
これがトライトーンの解決慣習でした。半音で連鎖することにより協和音を得る、という慣習です。色分けしたように、外側に広がるケースと、内側に狭くなるケースが考えられます。これによって半音移行という慣習が生まれました。
それであれば、
c#,d#,a♭,bという各音がそれぞれ半音移動して、
c,e,g,c
というヴォイスリーディングも成り立つはずです。
この和声は、
G#m(11) ⇒ C∇
という進行になります。こうしたコード進行は調的ではありませんが、ヴォイスリーディングは非常にスムーズであり、これを音楽的に使うか使わないかは表現者の音楽性とリンクしています。
問題は、こうした進行の"根拠"を半音ヴォイスリーディング以外に個々人の方法論でどう添えられるかです。
「なぜそれが可能か」を自己方法論のスタンスとして考えておくのは、自分が用いる理由を明確にすることでもありますから、とても楽しいことです。
まず1音が半音上下の音に移行する、という意義は、不定調性論では、
「1音が数理親和音モデルにおいて反応しない半音上下の音に移行することは、基音の変化が起きた」
と言えますから、例えばcがc#に移動することは、cの反応音にないc#に移動した、という意味で、cと無関係な音に移行した、大きな変化と言えます(移圏)。これをもう少し具体的に考えます。
同時にc#はcの裏面であるf#の上方音でもあります。
つまりc→f#という裏面領域への変化が起きた、という解釈もできます。拙論では裏面領域はcと一体ですから、c→b、c→c#は基音の裏面領域への移圏、と表現できます。
それ以外の音への移動ないし、半音上下以外の音からの移動はcの親和音からcへの回帰または回遊と言えます。
つまり音の移行は、
・回帰/回遊
・移圏
の二つによって説明ができてしまいます。
それではより反応領域を絞って、上下の五倍音まで、と絞った場合はどうでしょう。この場合は、
・回遊/回帰→(c)e,f,g,a♭
・移圏→上記以外
となります。このような場合の関連性についてゲーム的に考えてみましょう。
G∇→C∇の変化は、
C∇の構成音gの上方五度領域和音がcに回帰した、と表現できます。
次に
G7 C∇(またはCm)
という進行の場合において、ドミナントコードとトニックコードの領域を反応させてみましょう。
※各音程はGから見たテンションとして ※各音程はCから見たテンションとして

左の表がG7の各構成音の領域音をG7のテンションとして解釈した場合の音程が記されています。右の表はG7の各構成音の領域音がC∇において与えられるテンション・構成音としての解釈が付されています。
G7の構成音が発する、B∇、D∇、F∇という反応領域を認めれば、
D∇/G7 - C
といった進行が意味を持ってきます。調性音楽的ではないですが、不定調性論的にこの進行が構築されたことになります。
また、
B∇/G ⇒ C F∇/G ⇒ C….etc
といった進行も作れます。

さらに解決する先のコードについてもみてみましょう。
上の図は、C∇を基準にG7がcを中心音にして解決するさまざまなコードタイプの構成音の列挙をし、それらを発する下方領域音のG7におけるテンション・構成音解釈を書き出したものです。
例えば、aはC6やCM7(13)などへのコードによる解決を考える際、aを発するd,fという音をC6の前のコード、すなわちG7等に配置することでスムーズな解決を促す(ここではd,fはG7の構成音)、という考え方です。
G7 ⇒ C6
またトライトーンの解決手法を発展させて、
a⇒dの流れを暗に含ませて、
G7(9) ⇒ Cadd9
という進行も作ることができます。
またIV⇒Iという負の領域からのa→e(回帰)を使って、
G7(9) ⇒ C∇
という形を説明する事もできます。
反応領域的にこの解釈をさらに応用して、
bはCM7のM7thとして解決先のコードに置かれる、とするとき、bを発するeやgをG7に配置して、
G7(13) CM7
とします。これでG7において発せられたe,gがCM7におけるbに収束共鳴する、と説明することもできます。これは数理的にはもちろんヴォイスリーディングもスムーズに作ることができます。
またe♭はCmの構成音ですが、
G7⇒Cmという解決を行う時、e♭を発するa♭,bをG7に含め、
G7(♭9) ⇒ Cm
とします。これは慣習的にもしっくりきます。
またb♭つまりCm7のm7thの音に方向性を持たせようとするとき、b♭を発する、e♭,g♭をG7に配置します。すると、
G7(♭13,M7) ⇒ Cm7
となります。
Dm7(♭5) GM7(♭9) Cm(またはC∇)
といった進行や
Dm7(♭5) GM7(♭13) Cm(またはC∇)
という進行などは、こうした反応領域による反応の連鎖でその進行を根拠づけることもできます。
またC∇の構成音を発するc,a,e♭といった音はG7の9th,11th,♭13thに当たるので、慣習的感覚を駆使して、
G7(9,♭13) C や
G7sus4(9) Cという進行を作ることもできます。
また単純にC∇のc=11th e=13th g=rootという関係を利用して、
C7sus4(13) C∇
という流れにするとヴォイスリーディング的に緩やかな解決進行を作ることができます。

同じようにこれらの音を解決される側から解釈して用いても良いでしょう。
G7 C6(m10)
という進行ですとC∇にaとe♭を用いたブルージーなトニックコードになります。
G7 C7(9)
となるとC∇の9thのd音に指向性を向けた解決進行の完成です。このほかにも様々なコード解決の流れを作ることができると思います。

さらにa,c,e♭という音と、cを発する下方音f,a♭等を駆使して和音を作ります。
例えば、a,a♭,c,e♭を用いて、A♭∇/Aというトニック・ディミニッシュ的なコードを作成し、
A♭/A C∇
というコード進行を作ることもできるでしょう。
最初に半音移動の話をしました。
四和音の進行やジャズにおけるヴォイシングの流れでは2音が同音で2音が反進行するという流れが最も理想的、と私も教えられてきました。

声部進行の例
ここでその半音移行の進行感を発展させてみましょう。

この表の黄色いセルの音はC∇の構成音に半音違いの音になります。これらをG7に加えることによってヴォイスリーディングを作ることもできます。これは先に解説しました。
GM7(♭9) Cm7
またマテリアルモーションとしたFm C∇やC∇ Fmという進行は、
c e g ⇔ c f a♭
という進行でこちらもcを中心にして半音で動く進行になっていますのでスムーズなヴォイスリーディングを作ることの出来る天然の進行になっていました。
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D♭ |
B♭ |
G |
E |
|
C |
A |
F# |
E♭ |
|
B |
A♭ |
F |
D |
また、十二音連関表を上記のように並べ替えることもできます。i,iv,vというエリアは半音で連なる領域でもあることが分かります。つまり最もオーソドックスなこの三つのエリアの移行は基本的に半音移動でも構成が可能であり、同時にV→I、IV→Iという強進行にも展開できる、ということが分かります。
1音の反応領域を数理親和音モデルまで拡張すると、進行できない音がない、ということが明らかになります。特に裏領域関連音への連鎖は、トライトーンの解決とリンクするなど、1音モデル外への音に対するリンクも拙論内での図式ができました。
一方で、反応領域を絞った際にも、和音構成音への反応領域を網羅することで、非調性的な和音構成や連鎖も論理的にできることがわかりました。
必ずこういう理屈で和音を作るわけではありませんが、自分の信じる方法論ないの理屈で様々な和音を構築し連鎖できるとわかることは、とても重要なことです。