幽界の音楽技法?にようこそ。
存在しない音を使いますゆえ、最近は周囲にそう揶揄されているのを楽しんでいます。それこそ異次元への扉が開いたらごめんなさい。
下記、検索してウチだけがヒットする用語はほとんど私の造語です。ご了承ください。
Cメジャーコードで使える音は?
例えばその小節がCで支配されている時、

この小節ではどんな音が使えるでしょう。
(参考)
まずは5倍音までを反応させて音を選ぶと、c,e,gがそのまま現れてきます。元々C∇ですからCでc,e,gが使えるのは当たり前ですね。
次に、e,gについて同様の処理をします。

このように同じ領域だけを反応させる考え方を「反応領域」と言います。音階制作者がルールを決めることができます。ちょうど数列の規則が決まり、具現化されると形が決まっていく、みたいな自動パターン生成モデルに似ています。

ここでできた音階は、
c,d,e,g,g#,b,
という6音階です。各構成音の上方五度領域まで反応させた時の音集合です。
同様に下方を反応させることもできます。

下方5倍音までを反応させています。eであったら、aやcはそれぞれ上方倍音にeを持つ存在、という意味です。
ここで生まれる音階は、
c,d#,e,f,g,g#,a
という音階です。
またそれぞれの上下の領域で3倍音までを反応させると、アイオニアンが出てくるので有用です。

あとはスケール設計者が、自分が親和するという音をピックアップして音階を作ってください。
また、cの上方五度領域はbの下方五度領域でもあります。
このように類似した領域を「結合領域」と言います。この結合領域のそれぞれの基音と上下の五度音を反応させると、下記のようになります。恣意的な判断ですが、音数が多くなるので三度音は一旦反応から外します。

ここで生まれる音階は、
c,d,e,f#,g,a,bのリディアンなんですね。
C7で使える音は?
セッションとかでC7一発!みたいなことはしますか?よくそういう時はCマイナーペンタゴリ押し、とか楽ですよね。
先ほどは、反応領域をあまり考えず用いることで出てきた音階を示しましたが、今度は意図的に反応領域を調整してペンタトニックを出してみましょう。

それぞれの構成音の下方音だけ反応させると、必然的にF7が出ますので、これを合わせると、
c,d#,e,f,g,a,b♭
というミクソリディアン#2というスケールが生まれ、この中にペンタトニックが含まれています。eに下方を少し控えると、
c,d#,(e),f,g,b♭
というCマイナーペンタ+M3みたいな実用的な音階ができちゃいます。ブルースがi-ivの交換であることを反応領域に反映させた結果です。
b5thブルーノートの検出
さらにC7がceg+eの裏領域であることを考え、全ての音の裏領域を反応させると、

こうなり、C7+F#7となります。この結果、
c,c#,e,f#,g,a#
とb9thとb5thのブルーノートも検出できます。これらを組み合わせて、
Cのマイナーペンタ+M3rdと
C7(b9,#11)
から、Cマイナーペンタ+M3rd+b5thのよく出てくるブルーノートスケールも割り出せます。
なお、本来のb5thの意味合いについては下記シリーズをご覧ください。b5thは初期のブルースには出てきません。cが主音の時のm3=e♭がaからみたb5thになるだけです。ルートのcに対して五音音階の"導音"に当たるa音がどんどん主音化した結果、m3rdが見かけのb5thになっただけです。
この二つの音階を足すと、
c,d#,e,f,g,a,b♭+c,c#,e,f#,g,a#
=c,c#,d#,e,f,f#,g,a,a#...とコンディミみたいなスケールも生まれます。
組み合わせ次第で、アウトアイドなスケールも作り放題です。
ジャズのアドリブにおいて"何とかスケール"と言うものが特定されて利用されるのは、そのようにポジショニングを指定した方が覚えやすいし、即興的なアプローチにおいても扱いやすいからです。
しかし本来は様々なスケールが合成されていたり、欠落した音があったりするのであり、半音が連続しないスケール使用を限定するのはバークリー由来のコードスケール論が背景になっているからです。バークリー論自体もシリンガーシステムが一つの和音に一つのスケールを同定する癖のあるシステムが元になっています*1ので、音楽の普遍的なやり方というよりも、シリンガーのやり方の解釈から展開している独自論的なものと考えて良いと思います。バークリーシステム(マイルスやエヴァンスなどのジャズスケールの使い方/方法を体系化し、世に広める役割を果たした)を用いて、和音と音階の使い方、自由な演奏がある程度できるようになったら、バークリーシステム自体も疑って、自分なりの方法論を作っていった方が自分の音楽を作りやすいと思います。
下方倍音列を関与させてできること
西欧音楽理論が取り込まなかった下方倍音を音関係を考えるアイテムに加えることで、民族的な音階や、ジャズのアウトサイドスケールが作れます。つまり境界なき音階づくりが可能になります。
また、余談ですがこの12音連関表は和音の集合が識別しやすいので、複雑なコード進行から旋律構成をつくりやすいときがあります。例えば、
DM7 |CM7(b5) |EbmM7 |B7 |
こういう不定調性進行があるとき、通例のようにコード一つ一つ設定するのは省略し、前半と後半でどんなふうに音が現れるかをみてからフレーズ構成を考えてみましょう。

前半はF#sus4とAsus4が現れています。後半は、D#m、Bm7、D∇、などが見て取れます。まず現れた音秩序を背景にフレーズを作ってみます。

これをマザーメロディとして、自分なりのイメージを広げます。

最初と全然違うじゃないか!と思うかもしれませんが、いわば最初に作ったのが練習試合で、そこから作戦を練り直す感じでもう一度コード進行に当たると、より自然なメロディになることが私にはよくあります。
もう1回人生が送れるとして、今回の人生を参考に同じような人生を送りますか?
てたとえが悪魔的か(笑)。
また、微妙に調性的な感じの、
C7 |Eb7 |F#m7 |
というコード進行があった場合も、コードスケール理論とは全く違うアプローチが可能です。
普通にアナライズしてスケール設定するやり方は省略します。
構成音を並べてみると、

ちょうど基音領域と上方領域を網羅していることがわかります。
この時cをこの位置にすると、

7型にメジャーコードが、L型でCmが出ます。この辺はネオ・リーマンセオリーと一緒ですね。形でコードタイプがわかるんです。つまりこのコード進行は、
C,D#,F#,Aのメジャーコード、
Cm,D#m,F#m,Amのマイナーコード
が含まれていることを意味します。
これに基づいて例示します。
1)コンディミを使う

2)アルペジオを使う

3)上記を把握した上でメロディを自由に作る

調性音楽的でも、全く機能的ではない旋律作成でも可能です。メロディの作り方については、ジャンルごとに勉強していただけているという前提のもとに。
自然の景観を生かす
これは日本人得意だと思うのですが、あまりに調性音楽の人工的美的価値観(コンビニ)が便利すぎて、もう自分の家の小さな畑に育つ野菜作って、好きなだけ調理して食べる、みたいなことはする気が起きないのかもしれません。
例えば、

こういう進行から下方倍音他を駆使して幽玄?を作ってみましょう。こういう和音進行に流れを作ることができます。イメージが広がりますね。

これを下方倍音で拡張するために、不定調性論における増四度環という音構造の背景システムを用います。

上の列が上方倍音を作る列、下の列が下方倍音を作る列です。教材では二層鍵盤と呼んでいます。悪魔の鍵盤ですね。
これを見ると、
c#-b,
d-b♭
d#-a...という対応があります。まあ、つまりどんな音もc中心の世界に押し込めることができます。その前段として、下記程度は許せますか?

破綻している、と言われるかもですが、まあええんちゃうん?と言える人は次に進んでください。

わーこれは手2本で弾けないし無理、という感じかもしれません。もっと綺麗に並べられますが、とりあえずこのくらい歪つが自分は好きなので。
これが自分ちの痩せた畑状態(マザーメロディ)です。
ここから野菜を育てましょう。今回はできる限り忠実に崩します。

エンディングだけ繰り返して上部に同じ構成音を反転加工してます。

このように増四度環を一般化すると、例えば上記のFM7に該当するところで使われる
b♭は11thではなくて、下方のvを上部のiv化した、と思ってみてください。
同様にv#はiii、i#はviiが変化したもの、と思ってみてください。
そう思って初めて、それが響くように表現を考えよう、って言う気になるんです。
え?そんな気分だけで不協和は消えないよ!
そうではありません。自分が考えた方法論から生まれる音一つ一つの別の姿を見つめてください。西欧音楽理論ではなく、日本人の心に従ってみては??
元々庭にある石や木の非対称性をそのまま生かすように庭を作る、って日本人得意のはずです。
非秩序型秩序
このように、自分が了承できる範囲にあって、偶然的または意図的にでもそこに置かれた音なら何でも自分の表現にできる、という常識由来の補助輪が外れれば、自分由来の根拠なき混沌のバランスみたいな感覚で音楽できます。
今回の原理原則やアプローチの先に「協和の剥離」「協和の凍結」みたいな、先日の記事でも書いたやり方があるわけです。自分はまだそこに反抗しているだけのような稚拙さを感じたりもしますが。
偉そうに語っちゃいましたが、ただ自分の下劣さを肯定したいだけかもです。
だからこれを誰かに進めようとは思いません。
下記はFM7-G7-C-A7-FM7-G7-Cです。


下方倍音が通例和音の上でどう響くか?を了承できないと、受け付けない響きかもしれません。
響くところと響かないところ、穏やかなところと悪寒が走るところと。まさに自律神経が弱い私なりの感覚を正直に表現したものがこうした音の響きの連鎖であり、これは誰かに理解してもらうべきものではなく、ただ自分のことを自分が音楽という土壌の中で受け入れたいがために創り上げた自己表現なのだと感じます。
一般には下記の話の方が話が面白いかもしれません(より従来音楽的な視点から入れます)。
こういう非秩序型秩序に、自分を紐解くヒントを感じてしまいます。
自分の表現だと錯覚しているのかもしれません。
*1:Tonic=stable harmony Subdominant=transition harmony Dominant=tension harmonyとするなど従来機能和声でシリンガーは考えてません。バークリーシステムはバランス良く各時代の音楽理論を併用して成り立っている練られたシステムです=ジャズ理論の布教に成功したシステム

