いてるような感じになるんだな」的に全体のイメージやストーリー感を捉えることができたら、そのイメージで全体が作れるように推敲を始めます。
何らかの理論を用いるわけではありません。全て手探りです。
コンテンポラリーハーモニーの技法を一小節一小節考えてもいいですが、あとでストーリーの統一が大変です。時間がかかるとアレンジは疲れてしまいます。
疲れる前にさらっと仕上げるためには直感力を使います。使った和音と、流れた雰囲気が、自分の思い描いた雰囲気になっているか、また偶然生まれた雰囲気をよしとするか、しないかの判断などに集中します。
繰り返し言います。何らかの理論を使うわけではありません。
この「何らかの理論を使わないで作るためには自分をどう扱っていけばいいか?」を考えたのが不定調性論的思考です。
こういうことが考えずに一発でできちゃう人を「天才」と呼びます。
3、横の流れの独立/呼応するメロとハーモニー
これはメロディとの絡みを忘れて横の流れで作っていくものです。
先ほどの浮遊感とは違い、協和しようがしまいが横を突き抜けていく感じを作ります。
伴奏とメロディが不協和になっても、その横の流れが意味を持っていて、メロディよりも目立ち過ぎていなければ"成り立つ"とします。このメロディは著名ですから、多少の不協和も受け入れられます。オリジナルでこれをやるとただの変な曲です。
協和と不協和、理論的整合性だけで音楽を作ろうとすると、独自性はなくなります(しかしちゃんと社会に受け入れてもらえます)。
この流れを聞いて、何らかのピンとくる!という漠然とした体感を得た方は、あなたなりの不定調性論的な作曲や編曲ができると思います。
さらにDAWなら音の強弱(ベロシティ)も詳細にいじってみることで不協和な和音の違和感を減らすことができます。DAWならではの不定調性アレンジができます。
協和という概念そのものが実は毎秒変わるような存在で、定量ではないわけです。
「不協和の美」「不安定のはかない美」「日本古来の幽玄」「濁った感じの切なさ」みたいなものを感じる人も、不定調性論的な価値観で音楽を作ることは最適だと思います。
これは独学では難しい場合は、先進的な先生と一緒に研究しながら自身の感覚を鍛えてみてください。
4、ビートルズ的ストラクチャー
メジャーコードを中心に当ブログで書いてきたビートルズ的コードの付け方をしています。
不定調性論ならではの意図もあり、最後は(わざと)V7sus4で終わっています。
コード進行を考えるのではなく、メロディ音を含みもつメジャーコードを一つ一つ試していき割り当てて、音楽的な違和感がなく進行させるように組み合わせていくだけです。手間はかかりますが、クリエイトしている感は強いです。
この時、理論的整合性などは考えません。「理論的整合性」とは他者の理屈なので、制作の段階でそれを考えてしまうと、曲の持つ個性が薄まってしまいます。
そういった整合性を考えるのは、出来上がったあと誰かに演奏してもらう、とか、歌ってもらう、とか、販売網に載せる、という際にやり取りの中で生まれる社会性との妥協です。
コードを変えるたびに様々な意味やニュアンス、色彩感を感じるので、作りながら早い段階で「これはいいな」「これはちょっと違うな」と感じられるようにして作っていけるようにトレーニングします。
これらの和音を四和音にしたり、テンションを乗せると、最初の1のような響きになってしまって、ジャズ・コンテンポラリーになります。
ビートルズが広めたコード進行スタイルは、パンチがあり、誰でも演奏できて、ロックでプログレッシブなサウンドであり、それがジャズの先にある世界だった!ことを教えてくれます。
これはコルトレーンが複層のUST構造を作るやり方でもあります。それをジャズにするか、ポップスにするかはあなたの音楽性が関わってくると思います。
自分にしっくりくるやり方を極めてください。
ビートルズが画期的だったのはこのUST部分複層分解コード進行で愛と平和をロックのビートで歌ったことです。
その他当ブログではスティーリー・ダンもこの手法を発展させて、新たな音楽スタイルを作り出したと感じます。
作るときは、理論ではなく、クリエイトする感覚を頼りに作ります。
あなた自体に自己の方法論がないと作れません。
だから一般的な音楽の作り方を学んだら、どんどん作り始めてください。
またはカバーをしてみてください。特にカバーはわかりやすいです。
・自分ならこのコードは使わない
・自分はそれは思いつかないかも
ということがはっきりわかるので、影響も受けますし、次自分で使ってみよう、というモチベーションが作りやすいです。そうやって「自己の方法論」ができます。
あとはそれが評価されるかされないかにこだわらない、ぐらいの厚顔無恥さもあれば完璧!
あなたのクリエイト作業が、あなたの意思によって統制されれば、理論は思い出になります。
拙論では、その感覚を会得するために"それは好きか嫌いか"、"自分が今どう感じたか"、"自分ならどうやるか"、を考えて音楽分析していくことをオススメしています。
またどんなふうに音をおいても整合性解釈が作れるように、不定調性論の基礎編では12音の他解釈可能性を追求しています。
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