不定調性論的思考によるDTMホーンアレンジ
堅苦しい表題ですが、悪い例?として、ここで何も考えないでデモを作ろうとして自分がどんなふうに考え、何をやってどう作るか、みたいなことをみていただこうと思います。
ヴォイシングをやったことしかない人が自分が考えた"方法論"でホーンメロディを作ったらどうなるか?どんな思考で作っているか?をご覧いただくページです。
皆さんの考え方が少し楽になったら嬉しいです。
なんでこうした作業があまり表に出ないのか、ということもわかると思います。
すごい作家さんも結構現場に行く新幹線の中で楽譜書いてる、とかあります笑。
それだけ作家さんの仕上げにかかった時の直感力=不定調性論的思考能力が「言語にできない」「論理的ではない」感覚に溢れて仕上げる力、集中力が凄い、ということです。
ここではそのちょっとした拙い見本として感じていただければ、と思います。
使うのはCris Hein Horn Pro。
トランペット、アルトサックス、テナーサックス、トロンボーンでやってみました。
編成決めは実際に本チャンになったとき最終的に変えることもあるので、大体で作ります。
Chris Heinは上記のように鍵盤低音部にアーティキュレーションがあります。
緑の部分をどれか押しながら青い部分を鳴らすと、その演奏法になってくれます。
DAWでは緑の鍵盤のどれかを打ち込んで命令します。
赤く囲ったところがアーティキュレーション命令です。ソフトによっては、それが押されている間だけ機能するソフトもありますが、C.H.は次のアーティキュレーションが押されるまで前の奏法命令が維持されます。
1.まず次のようなトップラインを作ったとします。特に目的がないのでグダグダになってもいい気持ちで作りました。
なんかアップテンポになってしまいました。
2.次にこのラインにアーティキュレーションをつけます。
かなり極端ですね。
アーティキュレーションによってヴォリュームがバラバラだったりするので、あとで細かいところはアンサンブルで直すので、ここでは大体の感じだけ置きます。
3.次に大体のコードを当て込みます(概算リズムパターンも入れてみました)。
このコードは伴奏ではなく、あくまでコード感の当て込みなのでapple純正フリー音源ピアノでただ和音を鳴らしています。経過和音が早速不定調しています。これは後で直すの必至の予感。
四小節が後半短三度上がります。途中のコードをしっかり決めたい人はしっかり決めてください。
私の場合、コード感覚がバカになっているので、ここでかっちり決めてもどうせホーンをのせてアレンジしていく過程でまるで変わってしまいます。その癖がわかっているのでここで厳密に決められないんです。
それは気質なのか、才能の限界なのか。
理屈に合わないコード、なども聞いた感じ、大体こんな感じ、というイメージが合っていればそのままアレンジを進めてしまいます。厳密にコードを当ててる時間がもったいないんです。着想は曲をつくりながらでも降ってきます。大体でどんどん先に進めます。だからダメ、なのかもしれませんので、皆さんは一番自分がしっくりくるやり方を決めてください。
4.一旦ここで全員でオクターブユニゾンで鳴らしてみます。
これでいいやん!とかってなってしまう時もありますし、編成を変えるのもこのときです。音源によっては上手く鳴ってくれなかったり、アーティキュレーションの癖が強かったりします。生で鳴らす人はこれをピアノや頭の中で作るわけですからそりゃ基礎体力が違います。理論的な話とか太刀打ちができません。
このユニゾンバージョン、ずっと聴いていると、後半三連符で降りてくるところとかは分厚くしたいな、とか、転調したあとはハモリ入れたいな、とか、なんとなく自分如きでも感じられてきます。DTMバンザイ。
5.そして無造作に作ってみます。
上から、赤=トランペット、黄=サックス、緑=テナー、青=トロンボーンです。低音がだいぶ離れていますが、これはDAWの鍵盤設定によるものです。
...バランスは好きなんですが、なんかハモリが多くて、バラバラ動きすぎて何がやりたいのかいまいちわからないなぁ、という感じになりました。
今回のデモもここまできて
「きっと四声じゃないほうがいいんじゃね?」
ということに気がつくのに時間はかかりませんでした笑。
不定調性論では「マザーメロディ」的手法、と言っていますが、一つのメロディからどんどん着想させて展開していくやり方が得意なようです。
皆さんは皆さんが作りやすいやり方をセオリーに添いながら見つけてください。
6.全容を直し、ベースを入れてデモの完成
結局得意のダブルリードになりました。
ユニゾン大好き人間。
やっぱりスッキリしているのが好きみたいです。
あとはこれをデモとしてしあげて全体を作り、ドラムを入れ、ギターを入れ、音色を整えながら完成形を仕上げます。
前半と後半緑と黄色が入れ替わっているように見えますが、これはユニゾンなんです。制作作業の工程で被さってくるので後から作ったデータが上に載ってきているだけです。
メロディ的にはAメロなどに出てきそうな、感じですね。
赤のトランペットをシンセだけにして冒頭を作るかもしれません。
新たなアレンジがさらにここから広がります。DTMならではの作り方です。
このように最初からドロップ2で作ろう、とか、スプレッドヴォイシングを綺麗に使おう、とかって私は考えません。性格上考えることができないのです。
なお、これは今回の譜例とは違いますが、上記緑枠のようにヴォイシングされない自由なリードラインをインディペンデントリード、青枠のようにヴォイシングされないベースラインをインディペンデントボトム、また内声が独立する場合をインディペンデントヴォイス、などと言います。これらの独自に動くラインが挟まることで、即興性、疾走感、荒々しさ、独立性/自立性、混沌、などの雰囲気が音楽に生まれます。
<参照>