これはリクエスト質疑応答をやった時のまとめお裾分けです。
6分で読める記事です。
冒頭にVIbmという変わったコードが使われている、というご指摘からです。
あくまで最左翼オタクの意見です、すみません。
実はヒット曲コード進行パターンのまとめを以前より行なっていて、そこでも、
短調想定でIVm-VIbm〜と流れる曲が登場したのは初出(自分がまとめてるヒット曲ランキングで出てきた曲としては初めて)だったのでへーって思っていました。
こういう曲がアニメで使用されるのはとても良いことです。
D→Gmだったら、IVmっぽい感じが鮮明になるんですが、ダークな短調の色彩で、しかもいきなり出てくるとこが異様です。夢の途中から見ているよう。
この冒頭部分からのピアノが作る印象的なリフ、
ピアノの右手のメロディが、
f#→d、e→d、f#→d、d→c#
と流れていてこれをコードに合わせて解釈すると、
Em Gm G#m7(b5) Gmです。これが原曲解釈に近い表記でしょう。これは、
Em7(9) Gm6 Bm6 F#7(b9,b13)
て聞こえる感じがあります。またさらにGm6(Gm+リフのe音)というのはEm7(b5)でもありますから、
Em7(9) Em7(b5) Bm6 F#7(b9,b13)
とやがて聞こえてくるんです。
だから、
IVm IVm7(b5) Im V7
という感じで、調性的背景がまとまってきます。
機能和声は低音から組み立てますが、One Note Samba的な世界観(重心が高音部にある音楽性)を確立しているジャズ観では、こうした仕掛け進行は、作曲の楽しみの一つです。
この曲のピアノリフの右手のメロディが、重心なんですね。
ただIVm-IVm7(b5)-Im-Vを先に作ってからアレンジする、みたいなことはしません。
なんとなく置いた音が作るクオリアを感じられるなら作っていけます。
それが結果的に、
SDm subSDm Tm D
という調性的進行を内在させているので、破綻なく聞けるんです。この辺りのバランス感覚が流石ですね。
このメランコリックな感じが「宇多田ヒカル氏の声を想起させる」というクオリアにつながったのでしょうか。
例えば私なら、この四つの和音の連鎖に対して、
寂寞 日差し 反芻 後悔
みたいにストーリーで感じます(心象連環)。
ただ普通はこんなふうに感じてもこういう曲は作れません。そこが才能。
この流れを作って「あ、これでいける」って思えた米津氏の面目躍如、というところではないかと感じました。下記記事では映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」についても述べられており、そこから抽出した音楽的なクオリアと、このリフの感じとリファレンスの雰囲気との相関性が瞬時に見えたのでしょうか。
さてVIbmの仕掛けについてですが、
短調のIVm7(b5)自体はノンダイアトニックですが、
例えばkey=Cmの時、IVm7(b5)はFm7(b5)で、構成音は、
f、a♭、b、e♭ですが、これはどちらかというと、バップ耳はG7(b9,b13)と捉えちゃうんですね。
つまり、
Em Gm G#m7(b5) Gm
という進行は、
Em F#7(b9,b13) Bm6 F#7(b9,b13)
つまり、
IVm V7 Im V7
とまいう王道進行にまでまとめられちゃいます。だからこの部分は、こうした基本的進行に解釈できる要素があるので、不安定な響きの連続の中の幽かな整合性を感じてしまうんです。
米津氏がアッパーストラクチャーやジャズでやってるテクニックの一端を私たちに見せてくれるんだと思ってくれればいいんじゃないでしょうか?
ここだけ音(IVm V7 Im V7)にしました。原曲との違いわかりますか?
原曲ラインに根音(iv v i v)を加えただけです。

...でも、これだと進行感がはっきりしすぎて、「夢の途中感」がないじゃないですか。
理屈だけで作ってると、氏のような音楽はできないんですね。
こうした音楽を聴きながら、理屈を後から作っていくんです。
コードの話ってニッチすぎて一般にはなかなか語られません。
それ以外の話は下記に全部書かれているように思います。
下記「心象連環分析+評論家の筆力」記事は、音楽やる人が書くより明快ですね。