音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

<不定調性論用語/概念紹介65>ブルーノートの解釈2

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 大半は、19世紀半ばの南北戦争以前にアフリカ(サハラ砂漠以南のブラックアフリカ)から奴隷貿易によりアメリカに連れてこられた奴隷の子孫である。ただし若干だが、より新しい時代に自由な移民として渡米した黒人やその子孫もいる。彼らをアフリカ系 (African) と呼ぶべきかどうかについて、また、黒人 (Black) と呼ぶべきかどうかについては、論争がある。中米に奴隷として送られたのちに移民として渡米するなど、より複雑な経緯を持つ者もいる。 

 引用;アフリカ系アメリカ人 - Wikipedia

彼等の音楽がブルースになったことは間違いありません。

だからまず「サハラ以南のブラックアフリカ」に住んでいた人がどんな音楽を持っていたか、ですね。

 

奴隷海岸といわれる、大西洋側のアフリカ西海岸の民族が該当すると思いますが、別例として、キューバに連れて行かれた民族の分布図が下記にありました。

図録▽キューバ黒人奴隷の出身部族 


アフリカ系移民が奴隷解放とともにアフリカに帰還し建国したリベリアという国があります。

リベリア - Wikipedia

リベリアの国歌がまさにアメリカとイギリスなかんじです。国旗も星一つの星条旗です。アフリカの国歌って西洋かぶれが凄くて逆にこれこそが思想の支配の象徴なのではないか、と君が代の我らは思うわけです。

日本も君が代が生まれる寸前まで西欧風な国歌にされそうでしたからね。

三つの君が代の話

 

まずはこのあたり,アフリカの民族と、その音楽的歴史を探るところから切り込むべきなのでしょう。

www.youtube.com

リベリアの伝統的な結婚式のダンス、と銘打たれています。

逆にキューバの匂いがしますね。

リベリアの音楽ということです。長三度のハモリのようなものを感じます。

ここでも書きましたが、アフリカ部族のハモリは地域によって決まっています。

民族によって、一つのフレーズにどんな"ハモリ"をする癖があるか、決まっている、というのです。とりあえずはそのことだけ覚えておいてください。

 

www.youtube.com

 

ガラ人 - Wikipedia

ガラ人の音楽、ということです。最近の録音かもしれませんが、この ノリの感じ、日本民族にはないですね。繰り返されるリズムがどんどんトランスに導く音楽性です。

基本は儀式用に歌は使われていますから、とにかく儀式の後半に向かってトランスして神を肉体に降ろす、という目的があります。

ブルースやロックンロールは、この気風が残った文化と言えます。

 

駆け足ですみませんが、こうしたリズミカルな音楽性がキリスト教への改宗に伴い、アメリカ大陸で讃美歌と融合し(黒人霊歌の誕生)、独自の宗教的な歌唱が生まれ、それが庶民の「床屋和声」と融合・拡張します。

皆が床屋で髪を切るのを待つ間、楽器を持ち寄って歌われた日頃の想いがやがてブルース音楽となり、現在のポップ・ミュージックとなります。アフリカンアメリカンは身体能力、運動能力も世界一ですが、教養や芸術的能力もおそらく世界で一番優秀なのではないか、と思っています(だから最も長く生き残ってきた)。

それを奴隷として扱ったのは、白人のエゴであり、彼らより劣っているのではないか、という脅威がどこか潜在的にあったがゆえに差別も加速したのかもしれません。

ちなみに録音物という意味では、世界最古の録音は、1860年だそうです。

www.afpbb.com

 

最古のブルースレコードは、メイミー・スミスの「crazy blues」だということです。

ブルース - Wikipedia

かのロバート・ジョンソンの初レコーディングは1936年です。彼はデビュー二年後に死去しています。

聞いて頂くと分かる通り、すでにメロディをグリッサンドさせる技術があります。とてもブルーですね。

それにこれはだいぶ音楽性として確立されていますし、コード進行もあります。

1900年過ぎにはこうした歌唱の元はだいぶ確立されていたと考えるべきでしょう。

これも有名なジェイバード・コールマンの1927年の録音。完全にブルースです。

歌い方をよく聞いてください。またハーモニカのグリスするラインなど。

 

この曲を音階にしてみると、和声はなく、
d#-f#-「g#」-a#-b-c-c#-d-d#
という感じですが、主音はg#だと思います。

 

この時すでにb5thブルーノートである、d音が聴かれて、上手いことブルージーな節回しになっているので、かなり聴きやすいブルースだと思います。


また、長二度から短三度への節回し、短三度から長三度への節回し、四度から減五度への節回し、減五度から完全五度への節回しなどが現れています。

 

当然導音はなく、"主音"g#に対して、f#が低音から主音へ帰着する音として、いわゆる導音としての役割を果たしています。このあたりは不定調性教材とリンクしています。

 

音程もかなり音階的で、分かりやすいブルースだと思います。

この音の動きを覚え、ニュアンスを覚えて真似するだけで、このブルースの感じを出すことができると思います。

 

ハーモニカがすでにブルーノートが効果的に使われていて、歌い方には労働歌の歌唱法とも言えるヨーデル的技法も出しています。

ヨーデル - Wikipedia

アメリカに渡った西欧人がミンストレルショーなどでヨーデルを歌い、やがてブルーヨーデルなどと言われ、カントリーと結びついたりしていくようですが、詳しい経緯はわかりません。

 

彼の歌は、フィールドハラーの影響を受けている、ということですから、この旋律感、節回しの感じに、さかのぼること黒人の労働歌の要素がある、ということになります。

 

つまり旋律だけの労働歌がすでにこうした旋律線を持っていたと考えることができます。

 

ブルースは録音された時すでにブルースでした。

 

だから録音前の世界を推測する事でしか、このうねるような旋律線(鍵盤で弾けない旋律の雰囲気)が成り立ったところを探ることができません。

 

次回は一旦時代を少し遡って考えてみましょう。

 

ここでは、この呻るような旋律を「ピッチがずれている」とは考えない、ということが大切です。日本人でも演歌でこのような表現をしますから全く感覚が理解できないということはないでしょう。

これを粗野だ、とか、原始的だ、とは日本人は思いません。

白人はそう思ったのかもしれません。こんなにアーティスティックなのに。

(もちろん理解を示したアメリカ人もたくさんいましたし、教会文化に迎合していったアフリカ人もいました。)

 

皆さんはこの旋律を聴いて、どう思いますか?

野蛮ですか?呪術的ですか?

それを自分なりに感じるのが「音楽的なクオリア」の使い方です。

 

教科書に書いていないから、誰からも学んでないから、すぐさま怪しいとは考えない、というスタンスです。

理解しようと突き詰めることで必ず、自分なりのその時なりの一時解釈が生まれます。

 

その解釈を自分のために使えばよいと思います。そして使うたびに感じ方を深化させれば。

他の人は関係ありません。

参考

sounds.bl.uk

www.terrax.site

アフリカ音楽本が少しずつ出ているのはうれしい!