音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

コード分析を通してわかること〜コードアナライズ作業周辺について丁寧に考えてみよう

膨大なコード分析をやってきて思うことです。

自分では分かっている気になります。

「自分が知ってる範囲」をわかった気になる性質が脳にはある、ということです。

 

また、音楽など、すべてを掌握した分かったつもりでやらないと表現などできません。知識に偏りがあるから「個性的な思想になる」「個性的な音楽になる」と言えます。

「お前は無知だ」という批判は当たり前で、批判になっていません。それは全員それぞれのレベルにおいてそうだからです。

それに甘えず、利己的にならず。批判的にもならない、というのはなかなか難しいです。

黙って作品を作り続ける、のが先人たちがとった歩み方なのかな、とも感じます。

 

なんだかんだ言ってやっぱりその人が何に魅力を感じるかが、その人を表すのではないでしょうか(不定調性論的思考)。

 

コード進行を分析したのは、曲の特徴がすぐ分かってとても面白い!からでした。

それが熱がこもってしまい、いかにも「コード進行に楽曲の魅力が満載である」的な表現を一時期してしまっていました。アーティストからすればいい迷惑です。

音楽は作詞作曲の着想からのドラマからレコーディングで起こるドラマやアーティストの人生の全てのグルーヴ、全ての追求されたサウンドが詰まって、かつ半分は偶然の産物で完成します。

 

その"結果論"を外野が論じても事実を語るには全く至りません。

 

楽曲の価値を語るのは「そう言って欲しい」を満たすエンターテインメントです。

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例えば「ひこうき雲」のBbm7は短三度移行がドラマチックなのは、そのエピソードももちろんですが、ダイナミックな"飛翔感"と"躍動感"が"ひこうき"という存在と、一つの死への思いなどと全てイメージがリンクしている(と私が思った)からです。

これはこのコードがそういう雰囲気を醸し出しているのではなく、荒井由実というアーティストの感覚がそこに全て封入されたような、歌詞、雰囲気、音の流れる順序、ストーリーがスパークしている素晴らしい一例だから紹介したくなるわけです。

これはただの短三度移行です。

 

ビートルズ(メロディセンスがずば抜けすぎていて簡単なコードを繋げるだけでよかった)や、スティービー・ワンダー(盲目であるがゆえのコード進行パターン=あまり指を動かさなくて済むクリシェ的応用を編み出してしまった)など、本来は彼らでしかできない要素もたくさんあり、コード進行だけ真似ても、コードアナライズだけでも、それがなぜあんな音楽を作り出したかのスキルまでを把握することはなかなかできません。

 

「このコードはすごい」などと書いていますが、アーティストはそんなところで音楽をやってはいません。

そうやってアーティストのすごさをディフォルメし、プロモーションすることができるツールとして、コード進行解析プロモーションがあり、アーティストが"難しいコード進行"を作る文化が70年代以降のフュージョンにもありました。

"楽曲志向"なんて言葉も生まれました。

 

だからすごく時間のある方は、好きなアーティストの自伝を読みまくって、耳コピしまくって、演奏しまくる、っていうのをやってみてもいいです。

ものすごくわかった気になれるんで!!笑

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楽曲志向だけになるのは考えものです。

ライブの衣装を心配する、など時間の無駄だ、考えている人も出てきます。

曲と演奏が上手ければトレーナーを着て歌っても感動が伝わるはず、と。

確かにそれはそうです。小さな落とし穴です。

ただ衣装を気にするタイプには、その人が努力によって作ってきた体型を美しく見せるためや、懸命にライティングする照明さんの照明を活かすためや、作曲者の曲の印象に映えるような歌い手の「作曲者に対する答え」のようなものまで全て余すところなく伝えたい、と思うアーティストがいます。

自分の周囲に関わる人を無視するようなことをする一流プレイヤーはいません。
だからこそ完璧を目指します。

全ての人の努力に対してそのステージで報いたい、と彼らは思っているからです。またそれを見ている全ての人たちに夢と人生讃歌を伝えたい、と無意識に思っているからです。そういう人は本当にヒーローだと思います。

 

CM7というのはその曲のその小節を極限までディフォルメしたシンボルです。

極端に言えば作曲者の外側にある、演奏のための記号、と言ってもいいくらいなものです。

 

アーティストが「CM7という概念を弾いている」わけでは無いんです。

コードネームなどは様々な技を繰り出した後の残像みたいなものです。

だから"このコードがすごい"というのは、実に解釈者側が感じやすいストーリーを追ったに過ぎない、ともいえます。

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もちろん楽曲分析の全てが悪いわけではありません。その辺の良し悪しも全て把握した上でなぜ楽曲アナライズをするというのはいいと思います。コード進行分析はシンプルで面白いですからね

ビートルズの「Something」の歌はじめ2小節目がCM7です。

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また「Elenor Rigby」のブリッジ部分3小節目がCM7です。

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二つの曲のCM7はまるで違う響きをしていますね。これが同じCM7で楽譜には表記されてしまいます。「ポップスは単純」なのではなく、表記システムがシンプルで素晴らしいのであってアーティストが命をかけていることはバッハの時代から変わらないと思います。

 

この便利なところは、

SomethingはCメジャーキーのトニックのIM7として

Elenor RigbyはEマイナーキーのサブドミナントマイナーVIbM7として

CM7が使われている、というように調と機能の概念を使うとその違いが明確にできるのが機能和声論の優れたところです。見える化した素晴らしいシステムです。これによって仕事が早く回るようになったのも確かです。

 

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コード進行にハマってしまった私を見て、音楽の面白さとか解釈の面白さみたいなものを感じていただければ私としては大変嬉しく思います。