教材の最後のパートです。
178,モード変化のための表情音
和音構成音の
半音下の音=ダークノート
全音下の音=ウエットノート
半音上の音=ライトノート
全音上の音=ドライノート
※これらの音は多重に一時解釈される音もあり、その色彩感は多種多様です。このようにコードトーン以外の音を総じて表情音(エクスプレッションノート=E.N.)と呼びます。
※なお、これらの命名は筆者の音楽的な印象に基づいたものですので、自由に命名しなおしていただいて構いません。
こうすることで、12音全てに序列をつけてコードにあてはめていくことができます。アイオニアンを例にとれば、
c d e f g a b
このときCM7のコード上ではfがアヴォイドノート(A.N.)でした。しかし実際は8分音符以下の音価でこの音は利用されます。そうしないとリディアン(アイオニアンの4度が半音上がったモード)との区別をつける方法がないからです。つまりこの音をeに帰着するライトノートとして活用することでアイオニアンの性質を示すことができます。
またCM7はc,e,g,bという構成音ですから、d,f,aがエクスプレッションノートとなります。
179,表情音の一覧表化と抽出モード
C.T.=コードトーンCならc,e,gです。
B.N.1、B.N.2=ブルーノートです。先のサージェントと山下の研究から、♭3,♭7をブルーノート1、♭5、♭9をブルーノート2とします。
R.N.=レッドノートです。M3rdとM6thがここに来ます。
H.N.=ハイドノート、いわゆるコードトーンの裏領域の音です。
これはアイオニアンの音を塗りつぶした例です。ここではメジャーコードのためレッドノートは自然に響きます。
いくつかスケールを作ってみます。
Cハイドスケール
c,c#,e,f#,g,a#
これらのコードトーン以外の音を用いてコードトーンに帰着すれば、G7-Cという想定されたコード進行においてオルタードドミナントフレーズを弾いている解釈になるわけです。
Cブルー/レッドノートスケール
c,c#,d#,e,f#,g,a,a#=Cコンビネーション・オブ・ディミニッシュ
c,d#,e,f#,g,a#,c=Cブルーノートスケール
※ここで述べる「ブルーノートスケール」はブルース音階とは異なります。
Cダークスケール
c,d#,e,f#,g,b
Cライトスケール
c,c#,e,f,g,g#
Cドライスケール
c,d,e,f#,g,a
Cウエットスケール
c,d,e,f,g,a#
Cにおいて、その音価を工夫すれば音階的素材は無限に考えることができます。
<テンションノートとしてのE.N.>
もちろんこれらの表の音はテンションとして体系的に用いることもできます。
<モード選択の限界>
一つのコードに10のコードスケールが該当したとして、四つのコードによる和声進行がある場合、その組み合わせは、210種類です。
あなたが今そのうちどれかを使おうとして、順に弾いて試していったとします。40種まで試したところで一つ選んだとして、果たしてそれはベストでしょうか。その先41個目からまた選択したときにもっとベストなものは絶対に現れてこないと断言できるでしょうか。
モードを選択する、というのはある種既存のプログラムを受け身で考える、ということです。
スケールを選ぶ、という思考ではなく、音楽全体の印象を想定したうえで、自分の中にここはこういう表現だ、と感じるようになるまでは音楽的クオリアを磨き上げていってください。そうすることで「モードを選ぶ」という発想にはなりません。
180,表情音の音程についての不等式
コード構成音から半音下までの音域=ダークノートエリア
コード構成音の半音下の音からさらに半音下までの音域=ウエットノートエリア
コード構成音から半音上までの音域=ライトノートエリア
コード構成音の半音上の音からさらに半音上までの音域=ドライノートエリア
コードCにおいて、c,e,gという構成音にたいして、cを例にとると、c=Iのとき、
d≦e♭<e = ライトブルーノートエリア
e♭≦e<f = ライトレッドノートエリア
b≦b♭<a = ダークブルーノートエリア
a≦g#<g = ダークレッドノートエリア
という基礎的領域に加えて、各コードトーンに対して、
※ここではcを例にとります。
c≦c# = ライトノートエリア
c#≦d = ドライノートエリア
c≦b = ダークノートエリア
b≦b♭ = ウエットノートエリア
とします。
微分音的思想もこれによって、機能和声思考と整合性を取りながら各音を設定できます。
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あくまで12音が基本となる音世界において造られる範囲指定です。
個々人がどういうピッチクラスで音楽を作りたいと思うか、でこれらの体系は変わってきます。
特に3度や7度をより細かく分割したい、とか、9thとb9thの間をさらに分けたい、といった感覚をお持ちの方が自身の感覚を"特殊"とすることなく、自分で微分音の割り当てを行うときなどにもこうした考え方の発展で独自論をまとめることもできるかもしれません。