掛留概念の拡張〜動静分類
sus4コードで解決できるのはC∇だけなのでしょうか。
例えば、Csus4-Fmです。構成音の変化はcfgからcfa♭となり、Csus4-C∇と対称的な変化をしていることがわかります。
Dm7-G7-CM7-CM7(♭13)
このトニックディミニッシュのような効果を「ざわついたコードでの終止」などと表現しました。
同じような掛留概念進行の崩壊はブルースがトニックコードをセブンスで終止させることで一般化していた、ともいえます。不安定な和音、すなわち動和音による解決です。
それまでは壁に掛けてあったものを床に下ろす作業によって終止していましたが、今度は床にあったものを壁に掛けなおす作業で終止することもあり得ます。
一つの和音から他の和音に進行するとき、
・付加音を用いず
・互いのコード構成音の共通音が非共通音より多い場合
掛留概念の拡張(静進行)とします。一方。
・構成音の変化が半数より多くを占めるような場合
これを「第一種動進行」とします。
また四和音⇒六和音といった付加音による和声進行も、変化音が多い進行と解釈し、この場合「第二種動進行」とします。
C∇⇒CM7(9)のように変化音が少ないものは静進行になります(後述)。
この掛留概念の拡張を、Cu5を中心に考えてみましょう。
Cu5=CEG
この各音を一音だけ自由に動かしてみます。
C#EG DEG D#EG EEG FEG F#EG GEG G#EG AEG A#EG BEG
とりあえずcを動かしてみました。これらのコードがどのように呼ばれようと、もしここに掲げたコードがCu5から移動されたとすれば、これらは掛留されたのです(静進行)。この中から結合領域として確立できるものを優先的に扱ってみましょう。上の11パターンの進行からは、
c#egは上方エリア音群への移行。
dgeはdの下方四度領域。(Dl4)
aegはaの上方四度領域。(Au4)
a#egは上方エリア音群への移行。
begはbの下方五度領域。(Bl5)
またC∇-Cm-C∇という動きも掛留であるといえます。
当然C∇-C(#5)-C6というようなクリシェも掛留の連続と考えられます。
C-C#dim-Cは「回遊コードである」「パッシングディミニッシュである」などといわれてきましたが、この考え方からすると掛留和音の拡張と考えた方がよいでしょう。またEm-C/E-Emのようなコード進行も掛留進行と考えることができそうです。
・その和音の構成音からの一音変化(一音除去、一音付加も含む)による掛留進行のことを「第一種静進行」とします。
・その和音の構成音からの複数変化(複数音除去、複数音付加によりコード構成音数と同等、または少ない場合に限る)による掛留和音のことを「第二種静進行」とします。
・cがさまざまなオクターブで5音使われた和音の時、次の和音で、それぞれの音域で2音変化していたら第二種静進行ですが、同様に3音同じで、残り二音がどの音がどの音に移行したか不明(音域の指定ができない)という和音への変化を持つ進行は「変格第二種静進行」とします。
掛留概念の進行は、Csus4→C∇はもちろん、
C∇ Csus4にもあてはまることになります。例えば、
Dm7 G7sus4 CM7 C7sus4
といったコード進行も可能です。
C7-C#dim7
この進行における二つの和音は共に動和音です。しかしこのコード進行における構成音の変化はC⇒C#でたった一音です。これは掛留進行です。つまりこれは動和音による静進行ということができます。
C#M7-CM7はどちらも静和音であり、全ての構成音が移行しますので「動進行」といえます。これは静和音と静和音による動進行です。
またG7-CM7(#11)は、どちらも動和音でありながら構成音の変化も多い動進行といえます。
最後に代表的なコード進行を動和音、静和音、動進行、静進行等で考えてみます。
まずDm-C∇。これはdef-cegで共通音が少ない進行です。DmもC∇も静和音です。ということはこのコード進行は静和音から静和音への動進行ということが出来ます。
次はEm-C∇。これは先ほども例に出しました。共通音が多い進行です。ともに静和音ですから「静和音から静和音への静進行」ということができます。
F∇-C∇。これはfac-cegと共通音の少ない進行です。よって静和音から静和音への動進行です。
そしてG∇-C∇。これも静和音による動進行です。
ではAm-C∇は?これはace-cegで共通音のほうが多い進行です。よって静和音による静進行です。
Bdim-C∇。このBdimは内部に裏領域が存在します。よってこのコードは動和音です。Bdf-cegであり「動和音から静和音への動進行」ということが出来ます。
現状では動和音はACTIVE HARMONY、静和音はSTATIC HARMONYでAct,Sta,と略します。また動進行はACTIVE MOTIONとし、静進行はSTATIC MOTIONとし、A-Mot,S-Mot,等とします。
それでは、ここまで列挙してきた静和音、動和音、動進行、静進行を駆使してコード進行を分析、分類してみましょう。なお、
・楽曲中の和音を動和音と静和音に分ける行為を「和音の動静分類」
・楽曲中の和声を動進行と静進行に分ける行為を「和声の動静分類」
とします。
・静和音から静和音への静進行(S-S-S=3S)
裏領域を持たぬ二つのコードが構成音変化を最小にとどめた進行。
最もスムーズで雑多な流れのないもっとも静かな雰囲気を持つ和声進行。
C∇ C∇/B Csus4/B♭ Csus4/A
C∇ Caug Csus4(6) C7sus4
C∇ Cm C5add9
C∇ C∇/D C∇/E C∇/F
・静和音から静和音への動進行(S-S-A=2SA)
裏領域を持たぬ二つのコードが構成音変化を伴い移行する進行。
静かなダイアトニックモーションや、同系列の和声進行から全く無関係な印象へ変化する事もできるリズミックで動きを伴う進行。
C∇ Dm Em F∇ G∇ Am Cu4 C∇
※Cu4はBm7(b5)(11)のようなコードです。
Cm B♭∇ A♭∇ G∇ Cm
CM7 FM7
・静和音から動和音への静進行(S-A-S)
展開する際のコード進行、ドミナントへの移行、しずかな発散進行。コードの種類が変わるので二つのコードの流れで判断することができる。
C∇ C#dim7~
C∇ A7~
C∇ Calt5
C∇ C∇/C#
CM7 C7~
C∇ E7~
・静和音から動和音への動進行(S-A-A=S2A)
展開する際のコード進行、ドミナントへの移行、より動きのある発散進行。
C∇ G7~
C∇ F7~
C∇ B♭7~
C∇ D7~
CM7 FM7(#11) ~
CM7 Dm7(♭5) ~
・動和音から動和音への静進行(A-A-S=2AS)
裏領域を持った不安定な和音が静かに移行する、不安定維持進行。
C7 C7(#5) C7(13) C7
CM7(#11) C7(#11)
・動和音から動和音への動進行(A-A-A=3A)
裏領域を持った不安定な和音が大きく移行する、不安定展開進行。ブルース的進行。
A♭7 G7 C7
Dm7(♭5) G7 C7
C7 F7 D7 G7~
C7 F7 G7 C7
・動和音から静和音への静進行(A-S-S=A2S)
不安定和音から、安定和音への静かな安定化/収束進行。
C7 CM7
G7(9) CM7(9)
Bdim7 Cm(11,♭6)omit5
・動和音から静和音への動進行(A-S-A)
G7 C∇
D♭7 CM7
F7 CM7
Dm7(b5) CM7
G7 Cm7
不安定和音から、安定和音へダイナミックに進行する、強力な安定化/収束進行。
===============
次に行く前に、掛留進行の面白い利用例を紹介しておきます。
これはsus4概念の拡張(掛留進行)と定義された、2音を共通に持つ和声の関係を連鎖させたコード連結のモデルの話です。
<メジャートライアドの発展>
素材としてCu5を用いて一般的によく見られるコードへ連鎖変化してみましょう。
ceg-beg-aeg-deg
不定調性においてこれらの和音間の移動は掛留進行としてとらえます。ここではCを変化させました。では次にEを変化させてみましょう。
Ceg-cb♭g-ce♭g-cag
次にGを変化させてみましょう。
ceg-ace
これには二種類しかありませんでした。
領域を融合させて作る和声単位もあります。ul3,ul5,ul7,us3,ls3等の和音です。これによりオーグメント、ディミニッシュ、サスフォーなどのコードが和声単位として確立されました。この和声単位の考え方は異なる領域が持つ対称性というものを意識して作ったものです。
ul3への変化====ceg-cfg-cdg
ul5への変化====ceg-ceg#
ul7への変化====ceg- ced
us3,ls3への変化====ceg-c#eg-ega#
次は裏領域の音です。cを基音とするならばf#領域の音をさします。
ceg → f#eg
cga# → f#ga#
cfa♭ → f#fa♭
cfd → f#fd
となります。つまり基音だけ裏面のものに置き換えてしまうことで、和声単位を確立するわけです。さらにf#の場合をcに置き換えると、
f#a#c#⇒ca#c#
f#c#e⇒cc#e
f#bd⇒cbd
f#bg#⇒cbg#
クラスター(密集和音)的和声単位の登場です。この置き換えは機能和声でいう「代理」ではありません。ceg+gbdは本来はCM7(9)ですが裏面領域を用いるとf#eg+c#bdとなり、その和音はより密集配置をイメージするものになります。つまりこのような和音を作ろうとしたときこの基音領域変換を用いて不協和の度合いを考えるというのも一つの方法です。
現にこのコードはCM7(9,#11,♭9)といっても良いわけです。アンサンブルにおいてはcがベースで存在しているでしょうから、全体としてこの和音はアナライズできることになります。
さらに側面基音の領域を用いるタイプのものが挙げられます。
ac#e-aeg-adf-adb
e♭gb♭-e♭b♭d♭-e♭a♭b-e♭a♭f
この基音部分をCに変えると、
cc#e-ceg-cdf-cdb
cgb♭-cb♭d♭-ca♭b-ca♭f
重複するタイプなので、使用上あまり神経質になることはないでしょう。
クラスターなどの和音は理論による解析が本来不可能な和音です。しかしクラスターという存在の単純モデルをどうやって作るかということに関してはこの項によって可能になりました。たとえばCsus4のcを裏面にするとf#,f,g(拙論表記でF#±)というクラスター和音になります。
C∇という長三和音と、c,c#,dというクラスターなら...

c#はgの裏面音です。よって
c,c#,dはGsus4(g,c,d)の構成音gを裏面音にしたものです。上記進行は、
Gsus4-Cという一般的な進行において構成音を裏面領域に反応させた結果、とも言えるわけです。
希機能動静進行について
コード進行が下記に分類されました。
①動和音→(動進行)→動和音
②動和音→(動進行)→静和音
③動和音→(静進行)→動和音
④動和音→(静進行)→静和音
⑤静和音→(動進行)→動和音
⑥静和音→(動進行)→静和音
⑦静和音→(静進行)→動和音
⑧静和音→(静進行)→静和音
C |( ) |
という進行で考えてみましょう。
Cは静和音です。
⑤静和音→(動進行)→動和音
とすると、次のような解釈で和声を移動させることができます。
i;
C |Db/B |
※Cは静和音、D♭/Bは動和音、Cから半音または全音で動かせる音で作れる和音の一つです。これを二つを並べると動進行が生まれる、という意味です。
ii;
C |Eb/Db |

iii;
C |Dsus4(10)omit5/C |

iv;
C |Bbaug/C |
※Db(b5)=d♭,f,g
※Dsus4(10)omit5=d,f#,g
⑥静和音→(動進行)→静和音
とすると、
i;
C |DbmM7 |

ii;
C |Bbm/C |

iii;
C |A7sus4omit1/E |
※A7sus4omit1=e,g,d
⑦静和音→(静進行)→動和音
とすると、
i;
C |Dbalt/C |
ii;
C |C/Db |
⑧静和音→(静進行)→静和音
とすると、
i;
C |Csus4(10) |
ii;
C |C/Eb |
C |Db/B /Bb|Dm7/A |
C |Ebadd9/Db |Dm7 |
C |Dsus4(10)omit5/C | Dm7(11) |
C |Bbaug/C | Dm/C |
続く和音をDm7にして、まず最初の四つを音にしました。四つ連続で間隔を置きながら流れます。
C |DbmM7 |Dm7 |
C |Bbm/C |Dm7/A |
C |A7sus4omit1/E /Eb|Dm7 |
C |Db(b5)/C |Dm7 |
次の四つも音にしてみました。
C |C/Db |Dm7(9) |
C |Csus4(10) |Dm7(9) |
C |Cadd9/Eb | Dm7(9) |
次は最後の三つです。連続で流れます。

たとえば、Cというコードの構成音のどれかを半音ずらすと、BまたはC#の構成音に移動することになると言えます。
また、Cの構成音を全音動かすと、A#またはDの構成音に移動する、と言えます。それを示したのが上の表です。
そして表全体を見ると、ここに12音が全て表れているのが分かると思います。
つまり、Cのコードトーンを他のコードに変化させる、という行為は構成音を半音、又は全音動かせばあらゆる変化が可能です。
C→G7も結局この表の音から作り出せるわけです。

赤丸がG7の構成音です。
12音が全音移動でほとんど現れるなら、五度で移動、とかは音符の移動の見かけの問題であった、ということになります。
ということは、次のような移動も声部的にはOKなわけです。

きれいに半音でつながっていますね。この構成音はEM7の構成音ですから、

C→EM7
というのは美しい声部進行を持っていることが分かります。

(注;異名同音等、方法論流派により音名表記揺れがございますので、それぞれの方法論で置き換えて解釈ください。)
これは、
CM7 |F#M7 |
ではあえて遠い音を狙っていこうとするとどうでしょう。
C→( )→Dm7をみてみますと、

12音を調べて頂くと分かりますが、全音離れた音はありません。かならずどちらかの音の半音上下の音に該当してしまいます。
=====
もちろん進行の仕方によっては縁遠い音を探すこともできます。

これはC→Am7ですが、D音が全音離れている音、として存在する事が分かります。
だから理屈の上ではCの後にどんな和音を挟んでもDm7にスムーズに流れる、わけです。
たとえば、好きな進行に、
C |Gsus4/Bb |Am7 |Bbsus4/Db
というのがあるのですが、
(音参考)
このGsus4/Bbというのは、一般化してしまえば、C7(9)/Bb的な感じのクオリアが展開しているだけです。ちょっと音を省略するだけで全く違った印象を人は持ちます。
参考までに各種資料をアップしておきます。



※X(b5)、Xdimの表はviが出てきません。







12音で見られる表も添付します。
基礎和音部分

テンション部分
